第1話 7月7日 金曜日
「…………ん?」
俺の部屋か?周りを見渡してみる。
「問題無し…だな?」
時計は6時を表示してる。コンビニを出たのは4時ほど。
1時間も寝ていたのか。そこで俺はあることに気がついた。
ズボンがビッチョビチョということに。
「漏れちゃった…」
落ち着け!落ち着くんだ彩色!素数を数え…ちがう!我が愛する妹に全裸は見せられない!
妹が友達の家に行って約束した時間に帰ってくるまであと10分。
間に合うぞ!いそげー!
俺は全速力で階段を降りた。
ボイラーをONにして服を脱ぎ、洗濯機にブチ込む。
普段風呂に入る時は音楽をかけるのだが、今の俺にそんな余裕はない。
まだシャワーは冷たいがそんなのは気にしていられるか!
「づめ"だい"」
♪ シャワータイム♪
シャワーを浴び終え、タオルで体を拭いているとあることに気がつく。
「パンツ…俺の部屋だ」
時間は6時7分、残りは3分以内。
妹は時間をキッチリ守る主義で、約束に遅れてきたことはない。
我ながら良く育ったと思う、しかも可愛い。
ていうかそんな場合じゃねぇ!
時間がない!クロックア〇プするしかねぇ!
こんな姿をみ、見られたらお兄ちゃん死んじゃう!
無事部屋の前に辿り着いた俺氏。
「ふぅ…」
全裸の俺は背中に汗を多少かいたが、もう安心。
全裸を見られてしまうかもしれない焦りの手汗で、ドアノブはヌルヌルで上手く掴めない。
俺は大きく深呼吸をしてゆっくりとドアを開いた。
「間に合って良かったぁ…?」
「「お邪魔してまー………え? 」」
数秒の沈黙。
「「ぎゃぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁ」」
「おー彩くん、おかえり!」
「な、な、何でお前らが俺の部屋にいるんだよぉ!?」
俺は自分のエクスカリバーを隠すことなくベットに座っている2人を問い詰めた。
「いや妹ちゃんにたまたま会ってね?こんな時間に女の子1人じゃ危ないじゃん」
哄笑する詩音。
「いやお前ん家…隣じゃん」
オレがいつもの調子で幼馴染の詩音と喋っていると。
「あわわっおっ、お兄ちゃん!早くしまって!」
今再び気づいた。俺全裸やんけ。
慌ててエクスカリバーを手で隠し、2人に言った。
「とりあえず…出てって?」
最悪だ…妹に見られた…もうお嫁に行けないよ。
俺がショックを受けているなか、妹は部屋から勢い良く出ていった。
「お兄ちゃんの…変態!!」
ドアが閉まる音を背中に、お兄ちゃん吐血いたしました。
とりあえずパンツ履こうっと。
ここでストップ。
「いやお前も出てけよ」
「お兄ちゃんのwへんたーいww」
ぶち殺したろうかコイツ。
「まず1つ、何故俺の部屋にいる。2つ、俺の全裸をスマホで撮るな!!」
「だって驚かせようと思ったんだもーん」
コイツは昔からこうだ。人のプライバシーを考えたことが無い。
俺はニヤニヤしている詩音に向かって呆れた顔で言う。
「だってじゃない、あと写真を消せ」
「しょうがないなー、先にリビングに行ってるよー」
まじで話が噛み合わない 、幼稚園児かよ。
とことんついてないな今日は。
そして詩音が、ため息をついている俺の目の前を通り過ぎる際。
「エクスカリバー(笑)」
彩色は目の前が真っ暗になった。
3分後…
何気に広いリビング、2人はソファーに座ってテレビを見ていた。
「あっ!へんた…お兄ちゃん、今日しーちゃん、うちで食べていくって!親が出張なんだってー」
妹が嬉しそうに笑う。
そして詩音がまるで自分の家のごとく言った。
「今日は、オムライスが食べたいな、へんた…お兄ちゃん」
「…妹は?」
「私もオムライスー」
渋々と夕飯の準備に取り掛かる俺は2人言った。
「…今…変態って言おうとしなかった?」
「「い、イッテナイヨー?」」
泣いていいかな?メンタルが持ちそうにないや。
──こんなことは気にしていられないと、気持ちを切り替える俺。
俺はキッチンで、オムライスの材料を確認すると共に詩音にどのくらいの量を食べるのか聞いた。
「大盛りで」
「まだ聞いてもいねぇよ!」
ため息をつき、 俺は卵を冷蔵庫から取り出すと、手際よく料理を始めた。
虹白家は昔から親が仕事で、1年に1回しか帰ってこず、妹に寂しい思いをさせていた。
だから妹と共に支え合って生きてきた。
そこのアホ面の詩音は俺の幼馴染で、隣に住んでいる。
親があまり帰ってこないので、近所ということもあってよく助けてもらってる。
音宮さんには感謝しているが、妹と一緒にテレビを見て大笑いしている詩音の姿を見ていると、何とも言えない感じになってくる。
そんなことを考えながらフライパンを揺らしていると、詩音が。
「ジュース飲みたいんですけどー」
ほらね?感謝しろって無理な話でしょ?
