第4話 時空修復計画とフレンチトースト
時刻は午後7時10分を回った。
カールと別れたフレドリクはエリーゼと共に家に戻った。
風呂を済ませて浴室から出たフレドリクは台所からいいにおいがしてきたので中を覗きこんだ。
「エリーゼか?」
見慣れた金髪の後ろ姿に声をかけると足に台をしいてフライパンで何かを焼いていたエリーゼは振り返らずに
「あ、フレドリク?ご飯もうすぐできるからね」
いくつかある足の台を行き来しながら包丁などを使い料理していくエリーゼを見てフレドリクはほぅと感謝した。
「いつの間に料理ができるようになったんだエリーゼ?」
「シンシアに教えてもらってるの。まだ、修業中だよ」
シンシアはフレドリクの妻である。
新婚旅行はすでにいった二人であったがドイツ国内の近場であったので今回休暇を取り長い旅行に行く計画を立てていたのだが演習のためフレドリクは行けずにシンシアとフレドリクの家族だけが旅行に行ってしまった。
レイ首相はフレドリクに休暇をやると行ってくれたがそれは4日後にドイツを出発するドイツ艦隊のフリードリッヒ・デア・グロッセに乗って行かなくてはならない。
早い話が休暇はやるが演習の海域近くまではフレドリクが自分の艦を指揮していけということだ。
軍事政権様様である。
「えい!」
髪をバスタオルでふきながらフレドリクはリビングで待つかと立ち去ろうとした時エリーゼが作っているものが判明した。
材料は食パンに牛乳にバターなどを使う…
「エリーゼ…」
冷たいというより呆れた声
「何?」
エリーゼは振り返らずに言った。
フレドリクはいうか言わないか一瞬迷うが言うことにした。
「夜にフレンチトーストはないだろう?」
エリーゼの目が見開かれた。
「近年ロシアの行動は目に余るものがあります。日本や欧州各国に対する威嚇行動は目に余ります」
「いや、しかしロシアとて戦争は望まんでしょう?アメリカ、日本、我がドイツを同時に相手をして…」
テレビで評論家達が意見を交わす前のテーブルの上に並べられた食事の名はフレンチトーストである。
「ごめんなさい…」
しゅんとなってうなだれているエリーゼを見てフレドリクはため息をつきつつも
「いいよ。たまにはこんな食事も悪くないさ」
フレドリクはフォークでフレンチトーストを口にいれて噛んだ。
「ど、どう?」
期待に胸を膨らませてフレドリクを見つめるエリーゼ。
(少し甘いな)
と内心で思うフレドリクであったが…
「まあまあだな」
と微妙な返事を返したのでエリーゼが怒った。
「それじゃ分からないよ!おいしいかまずいの二択」
「…」
フレドリクは困った。
確かに甘いがまずくはないのだ。
だが、うまいかと言われても…
「シンシアが帰ってきたら復讐だ」
「やっぱりまずいんだぁ」
叫びながらフレンチトーストを口にいれるエリーゼ
「甘いだろ?」
フレドリクが聞くとエリーゼは目を閉じて
「はい」
と無条件降伏した。
「そういえばフレドリク?あの話受けるの?」
甘いフレンチトーストを食べながらエリーゼが言った。
「あの話…ああ、あれか…」
レイ首相がフレドリクにした話は時空修復計画であった。
簡単に言えば過去に戻りソ連を潰し徹底的にロシアを小国に分断して連邦も作れないようにしてしまうという計画であった。
今のイスラエルだがあの国もロシア国内の一部をもらいユダヤ人の国を作れば中東戦争もなくなり今の独裁国家ロシア連邦と日本、アメリカドイツなどの睨み合いはなくなるのだ。世界は少しは平和になるかもしれない。
過去のヒトラーの血が流れている自分がヒトラーとあい未来の技術でソ連を潰す。
だがヒトラーを残せばという話もしたが計画の最後にはヒトラーを暗殺しアメリカと講話した上で戦争を終結させる。
未来艦隊はこちらに戻るという訳である。
「少し考えるさ」
計画発動は2年後である。
まだ、時間はあり返事もまだ先でいいとレイはカールとフレドリクに言った。
「私は行きたくないなぁ…フレドリクやシンシアとただ暮らしたいだけなんだし…」
フリードリッヒ・デア・グロッセは計画に含む予定はあるがフレドリク次第なのだそうだ。
送り込む機動戦艦はまだあるし無理にフレドリクとエリーゼを引き離すのもなとレイは言っていた。
ビスマルク二世も同様の理由でカールの返答待ちとなる。
カールはフレドリク達と別れ際
「少し考えてみるよ」
と言っていた。
「俺も行きたくはないな…」
「じゃあずっと一緒だねフレドリクやシンシア達と」
満面の笑顔を浮かべたエリーゼを見てフレドリクは本当にこいつ軍艦の艦魂かなどと思いながらもその顔は穏やかなものであった。
ジリリリリリリ
「あ、電話」
エリーゼは椅子から飛び降りると壁にかかっているテレビ電話をとった。
「もしもし…あ!シンシア。うん元気だよ。フレドリク?かわるね」
フレドリクはエリーゼから受話器を受け取ると国際電話となっているテレビ電話でシンシアと話始めた。
うれしそうな顔だ。
エリーゼはソファーに寝転びながらその光景を楽しそうに見ていた。
<もうこの時間には戻れないんですね…二度と…>
エリーゼ「楽しかっですね…」
作者「…」
エリーゼ「同情はいりませんよ草薙」
作者「は、しかし…」
エリーゼ「言い訳するなら罰です」
作者「そ、そんな!ぎゃああああ!」
ズドオオオオオオン
エリーゼ「いつか…戻れるのでしょうかこの穏やかな日々に…」