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115 グース邸での夕食会

 フルーツ王のグース邸にデイルさんの瞬間移動魔法で移動してきましたが、執事のバスチャさんに客室を案内してもらい、夕食の準備が出来るまでゆっくり待つことになりました。グース邸は豪邸でしたが、客室もとても立派な部屋になっています。応接セットや、浴室、大きなダンジョン産の鏡、そして大きなベッド……


「マサト様と2(ふたり)きりになるのは久しぶりですね……」


 シロが顔を少し赤らめてそんなことを言うので、僕も少し緊張しちゃいます。でもたしかにシロと二人っきりになるのはすごい久しぶりですね。元世界でもクロが来てからはいつも3人というか僕と2匹で一緒に家の中で過ごしていました。でもクロが来る前はシロと一緒に過ごしていたので……


「そうだね。元世界から1年ぶりだね」


「はい。今夜はマサト様を独占できるので、とてもうれしいです……」


 やばい! シロにそんなことを言われてしまうと、僕も2人っきりだということをかなり意識してしまいます。とびきりの美少女と2人だけで一夜をともにするなんて……

 僕等はソファに2人並んで座っています。シロは僕から微妙な距離を開けて座っていますが、きっとクロだったら密着して座っていたことでしょう。シロと同衾するときは抱き合って眠っているので、いまさら照れる必要も無いとは思いますが、本当に2人きりだということに意識が向かっていますので、緊張が大きいです。


 2人して無言で紅茶とリンゴを味わっていると、夕食の準備が出来たとバスチャさんからお呼びが掛かりました。実際には緊張で紅茶やリンゴの味がよくわかりませんでしたが、本来はとってもおいしいものだったと思います。時間は17時42分になっていたので、40分くらいは客室で待っていたはずですが、あっという間に過ぎていました。


 夕食はデイルさんと3人でとるのかと思っていましたが、どうやらホスト役の人がいるようです。簡単に鑑定していきましょう。 鑑定(1)!


【羊獣人 トース 男 49歳 レベル25 商人】


 グースさんと同じく頭にはくるっと巻いた角があり、羊獣人さんのようです。アラフィフですが鍛えられた感じの体格で、レベルも商人にしては高めです。


「うちの父が大事な取引相手になりそうだと手紙にあったとバスチャに呼ばれてきましたが、実際にマサト殿、シロ殿にお会いしてなるほど!との思いが感じられます。私はグースの長男で、グース商会の副会長を務めるトースと申します。今後ともよろしくお願いします」


 トースさんはにっこり笑って挨拶をしてくれました。いかにもやり手という感じがします。


「こちらこそよろしくお願いします。いきなり押しかけて、こんなに豪勢にもてなしていただけるなんて、恐縮です……」


「いやいや、マサト殿はお若くしてかなりの高レベル、さらに護衛の方に至っては超高レベル冒険者です。貴族であってもマサト殿との繋がりを求めて、いろいろとお声が掛かることでしょう」


 まあたしかに、シロやクロのレベルは異常です。是非とも騎士団に迎え入れたいと思う貴族は多いでしょう。それにしても、いつの間にか僕等のレベルを鑑定されていたようです。もしかして、グースさんが鑑定して手紙に書いたのかもしれません。


「まだ僕等は駆け出しの行商人なので、そんなことはありませんよ」


「はっはっは、まあそういうことにしておきましょう……」


 さらっとスルーされてしまいましたが、でもまあ今後も入るときに鑑定される町や市では、そういう声が掛かることは覚悟しておく必要がありますね。でもシロやクロほどの超高レベル冒険者に対しては、強引な勧誘はないでしょう。超高レベル冒険者の『正当防衛』の対象になってしまうと、小さな国などは滅ぼされてしまいかねません。国が一介の冒険者に滅ぼされるなんて冗談かとも思いますが、過去に本当に滅ぼされた小国はいくつもあります。元世界でいえば超高レベル冒険者は核兵器にも相当する戦力なのです。


 夕食は舌の肥えた僕にはまあそこそこのレベルに感じられちゃいましたが、いろいろ有意義な話を聞けたので、トースさんが来てくれて良かったです。トースさんはグース邸の近くの別の家に家族とともに住んでいるのですが、今日は急遽呼ばれて参加しているのでした。経験豊かな商人なので、いろんな話を聞くことが出来ました。


 夕食の最後はフルーツが山盛りで出てきました。グース商会の主力商品であるリンゴ、ブドウ、オレンジ、スイカです。どれも元世界のものに負けないおいしさですが、1つ気になる点があるとすれば、種が大きくて多い点ですね。シロが少し恥ずかしそうにスイカの種を口から出しています。ナプキンを使って口を覆っていますが、正式な食べ方ってあるのでしょうか?


