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流浪の剣士と隻脚の奴隷  作者: しろたけ
6/24

記憶

ここは日本。俺は仕事から帰ると、作業着を洗濯機に突っ込む。

その後お袋を風呂に入れる準備をする。

お袋は病を患っており、長く立っていられない。ほとんど寝たきりだった。

親父は1年前に鬼籍に入ってもういない。

昼間はヘルパーが面倒を見てくれているが、風呂や身体を拭いたりするのは

交代制でやっている。


俺は20歳から28歳までの間、一人暮らしをして実家には、就職が決まっても帰っていなかった。

親父の葬儀の時、久しぶりに会った母の姿を見て愕然とした。


頬はやせこけ、背中は丸まり、幾分か白髪もあった。

親父の死に顔も随分老けて、祖父そっくりのおじいちゃんだった。


両親の変貌ぶりに涙した。なにも親孝行しなかったバカ息子でごめんよ、今から母親にだけでも親孝行するから。


そう心に決めた矢先、母が病に倒れた。


緊急手術後に医者に言われたことは、


「1年、生きれるかどうか」


無情にも余命宣告を受けた。母はまだ60歳だ、ちょっと早くないか?

せめてあと20年・・・・


俺は実家暮らしを決め、アパートを引き取り、今の仕事も辞め、母の介護をしながら生活することにした。

幸い、家から車で30分のところの工場へ就職できた。


母との生活は楽しかった、もちろん療養介護しながらだが、母と「最近のテレビが同じ人しか出てない」「いつも夜遅くまで野球ばっかりしてたね」とか、他愛もない話題で笑い合い、ゆっくり、そしてあっという間に1年が起とうしていた。

 

調子を崩して入院していた母が、容体が急変しそのまま帰らぬ人となった。


急いで駆けつけたが、どうやら死に目には間に合わなかったようだ。


死んでしまった


激しく慟哭し、心の一番敏感な部分を、思いっきり握りつぶされた様な感じだ。


葬儀が終わった日以来、俺は引きこもった。


会社には1カ月休みますと連絡し、一歩も外に出なくなった。週に一度に親戚が見に来て、叱咤激励してくれるが、頭に入らない。いつの間にか寝ている。


もう時間の感覚すらわからなくなっていた。

お読みいただきありがとうございます

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