暗殺者(アサシン)、クエストに行く
( ̄∇ ̄)家に入れてからの続きだよ
マイがシャロの家に来て数時間、10年振りの再会での抱擁から解放されたシャロはとりあえず中に案内する。
「えと…本当にマイちゃん…だよね?」
確かに少し面影はあるが他人の空似だと言われても納得してしまいそうなくらいに大人っぽく成長してる。
さっきまでその成長した胸に顔を埋めていた事を思い出すだけで静まりかけた心臓がドキドキしてくる。
「…んっ…」
シャロの質問に頷く。
「疑う訳じゃないけど出来ればギルドカードを見せてくれないかな?」
ギルドカードとは神託を受け、クラスがギルドによって認められた者に送られる個人指定カードである。
特殊な媒体により作られる識別カードで本人以外には使えず偽造も捏造も一切出来ず身分を証明するのに最も使われている。
「…わかった…」
胸元に手を入れてギルドカードを取り出そうとしたので思わずシャロは顔をそらす。
「な…なんでそんなところに入れてるんだよ…っ!?これは!?」
テーブルに置かれたカードをみてビックリする、そこにあるのは世界に5人しか所持していないと言われている伝説のS級ギルドカードだった。
「…ここ…」
驚きを隠せないシャロをそのままにマイはギルドカードの一つの欄、名前を指差している。
確かにそこにはマイの名前が書かれている、本当にこの人はシャロの幼馴染のマイだと証明するには十分だった。
「本当に…マイちゃんなんだ…あっ!僕も…」
慌ててポケットから自分のギルドカードを出す、相手がギルドカードを提示したら自分も嘘偽りがない証拠としてギルドカードを出すのが決まり事である。
シャロが出したのはD級ギルドカードである。
ギルドには特例ランクS級を除けば基本的にクラス毎にA〜D級と分かれていてシャロはいわゆる下っ端である。
「…別にいいのに…」
再び胸の谷間にギルドカードをしまうせいで目のやり場に困る。
「あっ…でも僕はまだマイを養えるような収入は…」
まだまだ駆け出しであるシャロの収入は決して多くはない。
ポーションを売って生活をしているから1人で暮らすには問題ないがマイが同居するとなるととても厳しい。
貧しい食事をマイにさせたくないがポーションの量を増やすのは無理だし値段を上げるわけにもいかない。
「…大丈夫…シャロ…ギルドで…仕事する…」
「ギルドか…でも僕、弱いし」
あまり気がすすまない。
確かに冒険者としてギルドで依頼を受ければそれなりに貰える。
しかしギルドにある仕事は魔物の討伐が殆どで力が弱いシャロではとてもじゃないがギルドの仕事なんて出来ない。
「…大丈夫…シャロ…私の依頼…手伝う…」
「えっ!?マイの依頼って高難易度の依頼だよね?僕S級の人を雇うお金なんて…」
「…違う…私がシャロを雇う…」
「僕を雇う?確かに階級が上の人が下の階級の人を雇う事で高難易度の依頼を受ける事は出来るけど…」
「…なら決まり…これ…」
また胸の谷間から依頼書を出す、あの中は4次元空間にでもなってるんじゃないだろうか?
「キングオーガの討伐…危険度A+…これ大丈夫なの?」
危険度とは依頼されるクエストの想定される脅威を示したもので災害クラスのSを除けばA+は最高難易度で完全武装したA級の冒険者が10人で対応してなんとかなるかというレベルである。
「…大丈夫…シャロは…私の後ろにいてくれればいい…」
「う…うん…」
「…決まり…行くよ…」
マイはシャロの手を握りギルドに向かう。
(そういえば冒険者の中には稀に愛玩用としてD級の冒険者を雇うとか聞いたことがある…マイちゃんの愛玩用…)
シャロは抱擁された感触を思い出して思わず赤面してしまう。
(ダメだダメだ!こんなやましい考え真面目に仕事をしようとしてるマイちゃんに失礼だ!早く忘れないと)
頭を左右に振ってその考えを振り払う。
「…シャロ…どうしたの…?」
「な…なんでもないよ、ほらギルドに着いたよ」
わからない様子で首を傾げるが目的のギルドに着たので中に入り受付で依頼を受ける。
「はい、ではこの依頼を受注されるんですね…おや?そちらは?」
「…パーティ仲間…一緒に依頼をする…」
「ではギルドカードを確認しますね…わぁS級のギルドカードなんて初めて見ました、あっ失礼…そちらの方は…はい、ではS級マイさんとD級シャロさん両名で登録いたしますね」
魔導器に登録する。
「はい、手続きが終了しました、ではお気を付けて下さい」
キングオーガの住処に向かう2人を見送る。
・・・
・・
・
キングオーガの根城にしている場所まではそれなりに距離があるのだがマイがシャロを抱き抱えたまますごいスピードで移動をしたおかげですぐに着いた。
(…もう遠出はしないでおこう)
その理由として一つがあまりの速さに息がし辛くなるのが一つ
もう一つは家の壁や屋根、木の枝などを跳びながら移動する際にシャロの目の近くで揺れる胸、まだまだ女性の身体に興味津々なシャロには目の毒というものである。
「…もうすぐ…着く…」
「あっ…そういえばどう戦うの?」
暗殺者のクラスは対象者に気づかれないように近寄り抹殺するのが定石、真正面からの戦いに向いている訳ではない。
それはS級でも変わらない、普通はクルセイダーのような接近職が騒ぎを起こしている間に死角から目標を殲滅する。
もちろんそれにシャロは戦闘職ではなくて生産職、敵の注意をひくなんて出来るわけがない。
「…こうする…」
根城付近でパトロールでもしていたのかゴブリンが2人に襲いかかるがパンチ一発で粉々になってしまった。
「えっ?今何を?」
「…パンチ…?」
「えぇ〜…」
敵の意表を突いて仕留める筈のアサシン、その最高ランクであるS級のアサシンは隠れることなく堂々と歩いて行き見張りのゴブリンや警備していたゴブリンだけでなく奥にいるキングオーガも武器もスキルも使わずにワンパンで倒してしまった。
( ̄∇ ̄)あ〜、アサシンの定義が崩れる音〜