第8話 狭きスエズ
その日、ドイツ艦隊は機動戦艦フリードリッヒ・デア・グロッセ、ビスマルク2世、ベオルフを中心とし、数隻の艦を伴い出撃して、日本を目指した。
パナマか、かの進路を選ぶことはできたが、国際テロ組織への威圧を兼ねて、紅海への進路を取った。
ここ、数年証拠こそないがロシアはテロ組織を支援しているという噂がある。
アフリカ大陸にある1国、ソマリアもそんな国の一つで最近では海賊の被害が大きい。
日本やアメリカ、欧州各国やロシアも治安維持の名目で軍艦を送りこんでいるが海賊の撲滅のめどは立っていなかった。
威圧の意味を込めて、アメリカや日本は一時的に機動戦艦を常駐させよういう動きもあったがロシアの猛反発にあって頓挫している。
ソマリアは現在、無政府状態であり内乱状態でロシアはその一端を握っているとされている。
そんな海域に機動戦艦が現れれば彼らにとって都合が悪いのだろう。
現ドイツ首相、レイ・ルドマンは今回の演習への航路をあえてこちらにしたのである。
ロシアの顔をうかがうならこの航路を取るべきではない。
なぜなら、ソマリア近海にはロシアの艦隊があるからだ。
艦隊と言っても小規模なものだが海賊退治にはいささか大げさな数でもある。
「暑いです・・・・・・」
両岸が見えるほど狭い運河、それがスエズ運河である。
一昔前までは機動戦艦のような巨大な艦は通過できなかったが将来を見越し、拡張工事が行われ今に至る。
ポートサイドの町を抜ける時は、町の子供が自分たちを指さしていたがそれを抜けると後は砂・砂・砂の連続である。
しかも、拡張されたと言ってもこの運河はやはり、機動戦艦にとって狭いため慎重な舵が要求される。
しかし、そんなこと今のベオウルフの艦魂リネアにはどうでもよかった。
甲板の上にいたら暑いので自分の部屋でクーラーを最大にしてぐったりとしていた。
ドイツを出港してからどんどん暑くなる。
ベオウルフは初の海外の派遣のため、始めは興奮していたがやはり、赤道に近付けば近付くほど暑いものらしい。
「暑いです・・・・・・」
リネアがそこまで言った時だった。
「リーネア! 来たよう!」
バーンと扉が吹っ飛ばされるように空き、ビスマルク2世の艦魂クリスタがツインテールを揺らしながら飛び込んできた。
「その存在が暑いです」
机に突っ伏したままリネアは言った。
「あれ? 元気ないねリネア」
「扉を早く閉めて・・・」
開けっぱなしの扉は容赦なく熱風をリネアの部屋に誘い込み、逆にクーラーの恩恵の冷たい風は容赦なく消えて行く。
「アハハ、ごめんごめん」
パタンと扉を閉めたのを確認してリネアはクーラーと並行して扇風機のスイッチを入れた。
無論、強である。
「で? 何? クリスタ」
「例の件だけど進んでいるかな?」
「例の件?」
クリスタに言われ。暑さで鈍った頭を回転させてようやく思い至った。
「準備は進んでる。 さっき、部下に指令を出したから」
「楽しみだねリネア」
ボンとソファに座りニコニコしてクリスタが言った。
実は彼女はリネアの姉なのだがどう見ても逆にしか見えない。
「どうせならドイツでやりたかった」
暑さに弱いため再び机に突っ伏すリネアであった。
その頃、演習の艦隊司令兼フリードリッヒ・デア・グロッセの艦長アドルフ・フレドリクは艦のことを副長に任せて自室でビスマルク2世の艦長カールと話をしていた。
「今回の演習だけどレイ首相は豪快なことをするよ」
丸眼鏡をかけた優男の印象を受ける彼は言った。
「機動戦艦3隻をロシア艦隊の横を通らせる。 当然抗議したんだろうな」
コーヒーの入ったマグカップを口に運びながらフレドリクが言った。
「してきたらしいね。 演習に機動戦艦を3隻も参加させることも気に入らないみたいだし、事実か分からないけどソマリア近海にはロシア艦隊がいるからね」
「海賊退治か?」
フレドリクは皮肉げに言った。
「そう彼らは主張してるね。 ドイツだって3隻しか派遣してないのに彼らは20隻近く派遣している。 その気になれば小国と渡り合える規模だね。 海賊退治には明らかに過剰な戦力だ」
「日本やアメリカもそこまで派遣はしていないか・・・」
「まあ、そうだね。 世論の関係上、海賊退治に軍艦を派遣しなければならなかったんだけど本音は海賊じゃなくてロシアの動きをけん制したいみたいだね」
「だが、名目はあくまで海賊退治・・・・・・過剰に戦力は出せないか」
「ロシア艦隊に対抗してという名目ではさすがに派遣増強はできないからね。 海賊が戦艦みたいな艦で暴れまわるなら話は別だけど」
「ありえないな」
ソマリアに戦艦を作る技術はないが近年海賊の装備もロケットランチャーを始め携帯型のミサイルランチャーなど重武装になってきている。
機動戦艦にはアイギスがあるためそんなものびくともしないが商船やタンカーなどの装甲がない艦には脅威である。
