女勇者と強すぎ魔王
初めて短編書いてみました!
短いのでさらっと読めると思います!
クスリと笑っていただければ幸いです。
人類と魔族
この世界に生息する生物はモンスターを除くと大きく分けてこの二種類で現在進行形で争っている。
魔族とは魔族だ。
そしてそれ以外は全部人類だ。
お分かり頂けただろうか?
人類と魔族では圧倒的に人類が多い。
比で表してみるとだいたい9:1といったところだ。
人間は当然として獣人やエルフ、妖精族なんてのも人類に分類される。
言うまでもないと思うけど完全に魔族だけハブられてるからね。
ではなぜそんなことになったか?
他の種族にはない独特の角と羽。
それは別に大した問題ではない。
簡単に言うと魔族は強すぎたのだ。
他の種族と比べるのがバカバカしくなるくらい膨大な魔力。
そして、非常に高い魔法への適性。
しかもどいつもこいつも1000年くらいは生きる。
もし、そんな奴らが自分達に牙を剥いたら…
そう考えると潰さずにはいられなかったのだろう。
そんな感じで魔族と人類は殺しあっている。
魔族から人類に手を出したことは一度もない。
けどなぜか魔族に壊滅させられたと言われている町なんかはいっぱいある。
そのせいで魔族の印象は最悪だ。
死んで当然の生物の敵。
それが魔族。
そんな魔族を滅ぼすために人類は様々な手を使っている。
異世界からの戦士の召喚。
数百年に一度生まれる勇者の『才能』を持った者による抹殺。
ほとんどやっているのは人間だがこれらが狙うのはただ一人。
他種を凌ぐ圧倒的な力を持つ魔族を率いる王、魔王である。
ちなみにそれが俺、十守真央だ。
「『神気竜王斬』!!」
今、叫んでるのはさっき言った数百年に一度生まれる勇者の才能を持った少女、ユウキだ。
ちなみに今叫んでたのは勇者が使えるS級モンスターの竜王すら一撃で葬る今のユウキが使える最大威力のスキルの名前。
スキルとか才能とかに関しては後で詳しく説明したいと思う。
今はあの物騒な斬撃を処理するのが先だ。
さすがにあれをまともに受けるのは勘弁してほしい。
多分めちゃくちゃ痛いし…
かといって避けたらまた城を直すことになる。
なので…
「『強制旅行』」
床と天井を破壊しながら俺に向かって突っ込んでくる白い悪魔に手を触れて空へと消えてもらった。
ドパンッ!
上空で大爆発でも起きたのかと思うような爆音が鳴り響く。
ユウキの神気竜王斬だ。
「……あのスキル城で使うの金輪際禁止でお願いします」
「嫌よ!私はあんたを殺しに来てるのよ!」
俺の切実な頼みはあっさりと却下された。
修理費の請求書送ったろか…
「そんなこと言わずに一緒にジェンガでもやって親睦深めようよ。俺嫌われてるから誰も相手してくれないんだよ」
「知らないわよ!そもそもなんで人間のあんたが魔王なんかやってんのよ!」
「……これが最善なんだよ」
「何よそれ!意味分かんない!」
まぁユウキの言うことも尤もだ。
俺は人間、魔族と争っている人間だ。
なのに魔族の領地で暮らしてあろうことか魔王なんてやってる。
これには色々と深い理由があるのだが…
「まぁとりあえずジェンガしようよ」
「あんたどんだけジェンガしたいのよ!」
「俺がなんで魔王やってるかなんてことよりジェンガの方が百倍興味深いだろ?」
「百倍どうでもいいわ!」
「それに一人でやるジェンガがどんだけ寂しいか知ってる?」
「知らないわよ!なんで魔王城まで来てあんたのどうでもいい友達いない不幸話聞かされなきゃなんないのよ!」
ユウキが冷たい。
2回目に魔王城に来たときは他の仲間と一緒に緊張した顔で俺から一瞬も目を離さないものだからちょっと照れちゃったくらいなのに…
今ではゴミを見るような目で俺のこと見てる…あれ?これはこれでありかも…
ちなみにユウキの仲間は初めは5人いたんだけど3回目に来た時に歓迎会開いたら4回目で1人まで減ってて5回目に来た時に「ユウキのことをよろしくね」って言ったら6回目で1人も居なくなった。
「どうせ週一くらいのペースで俺の事殺しに来てるんだからたまにはジェンガしようよ~。何なら毎日殺しに来ても良いからさぁ」
「私とあんたは友達か!というかあんた何でそんな余裕そうに私の相手できるのよ!私勇者よ!?最強の才能なのよ!?」
「…最強ねぇ」
この世界にはステータスというものが存在する。
まぁ自分の実力を念じるだけで見ることのできる便利な道具みたいなものだ。
ステータスには体力と魔力、あとは各種身体能力なんかが記載されている。
だが、人間に限っては、それも全人口の一割程度の人間に限って『才能』というものがステータスに記載されている者がいるのだ。
この才能というものを持っている人間は持っていない人間と比べると明らかに高い身体能力を有する。
その才能が珍しければ珍しいほどだ。
そして、才能を持っているものは『スキル』を使用することができる。
はじめは1種類、また時間なのか強さなのか、それは分からないが一定の条件を満たすと新たなスキルが使用できるようになる。
