プロローグ−シンシア
独立機動艦隊『紀伊』−連合艦隊大勝利の外伝第2段です。
日本がアメリカに大勝利を納めた2040年の魔王と呼ばれることになるアドルフ・フレドリクの物語です。
その日、ドイツ海軍の制服を着たフレドリクは玄関にいた。
彼の前には長い金髪の女性が大きな旅行かばんを横においてフレドリクの服を整えていた。
「もう、また襟が曲がってるよ?本当に私がいなくて大丈夫?」
「大丈夫だ。あまり心配ばかりしてると早く老けると言うぞシンシア?」
すると、シンシアは意地悪く笑い
「ふーん、老けて欲しいんだフレドリク?」
「誰もそんなこと言っていない」
フレドリクは反論すると旅行かばんをシンシアから奪った。
「あ…」
「やはり、空港まで送ろう。心配だ」
「心配しすぎよフレドリク。戦場に行くんじゃないんだから」
「行く場所が心配なんだ。今からでも中止しないか?父さんや母さん達はもう仕方ないとしても…」
「でも、もうお母様とお父様に約束しちゃってるから…」
シンシアは困った顔でフレドリクを見た。
「俺から言う。満州なんてロシアと国境を接してるんだ。あんなならずものの…」
フレドリクは続きを言えなかった。
シンシアが人差し指をフレドリクの唇の前に持って行ったからだ。
「あんまり軍人が他国を批判しちゃ駄目だよ?」
「すまん…」
フレドリクが言うとシンシアは微笑んだ。
「たった一週間の旅なんだし最後は日本に寄るのが楽しみだよ。フレドリクが行けなくなったのは残念だけど…」
「仕事だからな…」
フレドリクは残念そうに言った。
本来彼は休暇を取り父と母が旅行している場所である満州にシンシアと共に旅行に行くことになっていたのだが突如軍が彼の休暇を取り潰したのである。
「仕事かぁ…」
シンシアはそういいながらフレドリクの横に立っている少女を見た。
「ごめんシンシア…」
その少女の名はエリーゼ、だが、彼女は人間ではない。
全ての船に宿ると言われる船の精霊『艦魂』である。
エリーゼはフレドリクが艦長になることになっているドイツの新型機動戦艦『フリード・デア・グロッセ』の艦魂である。
驚くほど容姿がシンシアに似ている。
年は18才のシンシアだが少女は13才くらい。
似ているとはいえシンシアの子供バージョンと言った方が正しいだろう。
「なんでエリーゼが謝るの?」
シンシアは優しい笑顔で言った。
「私が出来たせいでシンシア達の旅行がめちゃくちゃに…」
「馬鹿か?」
ポンとエリーゼの頭に手がおかれた。
エリーゼが見上げるとフレドリクがシンシアと同じく穏やかに笑いながら
「お前のせいじゃないさ。ロシアの動きがおかしいからな」
ロシアは軍備を増強し日本やアメリカに並ぶ軍事大国であった。
近年ではグルジアに無理矢理侵攻し国際社会からすさまじい批判を浴びたことが知られる。
今回フレドリクの休暇が中止になったのは万が一機動戦艦が必要になった時艦長不在では困るからだそうだ。
エリーゼは顔をあかくした。
「アハハ、エリーゼ顔真っ赤だよ?フレドリクに惚れちゃった?」
「そ、そんなことは…」
エリーゼは顔を真っ赤にしてあたふたして言った。
フレドリクは
「そうなのか?」
とエリーゼを覗き込むように見た。
「し、知らない!」
エリーゼはぷいとと顔を背けてしまった。
シンシアはあらあらと微笑んでから携帯で時間を確認した。
「そろそろ行くね」
「やはり送った方が…」
やはりフレドリクは言葉を最後まで紡げなかった。
シンシアがフレドリクの背に腕を回し唇を塞いだからだ。
数秒のキス…
エリーゼは顔を真っ赤にしながらちらちらそちらを見いた。
そして、キスが終わるとシンシアは旅行かばんを手に持つと迎えにきたタクシーに乗り込んだ。
「じゃあ行ってきます」
フレドリクはこれ以上引き止めたり送ると言っても無駄だなと思い愛する妻を送る夫の顔になり言った。
「ああ、気をつけろよ?父さんと母さんによろしくな」
「了解!お土産期待しててね。エリーゼも何か買ってくるわね」
「うん、ありがとう」
エリーゼもひらひらと手を振った。
タクシーが発進する。
エリーゼとフレドリクはそれをタクシーが見えなくなるまで見ていた。
これが最後の別れになるとも知らずに…
エリーゼ「ついに私達の時代が来ました」
フレドリク「ふん、下らんな」
エリーゼ「お帰りになりますかフレドリク様?」
フレドリク「そうさせてもらおうか」
エリーゼ「…」
作者「帰っちゃいましたねフレドリク」
エリーゼ「…」
作者「えっとエリーゼ様が黙っちゃったので私が説明をこの外伝はフレドリクにスポットを当てた外伝です。この外伝は本編が完結しない限りは完結しません。先に行っておきます。ですので長く更新が止まっても書かない訳じゃありませんから」
エリーゼ「他の本編や外伝を放ってですか?」
作者「おっとエリーゼ様復活ですね。大丈夫です。本編優先ですから」
エリーゼ「ではこれは?」
作者「衝動書き…というのは嘘で本編で魔王なフレドリクの過去を読者に知って貰いながら書いたらさらに楽しめるかと…」
エリーゼ「まあ、いいでしょう」
作者「ありがとうございます。いやあ、しかしエリーゼ様昔はかわいかったですね?」
エリーゼ「どういう意味です?」
作者「フレドリクにぽっとあかくなるとこなんか…あ!ごめんなさい!ミサイルはやめて!」
ズドオオオオオオン
エリーゼ「罰です。ではご意見・感想お待ちしております」