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110 フルーツ王

 森から帰ってきて夕食まではまだ時間がありますので、大浴場に向かいましょう!


 温泉には昨日まで見なかった人がいました。まだ現役バリバリって感じの中年男性で、かなり鍛えている感じなので冒険者でしょうか? 湯船の中でおじいさんの宿泊客と話していますが、深刻な話ではない感じなので近づいて情報収集してみましょう。


「やあ、マサト君。今日はここに来るのが早いねぇ」


「こんにちは、グースさん。隣の男性は初めて見ると思いますが、紹介してくれますか?」


「ああ、この男は私ら夫婦をここに運んでくれた運び屋のデイルさんじゃ。こちらは商人のマサト君。まだ若いけどかなりのやり手じゃ」


 グースさんは僕等2人を互いに紹介してくれました。


「へぇ、こちらが噂のマサト君か……」


 デイルさんは興味津々な目で僕を見てきます。グースさんから僕についてどんな噂を聞いているのでしょうか…… それはともかく、運び屋さんという人は初めて会いましたので、情報を仕入れておきましょう。


「グースさんは船ではなく、瞬間移動でこちらに来ていたんですね」


「そうじゃ。瞬間移動で来れば一瞬でここまで移動できる。馬車と船を乗り継いでくると何日もかかるが、年をとるとその移動が体に(こた)えるのじゃ。移動は楽になるぶん、お金はものすごくかかるがな! はっはっは!」


「私でも一日一回しか魔法を使えませんので、そりゃ高いですよ!」


 再使用可能時間が24時間ってことは、空間魔法レベルが3もあるってことです。レベル1でもかなりレアな能力だけど、その場合の再使用可能時間は6日もあります。この世界では1週間ですね。週に一回でも軍や商人には高く雇って貰えるほどのレア魔法です。


 ちなみに僕の空間魔法レベルは5もあるので、瞬間移動魔法は6時間ごと、瞬間移動+魔法は1時間ごとに使えます。2つの魔法は別物扱いのようで、間を開けずに2回連続の瞬間移動も可能です。こんなことを知られたら、いろいろなところからスカウトが殺到しちゃうでしょうから、絶対に秘密です!


「瞬間移動魔法を毎日使えるってすごいですね!」


「ああ、だから高いんじゃ!」


「まあグースさんはお金をいっぱい持っているので、だからこそ静養に行くにも金に糸目をつけないでばんばん使えるのでしょう? 我々庶民に少しは還元してくれても罰は当たりませんよ?」


「お主が庶民なわけがないじゃろ……」


 空間魔法レベル3の瞬間移動魔法使いが庶民であるはずは決してないですね。グース夫妻をここまで運んで運賃はいくらなんでしょうか? 元世界の飛行機だとファーストクラスは100万円以上することもあるので、夫婦で200万エンでも不思議ではないですね。運賃がいくらなのか、この場で聞くのはさすがに難しいです……


 こっそりと鑑定をしておきましょう。鑑定(5)!


【人 デイル 男 40歳 レベル52 運輸】

 体力 80/83

 魔力 113/268

 スキル 体術(剣術4、格闘3)

 魔法 生活1(時間、着火、照明)

    火2(火の玉)

    水2(水生成、氷弾)

    身体強化1

    空間3(瞬間移動、地図)

 状態 正常


 おお! レベルが高いですね。遠いところまで瞬間移動をするために、魔物討伐を頑張って魔力を上げたのでしょう。268はかなり高い魔力です!



