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短編、静かめ

隣の猫

作者: すもも

3年前に就職し、それを機会に独り暮らしをはじめた。小さなアパート暮らし、2階の角部屋、隣は空き部屋。寂しさを時折感じるものの生活はまま順調。仕事に独り暮らしに慣れずに四苦八苦していたが3年となりそろそろ落ち着いてきた、家賃は物価に比べれば安いが、なにせ駅から距離がある。隣が空き部屋なのもなるほどと頷けた。 だがある日、ふらりと俺が望みもしないお隣さんが居ついた。人じゃなくて猫、隣の扉の前にそれはもうここが我が家ですと言わんばかりのふてぶてしい顔でそこに居ついた。


仕事から帰宅すると、玄関に蝉の死骸が落ちていた。四肢をもがれ、羽をもがれ、いくら毎年ミンミン煩いからといってこれは酷い。しかもひとつじゃない、ふたつ、みっつとそれは落ちている。あまりの気持ち悪さにぞっとする。しかし放置すれば大家さんにどやされるのは俺だ。仕方ない、片付けるか。仕事帰りだというのにまたひと仕事すると思うと気持ちが重くなる。鍵穴になにかのオマケでもらった微妙なマスコットのキーホールダーがついた鍵を差し込んだところでどら猫のような低い鳴き声が聞こえた。ため息を尽きつつも足元に視線を送ると、思ったとおりにそれはいた。

「なぁご」

隣の猫。どこでそんなに太ってくるのかと野良とは思えぬほどでっぷりとした体系にかわいいとは言えないたるんだ目、薄汚れた体。かわいくない鳴き声。餌もなにもくれていないというのにこの猫はやけに俺に懐いてくる。この蝉の死骸だってこいつの仕業に決まっている。大家に野良に餌をやるな、って怒られるけど濡れ衣だ。なんでこいつ俺にこんなに懐いてんだよ。

「お隣さんよ、そんなに見られたって俺はなにも持っていないのよ」

「なーご、なーご」

ぺちぺちと地面を叩く仕草、貢物をやったのだから報酬をよこせ。とでも言いたいのだろうか。

「そんなことしたってないものはないの」

「ふごーっ」

お隣さんは毛を逆立てて尻尾をぶんぶんと振るうと、ぼてぼてした足取りで何処かへと歩いていく、かと思えば1度立ち止まりこちらを見て、再びふごーっと威嚇するとぼてぼてと歩き出した。うん、これはあれだ懐かれているというよりはなめられている。玄関を開けてすぐに箒と塵取りがある。あのお隣さんが来てからというものこれが当たり前になってしまった。そりゃあ毎日のようにねずみの死骸だの蝉の死骸だの玄関前におかれていればこうなる。ひとつため息をついて片付けを始めた。


朝自宅から出ると、お隣に住む猫が丸くなって寝ていた。毎回思うけれどどうしてこの猫はこんなところに住んでいるのだろう、猫的にもっと立地条件のいいところがあるんじゃないか?迷惑を被る人間様の気持ちを考えて欲しい。猫が起きてしまう前にさっさと買い物に出かけよう。日常品や食料がそろそろピンチなので休日にまとめて買っておかなければ。鍵を差し込んだところでお隣さんの目がパチリと開いた。なんなんだこれは何かのセンサーにでもなってるのか。

「なーご」

ひとなきするとぼてぼてとこちらへ歩いてきた、だからなんで俺にかまうんだよ!!ぼてぼてと歩きながらお隣さんが何か蹴ったらしいころころとこちらへと転がってくる白くて丸いなにか。ボールでも拾ってきたのか?なんとなしにそれを拾い上げるとそれは白くてつるりとした卵だった。

「………は?」

何故、猫が卵を温めているんだ?謎だ、謎過ぎる。しかもこれはどう見てもスーパーなんかで売っている安売りの卵。暖めたところで孵りそうにない。……いや、もしかしたらもっと別のものが生まれるのでは?だって猫だ、スーパーに行って安売りの時間を狙って買いに行くなんて到底無理。何処かの鶏小屋から盗んできたのだろうか?うーむ…まぁでもこれで孵ったら面白いかもしれない。

「よしよし、お隣さんよ。これを返そう、それでちゃんとぬくとめるんだ」

猫に卵を返す、猫は胡乱げに俺を見上げていたが、ぼてぼてと歩いて行き卵の上に乗っか、らなかった。

「なーご」

ころころと転がったそれで遊び出した、な、なんてことをしとるんじゃ!!孵るはずがないと分っているが、ちょっとくらい夢を見せてくれたっていいじゃないか!ころころ、ころころ、転がって、壁にぶつかった。当然のように卵はつぶれて中からでろりと白身と黄身が入り混じったものが出てきた。なんも言えない気持ちでそれを見つめている俺に向けて、猫は尻尾を振りながら床をばしばし叩いた。

独り言。

あらすじって難しい、どうしても箇条書きになってしまいます。

小説の裏表紙を読み漁ろう。

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