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先輩、私だけを見てください  作者: 加藤 忍
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5

菜穂と別れて教室に帰ると、真奈美が俺の方をじっと見ていた。俺の席に座ったまま何かを言おうとしていたが、俺が席に近づくと同時に教師が入ってきた。ほかの生徒も一斉に席に着く。真奈美はそっぽを向くと自分の席に戻っていった。


授業中だというのに真奈美は時々俺の方を見てくる。目が合うと前を向いてしまう。そんなことを何回か繰り返しているうちに放課後になっていた。


「綾人、一緒に帰ろ」


鞄に教科書を入れている最中に真奈美が鞄を持って席の前にきた。顔はいつも通りだが声のトーンが少し低かった気がした。ほかの生徒がぞろぞろと教室を出て行く。ほかの人は部活とかだろうが俺はどこにも所属していない。


俺の家と真奈美は近く、俺の家から歩いて五分ほどだ。一緒に帰ろうが帰るまいが同じ方向だ。


「帰るか」


鞄のチャックを閉め鞄を手に教室を出た。真奈美も無言で後ろをついてくる。


いつもはこんなに静かではない。一緒にいると何気ない会話を振ってくる真奈美の顔は沈んでいた。


「何かあったのか?」


真奈美とはかなりの付き合いになるので異変にも敏感になっている。


声をかけると真奈美はそれまで下を向いていたが、頭を挙げた。口をパクパクさせらがら何かを言おうとしている。不意に昼のラインのことを思い出し右ポケットからスマホを確認した。


「・・・」


ラインを今更見て真奈美の異変の意味を理解した。


「ねぇ綾人、綾人って付き合っている子いるの?」


タイミングを見計らったかのようなタイミングで真奈美の質問が飛んできた。周りには生徒の姿はない。


「どうしたんだ急に?」


俺には心あたりがある。多分菜穂とのことだろう。最近菜穂となにかとよく話しているし、今日に限っては弁当を作ってもらった。そんなことは真奈美に一度も話したことがない。


真奈美は前を向いたまま俺の前を歩き出した。少し小さな背中を向けてくる。



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