117 独占契約
シロと2人だけの夜が朝を迎えたとき、シロが僕の上に覆い被さるように寝ていました。シロの顔が僕の胸の上にあり、珍しく僕がシロの胸に顔を埋めていない状態でした。
「あ…… おはようございますマサト様……」
「おはよう、シロ」
「あ、あの……」
なぜかシロがもじもじしています。昨夜キスしちゃったことを思い出している? ってことよりも……
まあ、僕が健康な若い男子として朝の生理現象を発生させているためでしょう……
シロは黙ってグリグリしてくれました……
清掃魔法って便利だなぁ……
朝食をグース邸でさくっと頂き、その後は再びグースさんの長男でグース商会の副会長であるトースさんに案内されて、オーキ町の郊外にある果樹園のある山まで馬車で連れて行ってもらいました。
「この山の麓がスイカやブドウ、中腹がオレンジ、山頂付近がリンゴの果樹園です」
「すごい規模ですね!」
「はい、この山は果物の生育に適しており、果樹園をどんどん広げていった結果、山全体が果樹園になってしまいました」
山の属性が果樹園向きという設定になっているようです。この世界の果物は、土地によっては一年中実を付け続けるので、季節物という概念がありません。本当にゲームの世界のようです。まあ、元世界でもビニールハウスとかで一年中いろいろな野菜や果物が食べられていたかもしれませんが……
「向こうの山も全部果樹園のようですね?」
近くの山も同様に果樹園だらけとなっていました。もしかしてあちらの山もグース商会の果樹園でしょうか?
「ああ、あちらは商売敵のアムク商会所有の山ですよ」
トースさんの話によると、もともとこのオーキ町はあちらの山の果樹園によってフルーツの産地として名を馳せていたようです。そしてその山を牛耳っていたのがアムク商会さんでした。しかし、直感スキル持ちだったグースさんがこちらの山も果樹園向きであることを突き止め、一代でこの山をオーキ町最大の果樹園として成長させ、フルーツ王の地位を奪取したそうです。
ここの果樹園は整然と配置されており、効率的に収穫が出来る感じがします。アムク商会さんの山の果樹園は区画がゴチャゴチャしており、道も曲がりくねって効率的ではない感じです。
グース邸から往復の時間を含めて2時間ほど果樹園の案内を受けた後、ふたたびグース邸にて独占契約の内容を話し合います。契約の前に僕に果樹園を見せたのは、グース商会がフルーツ王と呼ばれるにふさわしい力を持っていることを、僕に見せつけるためだったのでしょう。
トースさんから示された契約内容は、期間は1年間で、グース商会から提供されたフルーツの1/4を種なし処理して戻すことと、グース商会が独占できる商圏はこのヤマガシ領と王都のみということでした。つまりトリマ村があるガミサ領や、ソウヤさんが代官として治めているルーモイ領なら僕が自由に種なしフルーツを販売できるという内容でした。グース商会の本店があるのはここヤマガシ領で、ヤマガシ領外に支店があるのは王都のみのため、その他の地域では僕が自由に種なしフルーツの商売をしても良いそうです。
僕に提供される種なしフルーツの元は、もちろんグース商会でも最高級品質のものです。その品質のフルーツの3/4は僕が無償で手に入れいることができます。さらに必要とあらば僕は安価にグース商会からフルーツを購入できる権利も得ました。具体的には卸値で購入することができます。
僕が予想していたよりも条件は良いと思ったので、こちらからは何も条件を付けずに了承しました。2通の魔導具契約書に契約内容とお互いの署名をして契約は終了です。
契約終了後はグース商会の倉庫に行き、出荷前のフルーツをさっそくゲットします!
「こちらが我がグース商会が誇る最高品質のオレンジです! マサト殿が種除去できる限りの量を提供致しますよ!」
トースさんが自慢げに手を広げて倉庫の中を見渡しています。近くにある籠の中を見てみますが、たしかに色艶大きさと3拍子揃った見事なオレンジが入っています。 鑑定(5)!
【オレンジ 245キログラム 高価値 市場808,500エン 現地161,700エン】
たしかに鑑定でも高価値と出ました。まあ、グース商会が種なしオレンジとして王都でも大々的に売り出す元となりますので、高品質のオレンジをまずは僕に提供する必要がありますね。
「素晴らしい品質のオレンジですね!」
「そうでしょう! 自慢の逸品です!」
「ではここにあるすべてのオレンジを頂きましょう」
「えっ? すべてですか?」
先ほどは僕が種除去できる限りの量を提供すると言ってましたが、本気ではなかったのでしょうか? いや、ここにあるすべての量を僕が購入し、その1/4を種除去処理できるとは思っていなかったのでしょう。ちょっと飛ばしすぎましたか……
「まあ、1/4を種除去して戻して貰えるのならば歓迎しますが、可能なのでしょうか?」
「ま、まあ、可能です……」
どうせどんどん販路を広げてたくさん購入することになるのでしょうから、最初から遠慮せずに全力で行きましょう!
トースさんにはいったん倉庫を出てもらって、すべてのオレンジを収納+魔法に収納します。そして1/4の量を種除去して倉庫に戻します。
「トース殿! 入ってきてください」
トースさんが恐る恐る倉庫内に戻ってきます。そして、倉庫中央にぽつんと残されているオレンジの籠を見てびっくりしています。
「ほんとにほとんどのオレンジを収納したのか……」
たしかにあれだけのオレンジを収納するには、それなりの収納袋が必要ですよね。でも僕の収納+魔法にはまだまだたくさんの空きがあるのです。
トースさんは部下に命じて鑑定魔導具によりオレンジの鑑定をしています。
【オレンジ(種なし) 62キログラム 希少】
「た、たしかに1/4の量が種除去されたオレンジになっています……」
部下の方は驚きながらもトースさんに鑑定結果を見せています。価値まで鑑定されているので、レベル3の鑑定機ですね。レベル1の鑑定機なら100万エン程度で買えるそうですが、レベル3だと1,000万エンくらいするので、そんな鑑定機を普段使いしているとはさすがはフルーツ王の商会です。
「62キログラムもあれば、すぐに王都の話題を独占できるな……」
トースさんも満足げに頷いています。お互いWin-Winの商売が出来たようで良かったです。
いや、まだまだ商売は終わりません!
「次のフルーツをお願いします!」
「えっ! まだ購入できるのですか?」
トースさんがびっくりしています。どうやら僕の収納はもういっぱいだと思ってしまったようです。まあ、普通はそう思っても不思議ではありませんね……
しかし! 僕はその後もスイカやブドウ、リンゴについても高品質なものはすべてもらい受けて、その1/4は種除去処理して戻し、さらに普通品質や低品質のフルーツも卸値で大量購入しちゃいました。まだまだ僕の収納+魔法にはたくさんの空きがありますし、時間停止で保存できますので、まったく問題ないです!
「父からものすごい商売相手になると手紙にありましたが、ここまですごいとは……」
トースさんがかなり驚いていますが、ちょっとやり過ぎだったかな……




