始まりの帰還
マーダーグリズリー討伐後、俺は報告のためにギルドへ赴き、事の端末を説明した。
ギルド長曰く、北方山脈から移動してきたマーダーグリズリーが、ブラッディベアーの縄張りを荒らし、劣勢に追いやられたブラッディベアーが麓まで下りてきたのではないか。
という見解だった。
その方が合点もいくし、納得する。今回は運が悪かった。
しかし、一度でもこういったことが起こると、「次」が怖い。今回は『偶々』『運がよく』
撃退できたのだ。そんなことを考えてると
「おいおい、この街を救った英雄がそんなシケたツラァしてんじゃねぇよ!本来なら
討伐隊組んで撃退するところを、一人で倒しちまったんだぞぉ?しかも無傷でだ、いく
らB級の冒険者でもなかなかできるもんじゃあねぇ!」
そう言ってガッハッハと笑い、俺の肩をバンバン叩きながら褒められた。悪くない、いや嬉しい。年甲斐もなく歯に噛んでしまう。
ただあくまで冷静に、褒められてうれしいのを表情に出さないようにしながら
「次、また出たらどうします?」 そうだ、また来るかもしれない。
「んー、そん時はそん時よぉ!・・・まぁ、自警団やらトラップやらの見直しは必要
だがな。」
正直不安に思った。このままこの街から離れていいのか。また来るのではないかと。と思ってると
『おれ、ヤヒロさんみたいに強くなって守って見せます!』『俺も!』
ふいに後ろから声が上がり、声の主を見ると、今回の部隊に配属された青年団の皆だった。
どうやらマーダーグリズリーと切り結んでるところを見ていたらしい。
『ほんとにすごかったっス、あんなデカイのを一人で倒して・・・』
そのうちの一人は、見た目は15歳くらいだろうか。目をキラキラさせて言っていた。
それを聞いていたドレイクは
「ハッハッハ!うちの街は有望株が多いんでなぁ、それに魔獣の下りてきやすい時期は
冬の間だけだ。その間は持ちこたえて見せるぜ。」
事実、雪の降る間以外は、どの魔獣も山奥に引っ込む。この辺の魔獣はそういう習性を持っていた。
(それに・・・こういう若者がいると任せて大丈夫かもしれないな)と安易だが、少し安心できた。
「そうですか、でも対峙した時は怖くてションベンちびりそうだったんですけどね。いやちょっ
と漏らしたかも・・・もし次現れたらオシメいただきますがよろしいですか?」
『ハンッ、考えておこう!討伐報酬やるから明日また顔出せ!』
俺はギルドを後にして姉夫婦の宿へ帰った。
宿の扉を開け
「ただいm『おかえり!!』『お疲れ様!いやーすごいね!』」
姉夫婦が熱烈に出迎え、『怪我はない!?』『なんで一人で倒そうとしたの!!』。
と心配と怒りのありがたい姉のお言葉をちょうだいしつつ、
傍らでは夫のセイルが『どんな風に倒したんだい!?いやぁさすが僕の弟だよぉ!』
とこれまたキラキラした目で言っていた。なーにが僕の弟だ、調子のいい義兄だな。
そして夕食は大好きなカルボナーラ頬張りばあちゃんの大好きだった赤ワインをゆっくり味わった。
その夜、おれは久しぶりに あの夢 を見た
お読みいただきありがとうございます