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112 ルーモイ城の西門にて

 ルーモイ城の執事長であるセイバスさんが僕を呼んでいるとのことで、お城の西門に来ました。西門に続く橋を渡って、衛兵さんに入れて貰えるように頼みましょう。西門は東門同様に通用門のようで、そんなに広い門ではありません。2人の衛兵さんが入り口を守るように立っています。


「すいません。私は行商人のマサトと申します。執事長のセイバス殿に呼ばれていると(うかが)って、こちらにやってきました。セイバスさんのところまで案内していただけますでしょうか?」


「セイバス様から直々(じきじき)にお呼びが掛かっているだと?」


 衛兵さんは30歳くらいのベテラン獅子獣人さんと、20歳くらいの若い人の2人組でしたが、ベテランの方が僕の申し出を信用してくれないようです。


「あ、あの、チャウさんが休憩で少し外れていたときに……」

「はぁ!? 門番をしているときに、俺がそんな長い時間休憩をしていたというのか?」


「いや、そういうわけではありませんが……」


 どうやら門番の衛兵さん達にも僕等が呼ばれていることを連絡されてはいたようです。若い衛兵さんはそれを聞いていましたが、ベテランのチャウさんには伝わっていなかっただけでした……


「セイバス様から直接呼ばれる商人って割には、初めて見る顔だなぁ。セイバス様から呼ばれている証拠とか無いのか?」


「コポポ商会のガラキさんから口頭で連絡を受けただけなので、手紙とかはもらっていませんが……」


「あ、あの、マサト様という商人がこちらを訪ねるかもという連絡は……」

「お前は黙っていろ! この商人はまだ若いし、護衛もそうだ! しかも幼い少女まで連れてきてやがる。本物のマサト様とやらではなく、話を聞いた別人がなりすましてセイバス様との知己(ちき)を得たいとかの(やから)だろう!」


「で、でも、護衛の方も金色の冒険者証を付けていますし……」

「金色? きっと偽物の冒険者証じゃないのか?」


 衛兵さん同士で言い合いを始めてしまいました。若い衛兵さんが正しいことを言っているのですが、ベテランのチャウさんの迫力が大きくてすんなり通してもらえそうにはありません。

 しかし、この世界で冒険者証の偽物を疑うってのは無理があります。冒険者証も魔導具の一種で、すべては冒険者ギルドが管理するダンジョンから産出されます。冒険者証はギルドが認めた本人以外は首から下げることは出来ませんし、本物は一目見ただけで本物だと確信できるオーラを持っている特種なネックレスとなっています。


 うーん、どうしましょうか? この衛兵さんでは中に通してくれそうにないので、別の門から入りましょうか? 東門なら3日前に通りましたし、さくっと通してくれる気がします。


 僕等の後方から、別の集団が橋を渡ってきているようです。ひとまず端によって先に通ってもらいましょう。


「おや、これはマサト殿ではないか?」


「おお、ライガ、さんニャ!」


「クロも当然いるか……」


「当然だニャ!」


 ライガさんは相変わらずクロには思うところがあるようで、苦々しい顔をしますね。まあ、このルーモイ領の親衛隊でもトップレベルなのに、クロとの試合で圧倒的な差を付けられて負けちゃいましたからね……



「ところで何かもめているようだったが、何があった?」


 ライガさんはベテランの衛兵チャウさんに向き直り、少し恐い顔をして質問を投げかけました。


「い、いや、あの…… ライガ様とお知り合いでしたか?」


「俺の知り合いというよりかは、弟君(おとうとぎみ)、いや、ソウヤ様の知り合いというか、まあご友人ってやつだな」


「ソウヤ様のご友人! これはこれは失礼しました。セイバス様の元へはわたくしめがご案内致します! どうぞ先導致しますので、後に続いてご入城ください!」


 チャウさんの態度が180度変わってしまいました。まあ、代官様であるソウヤさんの友人ともめていたなんてことが判明するとまずいことになるでしょうから、恐いライガさんからさっさと離れたいのでしょう……


「ちょっと待て! 俺はなんかもめていたようだが何があったと聞いたのだ! まずは質問に答えろ!」


 チャウさんは固まってしまいました。まあ、ライガさんの迫力がものすごいので、気持ちはわかります。


「マサトがセイバス執事長から呼ばれていると聞いたので、この西門にやってきたニャ」


「ほう、セイバスに呼ばれた? それで?」


 チャウさんに代わってクロが説明を始めました。


「しかし衛兵のチャウ門番はそんな話は聞いてない、なりすましの別人だと言って通してくれなかったニャ!」


「チャウ門番ねぇ……」


 チャウさんはクロに自分の名前を出されて、さらにライガさんが名前を復唱したので、顔面蒼白になってきました……


「若い門番さんはマサトが来るってことを聞いていたのに、チャウ門番はサボっていたので話を聞いていなかったニャ」


「えっ! 別にサボっていたわけではなく、ちょっと席を外していたというか……」


「門番が席を外さなきゃいけない用事ってなんだ?」


 この世界では基本的にトイレに行く必要はありませんので、ちょっと席を外すという必要はありませんね。食事や給水は時間を決めて交代するでしょうし、急に体調が悪くなったようには見えませんし……


 チャウさんは顔面蒼白を通り越して、真っ青な顔になってしまいました。


「まあ、ルーモイ領の不始末にマサト殿を付き合わせる必要はあるまい。セイバスのもとには俺が案内する」


 どうやらライガさんが直々に案内してくださるようです。出来れば他に人にしてもらった方が良い気がしますが……


「それとお前達はチャウ達から何があったのか正確に聞き取りをしておけ! ちゃんと別々に聞き取りをして、口裏を合わせないようにしろよ!」


 ライガさんは連れていた騎士団に、チャウさん達へのヒアリングを指示します。ヒアリングというか、尋問と言った方が正確な気がします……


 チャウさんってどうなっちゃうんでしょうか? 『代官様のご友人』を無碍(むげ)に扱ったってことで、かなり厳しい処分が下されちゃう気がします。セイバスさんには寛大な処置をお願いしておきましょう……




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