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第六話 波瑠の固有

「それで、鎖貴くんはどんな固有だったのか分かった?」


「ああ、遠距離攻撃にはうってつけの能力だろうな」


 下着事件から15分ほど、鎖貴は固有の確認を行ってその把握に努めていた。その甲斐あってか、大体の性能を知ることが出来たと言っていいだろう。


 鎖貴の固有である浄眼、これは霊魂などの肉眼では観測できない現象を見ることが出来る能力だ。その中でも千里眼は障害物などを無視して、あるいは鳥瞰によって1キロ圏内の光景を自由に見ることが出来る。また、千里眼の使用中にも浄眼の能力は発揮されているため、1キロ圏内のあらゆる現象を観測可能な能力と言えるだろう。


 遠距離攻撃にはうってつけ、との鎖貴の感想はそのためだ。狙撃銃が手に入ればの話だが、1キロ圏内をスコープなしで狙撃できる目を持つのは、伝説の狙撃手シモヘイヘをして恐怖するだろう。


「ただ……狙撃銃や弓なんかの、遠距離攻撃可能な武器がないと無用の長物だろうな」


「じゃあ、自衛隊駐屯地に行くの?」


「いや、桃花市駐屯地はここから徒歩2時間は掛かる。あまり現実的ではないな」


 鎖貴は自衛隊駐屯地の襲撃に、あまりいい顔をしなかった。移動距離の問題もあるが、一地方都市の駐屯地にそこまで高性能な銃が置いてあるとは思えなかったためだ。


 確かに銃は優秀な兵器だが、鎖貴が欲しているのは優秀な狙撃銃と一発ずつ窒素包装してある弾丸だ。

 スナイパーの選定や教育は厳しいものだと聞いていた鎖貴は、然程大きくない駐屯地にそんな優秀な隊員や兵器が配属、配備されているとは思ってもいなかった。


 それに波瑠には言っていなかったが、鎖貴には静止の魔眼がある。先ほどの固有を確認した時に、千里眼越しにもそれが効果を発揮したのを理解していた彼は、暫く武器はアイスピックで十分だと考えていた。


「とりあえずその辺のことは後で考えることにして、そろそろ波瑠も固有の確認をしたらどうだ?」


「うん」


【『物体転移』】

 片手で持てる重量、サイズのものを任意の場所に移転させる。

 生命体の転移は不可能。


「おいおい、即死攻撃能力じゃないか」


「そ、そうだね。我ながら引いちゃったよ」


 鎖貴と波瑠は顔を引き攣らせる。二人の頭の中では、手に握った石を敵の脳内に移転させた波瑠が想像されていた。


「まあ、それが可能かどうかは試さないと分からないけどね」


「ああ、取り敢えず石を拾うか」


 波瑠の固有は物があって初めて成り立つので、なくなっても問題にならない石を小さな山になる程度集めた二人。


 初めに手に握った石を数メートル先に移動させる。これは視認してもしなくても出来た。

 次にそれを手元に戻す。これは視認しないと出来ない。

 手元の石を障害物の先に転移。鎖貴の千里眼で見た適当に言われた場所に転移。鎖貴が誘導してきたグレイトラットの体内へ転移。これらは視認しなくても出来たが、それらを逆に手元に戻そうとするのは不可能だった。


 ただ、ある程度以上の固さがある物体内に転移させることは出来なかった。脳内や腹腔内などの柔らかい部分になら転移させることが出来るが、骨やコンクリート、アスファルト内への転移は出来ないということだ。


「使い勝手がいいのか悪いのか分からないね」


「ようは触ってるか視界内に納めないと、送るのも受けるのも転移できないんだからな。弾数無限の機関銃って考えるとかなり強いと思うがな」


 波瑠の物体転移は、触れているか視界内に存在しなければ意味をなさない。虚無空間を作り出し、小石などの武器供給を止めるような固有の持ち主でもなければ、対策は難しいだろう。


「さて、そろそろ避難所へ移動するか。桃花六中か平成小、どちらにするべきか」


「うーん、わたしは六中かな」


「なにか理由が?」


「広いし弓道部もあったはずだから、弓が調達出来るかも!」


「なるほどな。幸い俺は来た道戻るだけだから、新しいモンスターに襲撃される可能性も減るな」


「あんまり油断しちゃだめだよ」


「ああ、分かってる。波瑠も俺からあまり離れるなよ」


「う、うん」


 そんな会話をした後、コンビニにあった大きめのリュックに塩、胡椒などの調味料や、缶詰に保存が利く食品や水を仕舞って、鎖貴のアパートがあった東に向けて出発した。



……

……



 コンビニを発ってから、僅か1分ほどでゴブリン一匹との戦闘に相成った。

 ゴブリンは腰布すら着けずに粗末な逸物を晒していたが、波瑠という飛び切りの美貌の少女を視界に入れると、海綿体に血を溜め勃起させた。


「チッ……猿が」


 波瑠が股間を視界に入れないように、すぐさま走り出す鎖貴。その右手には順手に握られたアイスピック。


「ゲギャ!」


「死ねッ!」


 ゴブリンは丸腰で飛びかかるが、鎖貴のアイスピックが突き刺さるほうが僅かに早い。

 上手く肋骨の隙間に入ったようで、胸から血を散らせるゴブリンに目を向けずに波瑠の方へ駆け寄る。


「怪我はないか?」


「うん。けど、どうして?」


「あまり見て気持ちのいいものでもないと思うが」


 鎖貴は誤魔化そうとしていたが、波瑠はゴブリンを視界に入れ、萎えつつあるソレを見て顔を真っ赤にさせた。

 鎖貴はゴブリンから魔石を取り出し、


「おい、そろそろ行くぞ」


 と、波瑠に声を掛けたが、肝心の彼女は緑色のソレを指の隙間からちらちらと覗いていた。

地方都市の駐屯地ってどの程度の戦力が揃っているんでしょうか。

防衛省内の警備員には三発の拳銃用弾丸が支給されている、と某ゲームでは説明されていましたが……。

国防に関する情報は制限されていて然るべきですが、リアルな情報も知りたいですね!

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