「こちらに来てみれば、グースさんは2週間も延泊するから、明日は手ぶらで帰ってまた2週間後に迎えに来いと、人使いが荒いんですよ……」


「ここの料理がうまくなったんだからしょうがないんじゃ。お主も昼食を食べて違いが感じられただろう?」


「まあたしかにおいしくなったとは思いましたが……」


「夕食を食べたらさらに驚くと思うぞ!」


 デイルさんは今日の午前中にこちらに到着したみたいですね。本来なら明日にはグース夫妻を連れて瞬間移動する予定だったのでしょう。まだきつねのしっぽ亭の夕食を食べてないから、2週間も延泊するグースさんの行動が理解できないようです。たしかにクミさんが作る超絶美味な夕食を食べてしまえば、すぐにその(とりこ)になってしまうでしょう。


「マサト君、どうせデイルさんが一人で帰るなら、わしの商会にデイルさんと一緒に行かないかい? わしの商会では様々な果物を取り扱っておるし、砂糖の産地でもあるから新しい商材を仕入れるチャンスじゃぞ! また2週間後にデイルさんに連れてきてもらってここに戻ってくるといい」


「このじいさんは地元ではフルーツ王と呼ばれている豪商だ。私は料金さえ豪商のグースさんが替わりに支払ってくれるのなら、マサト君を運ぶのに異論はありませんよ」


 おお! 本当になんとか王と呼ばれる商人がいるもんなんですね。フルーツ王って名前は格好良いです! 少なくとも塩王よりは何倍も良い感じです……


「1人でも3人でも料金は変わらんじゃろ?」


「いやいや、消費魔力は3倍も変わるので、2割増しですよ!」


 なるほど…… 1日1回しか使えないので、消費魔力に比例した値段で3倍ではなく、2割増し程度に抑えられているのでしょう。でも、割増料金を僕が払うってことにすれば、元の料金が判明しますね。

 フルーツや砂糖の産地ってことは、ここよりも南の国だと思います。僕の空間魔法レベルなら問題なく帰ってくれるでしょうから、新しい商品の仕入れ先と、新しい販路の開拓の一石二鳥ってことで、是非ともお願いしましょう!


「割増料金は僕が払うので、お願いしたいです!」


「おおっ、さすがは優秀という噂が立つだけのことはある。2割といえども、けっこう高いですよ?」


「いくらですか?」


「まあまあ、わしが勝手にキャンセルしたぶんだし、ここはわしが割増分を支払おう!」


 あれ? グースさんの気前が良すぎて、料金が判明しなくなりそうです……


「さすがフルーツ王! こちらに来るときもお願いしますね」


「むっ! ……まあいいじゃろう」


 たぶんデイルさんが運ぶことが出来る人数は、デイルさんを含めて3人だけでしょう。僕ともうひとりだけで2週間もこの地を離れると言ったら、残りの人達は大反対でしょう。せめて僕とシロとクロの3人とデイルさんの4人で移動できれば良いのですが……

 つまり僕とシロかクロの2人でまずは行って、さくっと仕入れと販売をその日のうちに終わらせて、すぐに戻ってくる必要があります。


「戻るときは自力で戻ります!」



 そのままお風呂で簡単に打ち合わせをしました。とりあえず明日の夕方にデイルさんの瞬間移動にてグースさんの商会まで運んでもらい、グースさんの家に泊めてもらえるように手紙を書いてもらうことになりました。



 夕食はユキちゃん一家と一緒にとり、明日の夕方にはトリマ村を出発することを告げました。ユキちゃんにはもう少しいるようにと引き留められましたが、グースさんの話をしてなんとか納得してもらいました。


 デイルさんの瞬間移動に運んでもらうのに、僕ともうひとり誰にするかについては、あっさりシロに決定しました。クロが自分を連れて行けと反対するかと思いましたが、


「まあ一人に絞るのなら、シロになるのはしょうがないニャ……」


 とあっさり承諾してくれました。


「そのかわり、翌日には迎えに来るニャ!」


 明日はデイルさんの瞬間移動でグースさんの商会があるオーキ町に行き、明後日はフルーツや砂糖の仕入れと、小麦粉や塩、木材の販売をしてからをオーキ町を出て、それからトリマ村付近に僕の瞬間移動魔法で戻ってクロ達と合流することになりました。


 その先の予定は未定です。ハクエイ町からワインの産地を目指すのか、オーキ町付近で行商をするのか、その時の状況に合わせて臨機応変に行きましょう!




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