決闘
ドゴォオオオオオオオオン!!!!
当たった瞬間爆音が轟く。
矢に火属性を付与させると対象に当たった場合、一気に燃え広がる寸法なのだが
先ほどの魔法は熱線のような矢になり、当たった瞬間爆発させる。
「どうだ!?」
一気に燃え広がった炎は、雪の上ですら燃え揺らめく、そしてその炎の中から
左腕を飛ばされたマーダーグリズリーが現れた。多分、左腕は心臓を守り犠牲となったのであろう。しかしそれでも胸の分厚い肉はそがれ、胸骨が完全に露出していた。
(さすがにしぶといな・・・・)
右腕は使い物ならず、左腕は無くなりながらも相変わらず殺気が見ち溢れた目で俺を睨み
口からは血と瘴気を吐いていた。
俺は装備していた弓矢を投げ捨て、背中に装備してあるブレードソードを抜く。
ブゥウン・・・
矢にかけてた魔法と同じく風魔法を剣にかける。そうすることで切れ味をよくさせる。
いくら両腕が使えなくとも、素早く距離を詰められ、牙でやられる可能性がある。
俺は覚悟を決めた。
「いくぞ・・・」
静かに力強く雪を蹴った。
グガアアアアアアアア!!!!!
咆哮とともに奴も向かってきた。
奴ももうヤケになってる、このまま俺を食い殺そうと噛みついてくるだろう
奴との距離約3m
(やっぱりな!)
奴はやはり跳んできた、それも圧倒的な速さで。
「ぐぅッ!!」
奴の威圧感と恐怖で押しつぶされそうだ。足が震え、呼吸が浅くなる。ただここで死ぬわけにはいかない。生きて戻らねば。
おれは左腕のない方向へでんぐり返しするように跳んだ。案の定俺がいたであろう場所に噛みついていた。
おれは起き上がり際に剣で、がら空きの左脇腹を全力で切った。
「フウウウウッ!!」
ザスッ!!
勢いよく奴の脇腹から鮮血が飛び出る。マーダーグリズリーの肉厚な体もザックリいっている。おそらく致命傷だろう。
グ・・・フゥ・・・
それでも奴は倒れない。まだ目が生きている。
まだ追い打ちをかけるところではないと、俺の本能が言っている。
すぐに後ろに跳んで奴と間を開けた。
ゆっくりと、奴もまたこちらへ向き直した。
(しかし・・・)
でかい。俺が身長170㎝で小柄なのもあるが・・・・こいつは250㎝くらいあるんじゃないか?顔なんかバカでかい。よく今の突進よけたな・・・
「フへッ」と変な笑いがこみ上げる。
(どうする・・?いや、焦るな・・・)
グルルル・・・
(奴の突進に合わせる、カウンターだ)
俺は剣の切っ先に魔力を集中させ、構えを「突き」をしやすい構えにする。
風が強くなり、吹雪始めた。それなのに額から汗がしたたり落ちる。汗が目に入って痛い。
だが瞬きすらできない。奴の突進のスピードは尋常ではないのだ。突き以外の行動は油断に繋がるだろう。そしてこの近距離。威圧感で押しつぶされそうだ・・・
奴の腕が健在であれば剣先を抑えられて、俺に勝機はなかっただろう。
「フーッ」
ちょっと強めに息を吐いて体の緊張を緩める。忘れてた「寒さ」を感じた。
・・・
・・
・
・・・・ドンッ!!!!!
「ッ!!!」
ドシュ!!ブシャッ
勝負は一瞬だった。俺の剣がマーダーグリズリーのむき出しの胸骨を貫き心臓を刺した。と同時に
「うおおおおおおおおお!!!」
剣に風の魔力を一気に流し込んだ。
剣の周りに竜巻が起き、皮を、骨を、肉を、穿いた。奴の背中から大きな竜巻が見えると同時に、奴の体に穴をあけながら吹き飛ばした。
ドチャッ
マーダーグリズリーは5,6m吹き飛ばされ、その場に落ちた。
「ハァッ!ハァッ!ガハッ!」
俺はあまりの緊張と酸欠でその場に膝をついた。魔力も一気に消費してしまい立ち眩みもする。
・・・
・・
息を整えると、骸となったマーダーグリズリーではなく、奴が食事してた場所へ向かった。
「う・・・やっぱりか・・・」
そこにはカーキ色のズボンが、体を成していないくらいボロボロになり、すね毛まみれの足が覗いている、腹から上のない死体。
そして綺麗な金髪の髪が一部赤黒く染まり、顔を大きくえぐられたエルフの死体。どうやら体のほとんどを食われたようで、首と右の乳房がギリギリ繋がってるだけの状態だった。
そして最後は喉元を大きく噛み千切られて頭と胴が皮一枚でつながってる状態の、フードコートを着た青年。
俺はこの肉片の中と衣服の中からギルドカード探し出し、毛髪を取れるものは毛髪を。下半身しかない遺体からはベルトに付いていた短剣を遺品として回収し、帰路についた。
読んでいただきありがとうございました。主人公のヤヒロさんを掘り下げていく話も書いてますので
お読みいただければ嬉しいです。