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流浪の剣士と隻脚の奴隷  作者: しろたけ
2/24

不穏な里帰り(後編)

前話に続いて、後編です。



ギルドへ着くと

「なるほど、山の中で何かがあった、と見れば説明はつくな。」

スキンヘッドで慎重190㎝。ゴリゴリマッチョでいかにも腕っぷしが強そうに見えるギルド長のドレイクさんと偵察隊の人達が話し合ってたところだった。


受付をしていた女性に討伐に行くという旨を伝えると、大急ぎでドレイクさんのところに向かって事情を説明していた。


ドレイクさんが大股でノッシノッシと近づいてきながら

「お前たしかクローネのところの・・・」

「ご無沙汰してます、ヤヒロです。」

「おー久しぶりだなぁ!!あー、そうか婆さんの葬儀で戻ってきてたのか」

「はい、つい先日に。ところで討伐の件なんですが」

「・・・おまえさん、なにを言ってるんだ?冒険者になったのは聞いてるがお前の様なマッチ

 棒がかなう相手じゃないぞ?」


なんだこの海坊主・・・・・人を見かけで判断しやがって・・・マッチ棒て・・・・


おれは黙ってスッとギルドカードを見せる

「ん?なんだ・・・・・!!?おいおい、いつの間にBランクになってたんだよ・・・すげえな」

俺はちょっと自慢気になったが、入国手続きだったりでギルドカードを見せると大体こんな反応をされる。

「ただなぁ・・・この前偵察に行った奴らもBクラスだったんだが、戻ってこないのを見ると、Bクラスといえどやられてるかもしれないんだぞ?」

「もちろん存じてます。ですから討伐をするのなら、その隊に自分も入れていただきたいのです。」


そう言うとドレイクさんは目を見開いた。


「それはありがたい、実はBクラスがやられたって聞いて他の冒険者が討伐隊に加わんねえんだよ、まったく腐った根性しやがって・・・・」


そりゃそうだ、Bクラスは冒険者の3割程度しかいない、Aが1割、Sが両手で数える程度らしい。


「とりあえず集まった人数でやるしかない、作戦はまず獲物の正体を確定させるため明日の昼すぎに再度偵察に行く。麓まで降りてこられた以上街まで時間はないと考えていいだろう。詳しい話は集合したその時に行う。」

それを聞いて俺とセイルさんはギルドを後にした。


その夜、俺は大好きなワインを飲みながら気持ちを落ち着かせた。


翌朝、今日が偵察の任務と知ってても姉のクロームも、夫であるセイルも変わらずに話しかけてくれる。ホント、こういう所好きだぜ・・・・姉さん、兄貴・・・・


そしてギルド前に集まった面々に驚いた、自分を含め12人しかいないのである。

先日行った偵察隊に地元の青年団と、Dランクの冒険者パーティ4人だ。


ギルド長のドレイクさん曰く人数はまだいたのだが討伐作戦に回したいのだそうだ。

今回の偵察隊はあくまで獲物の割り出しだから、少数精鋭ということだ。

それに足首まで雪が積もっているから、大人数では動きづらいらしい。


ここで班に分かれる、

俺と偵察隊1人、      冒険者パーティ2人と青年団1人

青年団3人と偵察隊1人   冒険者パーティ2人と偵察隊1人


これで俺たちの班は目撃のあった、麓の崖から比較的広い道に出るルートだった。   

ルートを確認した俺は偵察隊の一人サーニャと行動を共にする。


他のメンバーは皆、顔がひきつっていた、魔獣と戦った経験もないのだから無理もない。

冒険者パーティもブラッディベアーと戦ったことが無いらしい。

いかんせん経験が少ないメンバーのために、一応声をかけた。

「ブラッディベアー討伐すれば1体につき銀貨10枚出してくれるそうだ、討ち取ってうまい酒でも飲もう」

笑う奴、なんだこいつと思ってみるやつもいたが一応Bランクの冒険者の戯言と聞いてくれて、引きつった顔の奴がすこしほぐれたようだ。



俺と行動を共にするサーニャは獣人で黒髪のショートに猫耳だった。

この世界では獣人が迫害された歴史が色濃くあり、人間の出来損ないだの、飼えないペット、だのと虐げられてきた。

今だ、隣国のヴァレンティア皇国では迫害する地域があるらしい。


軽く挨拶しようかと、突然サーニャが

「モリばあちゃん、残念。まだいっぱいお話ししたかった。」

と言ってきた。この子ばあちゃんの知り合いか、俺に言ってきたってことは、おれが孫ってことも知ってるのか?

「うん、俺も残念。サーニャは俺のばあちゃんの事知ってるのかい?」

「いっぱいお話聞いてもらった、色んなこと教えてもらった。いっぱい笑った。」

そうか・・・おれのばあちゃんの話し相手になってくれたのか。

「ハハッサーニャはいい子だね、おれのばあちゃんと仲良くしてくれてありがとな。」

そう言うと、俺の方が恥ずかしくなってきてしまい、顔をそむけた。

「だから元気出せ、ヤヒロ!」

なんていい子だ・・・・、思わず撫でてしまいそうだ・・・・・。はじめて姉と義兄以外に慰められて、顔が熱くなる。

「よしサーニャ、頑張るぞ」「任せろ~」



そんなサーニャと道へ入っていく。

サーニャの獣人である聴力と匂いで、獲物が分かる特性を生かして先頭を進んでくれた。


木のところどころに爪痕がある。やはり街まであと一歩のところまで来ていたか・・・


しかしおかしい、なぜここまで来て目撃しない?なぜサーニャが反応しない?

「サーニャ、どうだ?」と聞くと「匂いはそこら中からするんだけど、もっと奥から新しい匂いがする」らしい、俺はほんの少し嫌な予感がした



だんだんと空気が変わっていく。


とんでもないのがいると、俺の全身の魔力が反応し、肌の表面がピリピリさせる。


サーニャが「あっ」 と小さく叫んだ。

俺の緊張が一気に高まる。


サーニャが身をかがめた、俺もすぐさましゃがむ。

崖へと続くなだらかな斜面の道で、黒い物体が木々の隙間から見えた。

(あれは・・・ブラッディベアーか?) 

サーニャが「おかしい・・動いてない・・・」と小声で言ってきた。

少しずつ距離を縮めていく。


そして、はっきりと『それ』の形が分かってきた。


『それ』はブラッディベアーの死骸だった。しかも1体ではない、3体もあった。

周りを見ると土が抉れ、木には深い爪痕、ブラッディベアー自体にも深い傷跡があった。


目撃例は4体だったはず、もう1体いないってことはそいつか・・?

と思っていたその時、


サーニャが「アレ!」と言って指をさす。今度はなだらかな斜面が続く大きく開けた丘の

近くにもう1体『あった』


ザクッザクッ・・・雪を踏みしめる音が嫌に大きく聞こえる。もう1体の周りの雪は赤黒く変色していた。

やはり大きな爪痕と首をかじられた傷跡がある。


間違いない。ブラッディベアー以上に強い魔獣がいる。たぶん、いや十中八九その魔獣の正体が分かった。


『マーダーグリズリー』

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。次、戦います

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