第7話 やきもち
「逃げ足の速い……」
あの後、ベオウルフの艦内でリネアを追撃するために追い回したエリーゼであったがさすがに、自分の艦であるベオウルフ艦内ではエリーゼが分が悪い。
「やっぱりそうだったんだ……」
あの手紙はラブレターだ間違いない!
壮絶な勘違いをしているエリーゼだがこと、このことに関しては容赦がなかった。
「絶対に捕まえるんだから!」
ガッツポーズでエリーゼを固めた。
その頃、ベオウルフの艦魂、リネアは実はエリーゼのすぐ近くにいた。
(ちょっ、エリーゼ感よさすぎ!)
気配で分かる。
今にもこの部屋に踏み込んできそうだった。
転移したら確実にばれる距離だ。
そうなれば、追撃は避けられない。
(ああ、もうあの純情娘)
リネアからしたらエリーゼは姉に当たるが、実際の関係はエリーゼが妹のような関係である。
しかし、だからと言ってこの紙を持っている以上、エリーゼは追撃をやめないはずだ。
(どうしようかな……)
何か部屋にいいものがないかと探そうときょろきょろしてみる。
そして、あるものに目がとまりリネアは顔を真っ赤にした。
「き……」
素っ裸の男の兵士がシャワーを終えて出てくる所であった。
「きゃあああああああああああ!」
リネアのすさまじい悲鳴がシャワー室にとどろいた。
「リネア! どうし……」
バタアアンと扉が開きエリーゼが飛び込んでくる。
そして、兵士の素っ裸を見た瞬間エリーゼは気絶した。
「ええええ!」
リネアは驚愕したがこのすきを見逃すほど馬鹿ではない。
「ご、ごめんエリーゼ」
謝罪の言葉を口にしエリーゼを廊下に引きずり出して壁にもたれかからせると自分は転移して消えた。
結局、エリーゼが目覚めたのはもう、夜になろうとしていた時間だった。
「今日はどこにいたんだ? 昼も探したんだがな」
帰りの車の中でフレドリクは運転しながらエリーゼに聞いた。
エリーゼは疑惑の目をフレドリクに向けている。
「ん? なんだ」
「リネアの何がいいの?」
「はっ?」
突然の意味のわからないエリーゼの言葉にフレドリクは思わず聞き返した。
「今日朝、話してたでしょ?」
「よくわからんが……まあ、悪い奴ではない」
「ふーん、かわいいから?」
「……」
フレドリクは一瞬、リネアの姿を思い出し
「まあ、かわいいといえばかわいいな」
と、かわいい子供を褒める父親のようなつもりで言った。
しかし、エリーゼにはそれが、愛を語る男にしか見えなかった。
「最低! 馬鹿ぁ!」
「おい! エリーゼ暴れるな! 危ない! こら首をしめるな!」
結局、ばたばた騒ぎは家に帰るまで続いたがなんとか事故も起こらず帰ることができたのだった。
「へー、そんなことがあったんだ」
「そうだよ! シンシアがいなくなったらってフレドリク最低だ! 不潔!」
PM10時00分、エリーゼはかかってきたシンシアからの国際電話に向けて今日の出来事をぶちまけていた。
「ふふ、フレドリクが浮気か♪ 帰ったらどうしようかな?」
かわいい笑い声が受話器の向こうから聞こえてくる。
エリーゼはシンシアが本気で怒っていないのに気付き机をばんばんと叩きながら
「笑い事じゃないよ! シンシアはいいのフレドリク取られても!」
「んー、それは困るけど」
「なら……」
「エリーゼはフレドリクのこと大好きなんだね」
「なっ! ななな、何をいうのシンシア! 私はあなたとフレドリクが……」
「フフフ、楽しそうだな。 早く帰りたくなっちゃった」
「帰ってきて!今すぐに!」
「アハハ、無理だよエリーゼ、今私外国なんだから」
「どこ?」
「ん? 日本だよ。 今日は神戸にきてるの。 お義父さんとお義母さんも今日は疲れたって寝てるよ」
「うう! 帰ってきてよ早く!」
「アハハ、だから無理だって」
受話器の向こうではきっとエリーゼの大好きな笑顔を浮かべている彼女がいるのだろう。
それを見れないのはもどかしい気分だった。
「おいエリーゼ」
その時、ひょいと受話器がエリーゼの手から離れた。
フレドリクが受話器を持ちあげたのだ。
「ああ!」
エリーゼはおもちゃを取られた子供のように両手で受話器を求めるがフレドリクは背が高いため絶対に届かない。
「国際電話は高いんだから長く話すな。 シンシアから電話か?」
実は自室にいたフレドリクは気付かなかったのだがすでにエリーゼは1時間以上シンシアと話をしていたのである。
「あ、もしもしフレドリク?」
「ああ、俺だよ」
受話器に耳をあてるとフレドリクの顔に微笑みが宿った。
受話器の向こうからシンシアの笑い声が聞こえる。
その様子を見て、本当にフレドリクはシンシアのことが好きなんだと思った。
ならなぜ、浮気を?
エリーゼが考えた時
「何? 浮気? するかそんなこと………ああ、あれかエリーゼがそんなことを?………怖いこと言うな………例の奴だあれが近いだろ?」
なんのことだろうとエリーゼは首をかしげてフレドリクを見ている。
「ああ、じゃあ切るぞ? 合流は満州になると思う………ああ、じゃあな」
「ああ!」
がちゃりと受話器が置かれたのを見てエリーゼは悲鳴を上げた。
まだ、話したいことが山ほどあったのに……
「もう寝るぞ」
フレドリクは軽く欠伸をしながら寝室に向かったのでエリーゼは頬を膨らませてその様子を見送るのだった。
(楽しい……楽しかった時間 勘違いではあったけど私本気で心配したんですよフレドリク様……あなたとシンシアとの時間は大好きだったから)
作者「久しぶりだ……1年以上更新しなかったから」
エリーゼ「久しぶりですね豚」
作者「くっ……今回ばかりは言い返せない」
エリーゼ「日本とアメリカの決戦を放り出してなぜこちらを?」
作者「いやね、どういう結末を迎えるにしろこのドイツの物語は完結させないといけないんですよ」
エリーゼ「なぜです?」
作者「まあ、いろいろ作者事情があるのですが少し日常パートが欲しいと思って……」
エリーゼ「確かに本編は総力決戦の最中ですからね」
作者「というわけでこっちも更新していきます。 予定では長くならない予定ではあります」
エリーゼ「ところで草薙聞きましたよ。 桜を消すそうですね」
たら本当に消すかも……本編とリンクしてるからあんまり意味もないしね」
エリーゼ「こちらは完結させるんでしょうね」
作者「こっちは最後の想像図が完全に固まったし、涙のシーンの描写もなんとかイメージできた。 とある人の死に方は変わる可能性がありますので本編の方はそのうち修正しときます」
エリーゼ「ある人とは……やはり……」
作者(エリーゼ様……よーし!)
作者「やーい!ちび少女が泣いたぞ! 泣き虫エリーゼちゃーんどうしたのでちゅか?」
エリーゼ「っ! 死になさい草薙!」
作者(これでいいんだ……美少女に涙は似合わない)
作者「ぎゃあああああああああああああああ!」
ズドオオオオオオオオオオオオン
エリーゼ「まったく」