表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

数千文字の物語

本当のヒーローは君だ

作者: 僕

「愛してるよ」


そう、君に直接伝えたのは、いつだったろう。


「僕は悪者なんだ。僕なんかと一緒にいちゃ、いけないよ……」

君はいつも、そう言っていた。


でも、僕には君が悪者だなんて思えなかった。君は、優しかった。とても。




――あの日、僕は裏切られた。信じていた人に。

僕の、たった一人の仲間に……


それは、君と闘っていた時だった。

正義と悪。それは戦わなければいけない運命に立たされた者達。

君はいつも、哀しそうな顔をしていた。……でも、それは僕も同じだったのかもしれない。



――仲間がやられた。僕は

「下がって!」

そう言い、君の方に向かって腕を伸ばす。

と、僕の体は吹っ飛んだ。ダムッと地面に叩きつけられる。ゲホッと咳をすると……少し血が出た。


「ッ大丈夫⁉︎」

そう言った仲間が僕の方にすっ飛んできて、庇うように前に立つ。

「休んでて」

そう言った彼は剣を構え――


僕の方を向いた。


……何故?


僕は、気がつかなかった。彼が、僕を殺そうと企んでいたことを。


ああ、死ぬ。死んでしまう。


彼が、剣を振り下ろす。

スローモーションのような世界で、何もできずにそれを見つめる僕の視界に、何かが猛スピードで飛び込んだ。


――ガキィン……!


剣と剣がぶつかり合う凄まじい音がした。

夢の中から、一気に現実に引き戻されたような感覚がした。


「ッ……!」


君がいた。彼から僕をまもろうと、歯を食いしばって地面を踏みしめる君がいた。さっきまで、君との距離は遠かったはずなのに。


ギリリッと嫌な音がした。



――君は、彼を押し返した。

でも彼は、隠し持っていた短剣で君の腹部に致命傷を与えた。



――僕は……僕は、何もできなかった。


勝った君は、自分の方が大怪我をしているのにも関わらず

「大丈夫?」

と、ひとのことを心配した。その顔は、天使のように優しかった。

「ッ大丈夫……大丈夫だよ。君が、まもってくれたから……」

僕は、君を抱きしめた。僕の、ヒーローを。

「そっか……よかった……」

今にも消えてしまいそうな声でそう言った君は、僕のことを弱い力できゅっと抱き返した。


そして――君は、いなくなった。




――もう、声を聞くことも顔を見ることも出来ないのに。

ここに来れば、また会えるんじゃないかと思ってしまう。


僕に気がついた君が、ふっと笑って嬉しそうに手を振る……

そんな幻覚が見えてしまうほど、僕は……君のことを――



生まれ変わったら、また、君にあえるかな?

今度は、正義と悪なんて存在しない、そんな世界に生まれたい。

ただ君と笑っていられるだけで、それでいいから……

かなしい終わりになりましたが楽しく書けたのでよしとします。

主人公くんには来世で愛する人と幸せになってほしいですね。


読んでいただきありがとうございました。



表紙絵はこちらから。

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=13556991

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