第6話 秘密のおにごっこ
一体なんだというのだ?
エリーゼは機動戦艦フリドリッヒ・デア・グロッセの艦上で不機嫌であった。
「おもしろくない…」
エリーゼの頭に浮かぶのはリネアとフレドリクのことだ。
自分に隠し事をするとはまさか本当に浮気か?
「そ、それだけは駄目!」
本当に浮気だとすればシンシアに自分はなんと言えばいいのだ?
フレドリクのことは任せるように言ったのにこれでは留守番失格。
いや、それどころか浮気がばれたらシンシアとフレドリクは離婚…
サーとエリーゼの顔が青くなった。
このままでは自分達の生活が壊れてしまう。
「断固阻止する!」
もはや、完全に浮気と決め付けエリーゼはフリドリッヒ・デア・グロッセの艦橋の上から粒子となり消えた。
その頃、フレドリクとリネアはフリードリッヒ・デア・グロッセの第1食堂にいた。
仕官が中心に利用し艦長であるフレドリクは艦長室に料理を持ってきてもらう権限はあったが忙しい時を除きフレドリクはこの食堂で食事を取るようにしている。
「はい、出来ましたよ艦長」
「ああ」
フレドリクは冷蔵庫にこっそり頼んでいたプリン(エリーゼの)を受け取ると食堂の椅子に座りスプーンと一緒にリネアに渡した。
「わー!ありがとうございます」
それをリネアは青い目を輝かせて皿にぷちっと空気を抜いて中身移して食べ始める。
「最高です!」
びしっと親指を立てて言う彼女をフレドリクは見ていた。
「それはよかったな」
「ええ、ところで先ほどのお話ですが」
「ん?頼んでくれたか?」
「はい、今日はクラウスが来る時間は昼までですから頼めますよ」
「俺がいければいいんだが…」
「それど頃じゃなかったんですよね?一体なんだったんですか?昨日の話って」
「それは…」
レイに話された計画…
ここは人の耳もあるので言うわけには行かないのでフレドリクは協力的な彼女に
はいずれは話そうと思った。
「後で話すよ」
「そうですか」
リネアはそれ以上気かずにプリンを全て食べ終えると
「さて、私は戻りますね。リスト渡してくれますか?」
「ああ」
フレドリクは軍服のポケットから1枚の紙を取り出すとリネアに渡した。
確かにとリネアはそれをポケットに入れる。
「じゃあ、ご馳走様でした」
「ああ、頼むぞ」
唇をぺろりと舐めてリネアは笑顔ではいと頷き光に包まれて消えた。
その場にはフレドリクだけが残される。
そして、その一部始終を見ていた影がつぶやいた。
「あの紙…怪しい」
そして、その影も転移の光の包まれて消えた。
余談だがフリードリッヒ・デア・グロッセではスプーンが宙に浮いたりといったことは
当たり前に起こることとして受け入れられている。
世界で1番心霊現象に驚かない乗組員なのかもしれない。
もっとも、新兵が腰を抜かすのは避けられないのではあるが…
「♪」
鼻歌を歌いながらリネアは自分の体である機動戦艦『ベオウルフ』の甲板に降り立った。
艦魂である彼女は船が自分の体なのである。
「さてと…」
ポケットから紙を取り出して内容を確認しようとしたリネアであったが
「その紙をよこしなさい!」
「え?げっ!エリーゼ!」
リネアがたじろいたのは無理はない。
自分の体であるベオウルフの艦上にエリーゼが現れたことにまったく自分は気づかなかったのだ。
まあ、紙の内容に意識を集中していたのとエリーゼのような親友が来ることは基本的にフリーハンド状態なので仕方ないといえば仕方ないのだが…
「その反応…やっぱりラブレター!」
「は、はい?」
なんかものすごい誤解をされているとリネアは感じた。
あの純粋娘はこの紙がフレドリクが自分に当てたラブレターだと思い込んでいるらしかった。
「ちょ!エリーゼ誤解よ!この手紙は…」
「じゃあ、見せてよ」
ずいっと一歩踏み出すエリーゼ。
リネアは迷いなく回れ右して甲板を走り出した。
というより逃げた。
「ご、ごめんエリーゼ!この手紙は今は見せられない!」
「!?」
なんということだろう。
そこまで2人の関係は進んでいたのだ。
きっとあの中身はフレドリクがリネアに当てたものすごい恋の手紙が書いてあるに違いない。
絶対にそんなものをリネアに渡したままにはしておけない。
「待ちなさい!」
リネアを追ってエリーゼは全力で駆け出した。
おにごっこの始まりであった。
『よく考えれば手紙ではなくメールで送れば済む話でしたよね…なぜ、私は気がつかなかったのか理解できません…ねえ、フレドリク…様』
エリーゼ「言い訳を聞きましょうか草薙」
作者「長期更新停止の理由は貴様が1番知ってるはずだエリーゼぇ」
エリーゼ「罰です」
作者「うおおおおぁ!」
ズドオオオオオオン
エリーゼ「愚かな」