そしてそんな才能の中でも最強と言われているのがユウキが持っている『勇者』の才能だ。
生まれた時から全ての種族で最も優れた身体能力を持つ一般的な魔族のそれを凌ぎ、これまた全ての種族の中で最も優れた魔力量を誇る一般的な魔族のそれを凌ぐ。
そして、魔族だけが唯一闇属性の魔法を使えるように勇者だけがこの世界で光属性の魔法を使える。
まぁ確かに最強の才能だな。
「なによ…?」
「たしかに勇者の才能は強い。けどユウキはまだその才能を使いこなせてないだろ?」
そう、確かに勇者の才能は強い。
もしこれがゲームだとしたらゲームバランス悪すぎて作った奴のセンス疑うレベルに勇者は強い。
けど、ユウキはまだその域には達していない。
スキルだってまだ第5スキルまでしか解放できてないみたいだしな。
その程度じゃあせいぜいSS級のモンスターが限界だ。
うちの四天王にも勝てるか怪しいだろう。
だから俺は余裕なのだ。
「なによ……知ったような口きいちゃって…」
ムスッとした様子でそっぽを向くユウキ。
「…まぁユウキのことは結構知ってるつもりだよ…」
「気持ち悪っ」
「ひどくない!?」
辛辣である。
「まぁいいや、そろそろジェンガする?」
「しないわよ!今日こそは絶対殺してやるんだから!」
「それいつも言ってるよね」
ユウキがここに来るのはこれで12回目だ。
ユウキがここに来るようになったのは2ヵ月前からなので本当に週一ペースで殺しに来てるな。
ちなみに俺が魔王になったのも2ヵ月前だ。
魔王になってすぐに俺を殺したい奴は誰でも城に来れるようにしたわけだけど一番に来たのがユウキだったんだよな。
正直あと1年はあると思ってたから予想外だった。
まぁ勇者の才能に自信があったのか天狗になってたのでその鼻へし折ってやったわけだけど。
敵対してる種族のボス相手に「私の下僕になるなら命だけは助けてあげてもいいわよ!」なんて普通言わんだろ。
あほである。
「『神焔斬』!」
輝く斬撃を飛ばす勇者の第3スキル。
床がえぐれるからここで打つの本当にやめてくれないかな。
「『虚無旅行』」
次の瞬間、床の傷と神焔斬が消えた。
正しくは床の傷も神焔斬もなかったことにした。
「……………え?」
ユウキが剣を構えたまま目をぱちくりしている。
口も開きっぱなしだ。
「どしたの?そんな面白い顔して」
写真撮って家宝にしたいなこれ。
「……なによ……今のなによ!何したのよ!?」
叫ぶユウキ。
そういやここでこのスキル使うのは初めてだっけ…?
「…ジェンガが嫌ならオセロにする?」
まぁぶっちゃけ俺のスキルのことなんかどうでもいい。
ちなみに俺は一人ジェンガより一人オセロ派だ。
一人ジェンガは崩れた時に誰もリアクションとってくれないのが辛すぎる。
「やらないわよ!」
「じゃあリバーシ?」
「そういう問題じゃない!」
「ってかオセロとリバーシってどう違うんだ?」
「知らないわよ!」
「じゃあオセロとリバーシの違いについて話し合おう」
「あんたそれ楽しいの!?」
「そんなことして何が楽しいの?」
「私が聞いてんのよ!」
「よし、じゃあ将棋にしよう」
「今までの会話の流れでどうしてそこにたどり着いたの!?」
「黒と白どっちがいい?」
「やっぱりオセロやる気満々じゃない!」
「違うよ、リバーシだよ」
「どっちでもいいわ!というか私の話を聞きなさいよ!!」
「俺どっちかと言うと黒派なんだけど白でいい?」
「いや、だから私の――」
「やっぱり今日は俺が白にするよ」
「話を聞け!!!」
我慢の限界といった様子でユウキが思い切り剣を振る。
さすが勇者といえばいいのかたったそれだけで壁が吹っ飛んだ。
ちなみに一回ユウキを怒らせた時は凄くいい笑顔で城を瓦礫の山にされた。
そのあと俺が魔族の部下から白い目で見られたのは言うまでもない。
「もう一回城建て直す?」
「…ごめんなしゃい」
勘弁してほしい。
ただでさえ皆冷たいのにそんなことになったらほんとに下克上とかされかねないからね。
「それで……さっきのは一体何なのよ!」
「さっきの?」
「私の神焔斬を消したあんたのスキルよ!」
「あー、あれか。……知りたい?」
「……教えてくれないの?」
基本的にスキルについての詮索はマナー違反とされている。
それが敵対する相手ともなれば尚更だろう。
勢いで聞いたもののそのことに気が付いたのかユウキは少しバツが悪そうに俯き気味でそう聞いてくる。
まぁ普通に教えてあげてもいいんだけどどうせなら俺に付き合ってもらおう。
「じゃあオセロしよう」
「なんで!?」
「ユウキが勝ったら俺の才能もスキルも全部教える。その代わり俺が勝ったら……」
「勝ったら?」
「…リバーシでもする?」
「なんでよ!!」
このあと結局オセロ対決は俺が一面全部黒にして勝利した。
もう結構な付き合いになるけど初めて気づいた。
この子、脳筋すぎ……
もしかしたら続編書くかもしれないです!
そのときはまたよろしくお願いします!