「シロ殿、ここはフォーマルな夕食会ではありません。スイカは是非(ぜひ)とも豪快にかぶりついて食べてください!」


 トースさんはそう言うと本当に豪快にスイカを食べ始めました。種は口から直接お皿に吐き出しています。まあ僕も元世界ではそんな食べ方をしていましたので、真似してやってみましたが……


「どうかされましたが、マサト殿?」


 うーん…… 何か足らないものがあるなと感じてしまいますが……


「そうか! 塩がないんだ!」


「塩ですか?」


 元世界ではスイカを食べるときには必ず塩をかけていました。


「塩をかけた方がスイカが甘く感じられて、おいしくなります!」


「うーむ…… 試しにやってみましょう! バスチャ!」


 トースさんは執事のバスチャさんに声をかけて、塩を持ってきてもらうように頼むようですが、塩といえば僕の出番です。


「塩は僕の主力商材なので、すぐに出せます! トリマ村産の最高級海塩です!」


 正確にはトリマ村付近の海水から僕の収納+魔法で精製したチート海塩ですが、嘘は言ってません(笑)

 魔法袋がら出すふりをして、空いているお皿に塩を出します。バスチャさんがそれをみんなに取り分けて配膳してくれました。


「おお、素晴らしい塩ですね! 高貴なほどに純白です! それに…… 味もまろやかで深みがあります!」


 トースさんは指に少し付けた塩をなめて()めてくれました。まあ、僕もチート製法で作ったこの塩は、元世界の高級な塩にも匹敵する品質だと思いますので、この世界であれば最高級品質となるのは当然でしょう。


「そして、塩をかけると本当に甘くなる! これはすごい発見だ! 是非ともこの食べ方を広めましょう!」


 トースさんは興奮してスイカを食べ始めました。僕も塩をかけて食べたら、やはり元世界の味であることを確認できました。これならいくらでも食べられそうですが、種が邪魔ですね。元世界でも種なしスイカって食べたことはありませんので、まあこれが普通なんでしょうけど……


 あれ? 僕の収納+魔法の解体機能を使えば、スイカの種なども除去できそうです! 試しにスイカを収納して種の分離を試みたところ、簡単にできちゃいました!


「種を取り除いてみたので、こちらを食べてみてよ!」


 僕やトースさん、デイルさんが豪快に塩をかけたスイカにかぶりつくのを横目に、ためらいがちにチビチビとスイカを食べていたシロに、種を除去したスイカを渡します。


「マサト様に種を取り除いていただいたスイカ…… 塩もかけていただいて…… いただきます」


 シロが宝物を扱うかのように、慎重にスイカを食べ始めましたが、種を出す必要が無いためかどんどんそのスピードは速まり、あっという間に平らげてしまいました。


「あ! その…… はしたなかったでしょうか……」


 シロが食べる(さま)をじっと見ていたので、照れられてしまいました。


「いやいや、スイカはそんな感じで食べるのがおいしいよね!」


 僕も種を除去したスイカを作ってかぶりつきます。うん! 種がないと食べやすくなるので、味も一層おいしくなった気がします!


「マサト殿! その種を除去しているのは、どんな方法ですか?」


 いつの間にかトースさんが近づいてきていました。そして興奮気味に僕に質問を投げかけます。トースさんが見ている前で、うかつに僕のチート魔法を披露してしまいました……


「方法は秘密です。たぶん僕にしか出来ないでしょう……」


「おお! それではぜひ我がグース商会と手を組んで、独占販売させていただけないでしょうか!」


「独占ですか?」


 トースさんが前のめりに提案してきた独占販売について、シロが殺気を込めた目でトースさんを見つめます。


 この種除去方法は僕しか出来ない技術でしょう。それに対してフルーツを提供するのはグース商会である必要はありません。お互いに独占契約を結んだら、僕のメリットがなさ過ぎだとシロは怒っているのでしょう……


「い、いや…… その…… もちろん契約内容は最大限考慮させていただきます!」


 トースさんもシロの殺気を受けてタジタジです。海千山千(うみせんやません)の経験豊富な商人も、超高レベル冒険者の殺気にはかなわないようですね……


 でもまあ、あまり悪目立ちしたくない僕にとっては、種なしフルーツで儲ける際に前面にグース商会に立ってもらうことは悪い話ではありません。高レベル魔石の販売もソウヤさんを仲介して現金化できましたし、フルーツの種除去技術はグース商会の秘匿技術として扱ってもらえると、僕への注目がなくなります。


「独占契約についての内容は、明日お聞かせ願えますか?」


 シロの殺気に当てられているトースさんに、契約を考えてもらうようにお願いしてみました。


「も、もちろん! マサト殿の技術がこの商品価値の源泉ですので、契約内容については最大限考慮して内容を提案させていただきます!」


 トースさんはシロからの殺気から逃れることが出来て、ほっとしながら答えてくれました。その後は妙な雰囲気のままデザートを食べましたが、スイカの他にリンゴやオレンジ、ブドウも種を除去してみんなに振る舞いましたので、感心して食べてくれたようです。


 それにしても、シロは僕のこととなると過剰な反応を示す傾向があるので、なんとかした方が良いのかなぁ……




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