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先輩、私だけを見てください  作者: 加藤 忍
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綾人が部屋を出て行って隣の部屋のドアが開く音がする。沙智の綾兄ようやく来たと言う声が壁越しに聞こえる。綾人をもう少し引き止めておきたかったが、なにせ私は病人。風邪を移すわけにはいかない。


今朝だって体調が優れないのはわかっておきながら学校に行った。我慢できると思っていた。頭がズキズキするぐらい、いつもの偏頭痛だろうと薬を飲んでいたから。でも学校に着いて体を動かすのがきつくなった。


綾人がいなかったら多分、誰もなにも言わなかったと思う。だっていつものように綾人の席に座って待っていたから。でもそれがかえって迷惑をかけた。保健室まで行くときどんな気持ちだったんだろう。恥ずかしいかったかな?それとも私の心配だけをしてくれたかな?そうだといいな。


今日の朝のことを思い出しながら隣の部屋の音に耳を澄ませる。綾人と沙智の声はほとんど聞こえない。ときどきここはこの公式でと言っている綾人の声が聞こえるのでちゃんと勉強をしているのがあるわかる。


部屋に置かれた時計の針がカチカチと秒針を動かす。外の色も徐々に沈んで行く。


「ポニーテールか」


急に綾人の言った言葉が頭をよぎった。いつからポニーテールにしたのか、私はよく覚えている。忘れることはない。あれは小学校のときだった。


小学五年のとき、綾人たち数人が教室の掃除中に女子の髪型の好みについて話していた。小学生にしては珍しい会話だったと今では思う。ファッションとかへの興味が薄い年頃だから。


他のみんなはショートボブやお団子と言ったどこで覚えたのかわからない髪型を言っているなか、綾人はポニーテールと笑顔で言った。他のみんながそれしか知らないんだろと言っていた。私も当時は全く分からなかった。知っていてもポニーテールとショート、ツインテールぐらい。


でもあの時から綾人のことは気になっていた。だから好きだと言ったポニーテールに次の日からして学校に行った。綾人が真っ先に似合うねと言ってくれたのはとても嬉しかった。言った本人は覚えていないみたいだったけど。


ガチャンとドアが開く音がして勉強を終えたのか、二人は下の降りて行った。静まり帰った二階にはもう日の光はほとんど入ってこなくなっていた。ボーとしていると時間が過ぎるのが早かった。過去の思い出に浸っていると段々と眠気に襲われた。綾人が入って来る前もこんな感じだった。まぶたが自然と閉じていく。抵抗することなく、私はそっと眠りについた。

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