その武器もロシア製のものが多く見られる。
だが、それも昔の武器でロシアはかたくなにしらを切り続けている。
「ロシアか・・・何を考えてるか・・・」
「彼らは軌道エレベーターの開発に完全に乗り遅れたからね」
軌道エレベーターにより、人類のエネルギー問題は大きく改善された。
積極的に建設に参加した日本・ドイツなどは大金を獲得した。
隕石の問題があった軌道エレベーターだがそれを改善したのがアイギスという防御兵器である。
しかし、莫大な金がかかる軌道エレベーターの建設にロシアは無視し続け結果が今の事態を招いている。
実のところ、ロシアでは未だにアイギスを実用化できておらず、宇宙に関しての主導権は完全にロシアは出遅れていたのである。
「ん?」
その時、フレドリクの通信機に反応があった。
フレドリクは耳につけているその通信機のボタンを押す。
「どうかしたのか?」
「司令、よろしいでしょうか? ソマリア沖にて救難信号を受信しましたがすぐに消えてしまいました」
「海賊か?」
フレドリクが聞くと兵士は
「いえ、それは分かりませんが現在ソマリア近海は暴風のため、他国の艦船は動かせないそうです」
「それは海賊も同じだろう?」
基本的に海賊は小型の艦船を使う。
無謀な奴らでなければ基本的に嵐の海に出るようなまねはできまい。
「救難信号が出た海域はつかめていますがヘリを飛ばすのは危険すぎます」
「なら、メッサーシュミット1000を出せ」
「了解!」
通信が切れる。
「海賊かい?」
カールが聞くとフレドリクは頷いて軍服の上着を手に取った。
「お前も艦に戻れ、俺たちは最大戦速でソマリアに向かう」
「やれやれ、ロシアがどう動くかな?」
「攻撃してくるなら撃沈するだけだ」
フレドリクはそういい、CICに向かった。
ブザーが鳴り響きながらフリードリッヒ・デア・グロッセの後部エレベーターが動いている。
そのエレベーターから2機のステルスを意識された機体が現れる。
メッサーシュミット1000、ドイツ最強の戦闘機と言われる機種だ。
「ガルム1より! 発艦準備よし」
「ガルム2! 発艦準備できたぜ」
「了解、ガルム1、2発艦を許可する」
「ハハハ、ユルゲン、勝負するか?どれだけ落とせるか?」
青年の笑い声に若き隊長ユルゲンは
「油断するな、海賊とはいえロシアがどう絡んでるかわからないんだ」
「はっ、北のスラブの豚になんか負けるかよ」
「そういうあんたが1番心配じゃん」
「んだとフランカ!」
「本当のことなのにね」
クスクスと通信越しに笑う金髪の女性はエレベーターの下で戦闘機にのり出番を待っている。
「ガルム3、フランカ、ヴェルナーをあまりからかうな」
「了解隊長、フフフ」
ユルゲンはため息をつくと数あるスイッチを押していく。
「ガルム1発艦する」
ふわりと戦闘機が飛び立つ。
機動戦艦搭載の戦闘機は垂直離陸機能は必須である。
戦艦に航空機を乗せるのは昔からあったが現在ではヘリの他に
戦闘機を機動戦艦に搭載するのは当たり前になっている。
そのため、各国では空母発艦の戦闘機の他に垂直離陸の戦闘機の開発は必須事項となっていた。
たとえば日本の神雷は垂直離陸ではないが烈風は垂直離陸だ。
アメリカにしてもラプターは通常だがライトニングは垂直離陸。
唯一垂直離陸の戦闘機を保持していないのはロシアぐらいだろう。
ドイツはメッサーシュミット1000を持っているし、通常の離陸はバッヘムは主力を担っている。
「ガルム2出るぜ」
2機のメッサーシュミット1000は浮かび上がりやがてバンとソニックブームを起こして空の彼方に消えて行った。
―思えばこの3人とも長い付き合いですね・・・フレドリク様
作者「あ、あいつらこの頃からの付き合いなのか」
エリーゼ「まだ、マーナガルムがない頃です」
作者「にしても見事なまでにソマリア近海は混迷してるね」
エリーゼ「あなたの世界もそうでしょう」
作者「まあ、ここまではひどくないけどそうだね」
エリーゼ「聞くところによるとシーシェパードでしたか? そんな海賊はいるそうですね」
作者「ソマリアと関係ないけどいますね。 皆殺しにしてやればいいのに・・・」
エリーゼ「攻撃されて撃沈しないなんてあなたの日本は腐ってますね」
作者「ええ、腐ってます。 そういえば明日は選挙…とりあえず自民にいれるか」
エリーゼ「なぜです?」
作者「売国奴の民主なんかはなから指示してない。 何が外国人参政権だか・・・」
エリーゼ「それでこちらの更新は次はいつになるのです」
作者「知らない。 さて、明日は休みだしラノベで見るかな」
エリーゼ「死になさい作者!」
作者「わ、私のラノベが燃える! いやああああああああああああ!」
ズドオオオオオオオオオオオオオオオオン
エリーゼ「罰です」