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先輩、私だけを見てください  作者: 加藤 忍
17/22

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「お邪魔します」


紗智は手を後ろに組んでいらっしゃいと歓迎してくれた。おばさんは果物切って来るねと言ってリビングに消えて行った。


俺の家より一回り大きい海崎家は玄関から違う。名前の知らない絵画や可愛い猫の置物、靴はいつも靴箱の中にあるので靴が出ていることはない。


玄関の隅に靴を置いて廊下を歩く。


「今日はお姉ちゃんのお見舞い?」


「そうだけど」


「あとで教えて欲しい勉強があるんだけど・・・いいかな?」


紗智は中学三年で早くも勉強に打ち込んでいた。俺たちと同じ学校に行きたいと言っているのだが、俺自身そこまで勉強した覚えはない。


「綾人君これお願い」


リビングからりんごなどのカットしたものをトレーに乗せておばさんが出てきた。そのトレーを受け取ると階段を上がった。紗智もついて来るが自室の前に着くと後で来てねと言って入って行った。


二階の奥、ドアにローマ字で真奈美と書かれた板がつるされている。部屋の前に立つとトレーを片手に持ち替えドアをノックする。


「入るぞ」


「綾人、いいよ」


声ですぐに気づいたようで名前を当てられる。ドアをゆっくりと開けると目の前にベットで寝ている真奈美と目が合う。


「体調どんな?」


「朝よりは大丈夫」


ドアを閉めて聞く。トレーはベットの横に置かれていた小さい机に置いた。部屋は綺麗に整えられていた。机の上は勉強しやすそうに整っているし、本も隙間なく収められている。服類はクローゼットの中だろう。

この部屋に来るのはいつぶりだろう。中学の時にはお互いの家で遊ぶことはなかった。電車やバスの遠出の方が多かった。普段から一緒にいたからあの時からカップルとか言われてたっけ。


「どうしたの?」


部屋を見回して立ち止まっていたことに気づきなんでもないと伝える。ベットの近くに行くと胡座あぐらをかいた。真奈美が体を起こそうとするので強制的に寝かせる。


「病人は寝てろ」


「起こしたのは綾人なのに・・・」


「寝てたならごめん?」


「いいよ、辛くてなかなか寝付けなかったから」


クシュンっと手で口元を覆いながらくしゃみをした。その瞬間、真奈美のポニテ以外を久しぶりに見た。小学までは下ろしていたが中学からだっただろうか、会う度にポニテだった。


「今日はポニテじゃないんだな」


「さすがに寝ているときまでポニーテールはしないよ」


ま、髪が邪魔だろう。寝たまま天井を見ようとしたら束ねた髪のせいで寝心地が悪くなるだろう。それにポニテは髪を引っ張るから頭皮にはあまり良くないとかテレビで言ってたな。あれなんの番組だっけ。


「そういえばなんで真奈美はポニテにいつもしているんだ?」


「なんでだろう、気がついたときにはポニーテールにしてたと思う。いつからやっているかも、もう昔のことだから覚えてないな」


昔の思い出に浸っているのだろう。話もいいところだしこの部屋から出るか。病人をいつまでも起こしているわけにはいかない。会話中もときどき咳き込んでいるし。


「俺はもう出るよ。沙智に勉強教えてくれって頼まれたし」


「そうなんだ・・・うん、勉強お願いね」


任せろと言って部屋を出た。ドアを閉めるとき、真奈美が少し寂しそうに見えたのは気のせいだろう。



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