「そのぐらい自分で取りに来いよ 」
ブツブツと言いながら立ち上がり、キッチンに歩いて来る詩音に、オレンジジュースを渡す。
「おっ!彩くんよく分かってんじゃーん!」
「まぁな、もうすぐ出来上がるからテーブル拭いといてくれ」
「 分かったよおにーちゃん」
お前の兄ではないと、ツッコミを入れてやりたいが疲れているオレにそんな余裕はない。
──いい感じに皿に盛り付け、オムライスとトマトケチャップをテーブルに運ぶ。
出されたオムライスを目の前に妹は嬉しそうに言った。
「今日も美味しそうだね!私お兄ちゃんのオムライスだーいすき!」
天使だな、マジエンジェル。
「僕は彩くんの料理なら何でも好きだよ」
「おっ、そうだな」
お前はただ食い意地が張ってるだけだろ。
「ひどいなー、素直な気持ちなのにー」
詩音がほっぺを膨らませる。
「なぁ、お前どうやって俺の心の声聞いてんの?超能力?」
俺がスプーンを手にほっぺを膨らませる。
「ふふっ、2人ともやめてよ」
妹のとびっきりの笑顔、これがあるから毎日生きていける。
俺が笑い返すと空気を読まない詩音が
「早く食べようよー」
まったくコイツは…。俺は2人とアイコンタクトをとると
「「「いただきます!」」」
妹は1口食べると飲み込んでから
「激うま!」
「それは良かった!」
「おい詩音、それは俺のセリフだ」
「でも美味しいよ?彩くん」
ホントにブレねぇな。
俺は黙々とテレビのニュースを見ながらオムライスを口に運ぶ。
するとオムライスに夢中だった詩音がスプーンを俺に向け
「バラエティーを見たいのですが、裁判長」
「だが断る」
アホの言うことは即却下だ。
駄々をこねる詩音を無視して俺はリモコンでテレビの音量を上げた。
『最近増えている連続失踪事件。原因はは未だに不明で、警察は調査を難航しています』
ここ数日増えている失踪事件。
近くも遠くもない地域で起きている。
妹はオムライスに夢中で聞こえてないようだが、目の前の詩音は食べるのを止め、スプーンを置いた。
「なんか知っているか?遠くない距離だ」
詩音はケチャップをつけた口を開いた
「おかわりもらえる?」
俺がポカーンと口を開けていると詩音が続けて
「え?聞こえなかった?おかわりもらえる?」
そうじゃねぇよ!どれだけ空気が読めねぇんだよ!
まぁいいや、良くねぇけど
呆れ顔で俺は詩音にデコピンして
「…デザートにプリンがある」
額をスリスリする詩音と食べ終わった妹がやったーと喜ぶ姿を見て最後の1口を口に運び俺はチャンネルをバラエティーに変えた。
時計は10時半を表示している。
妹は詩音とプリンを食べ終え、風呂に入り歯磨きをして既に自分の部屋で寝ている。
俺が洗い物をしていると、ソファに寝っ転がってスマホいじっている詩音が
「今日は泊まっていくから色々よろしくー」
「音宮さん飲み会か?今日金曜だろ?」
相変わらずエンジョイしてんなーと思いながら俺が言うと
「そんな感じー」
詩音はスマホに夢中で空返事。
俺がチラッと詩音を見ると、いきなり立ち上がり
「明日の朝ご飯ホットケーキがいいな!」
「分かった」
いつもこんな感じだ。音宮家は自由で、こっちも気を使わないで楽だが、少しは詩音に遠慮というものを知って欲しい…。
──俺が学校の課題やっている中、詩音がアニメに夢中になっていると、時はあっという間に過ぎもう12時…。
「俺は先に風呂に入ってくる。その間に下着とか取ってこいよ?俺ん家で入るんだろ?」
俺が立ち上がり関節の骨を鳴らしながら詩音に言うと
「了解でーす」
…即答 。アニメを邪魔しないでほしいようだ。
俺は今度こそパンツを忘れないように取りに行き風呂に入り入った。
ここまでは良かった。
「毎度言うが俺が風呂入っている時にお前も入ってくるな」
「寂しいんだもん」
疲れているときの俺には羞恥心というものがない。
だが、詩音には俺への羞恥心は常にないようだ。
体を洗う詩音は
「ないことはないかな」
そして体を洗い終えた詩音は風呂に入ってくる。
「せまい!せまい!そして当たり前のように心の声を読むな!」
「ぶーぶー、昔から一緒じゃないかー」
今日何回目かの呆れ顔で俺は
「もう俺ら中3だぞ」
そう言うと詩音は少し考えて
「…そう考えるとちょっと恥ずかしいね」
「…やめろ。俺まで恥ずかしくなってくる」
沈黙タイム
そういえば、今日はいろんなことがあったなぁ。
学校行ってコンビニ寄って、漏らして…。
…なんかおかしいぞ?何か忘れているようなー。
俺が悩んでいるなか思い出したように詩音が
「今日ねーすんごい美人見かけたんだー…アメリカのJDみたいな?」
へーアメリカのJDかー…ファッ!?
「彩くんにも見せてあげたかったよ」
思い…だした!そうだ謎の美人の師匠だ!
俺は立ち上がり確信した。
そうすると赤い顔の詩音が
「いや、そのぶら下げたものしまえよ」
っと立ち上がりながら言った。
「お前もな」
詩音は隠すことなく風呂場から出ていき
「なんだか知らないけど思い出せて良かったねー」
勘が良いのか心が読めるのか。
まぁ疲れてるからどうでもいいや。
俺は風呂場を出て重い体を引きずって自分の部屋に向かった。
「何度も言うが俺の布団からでていけ」
詩音が俺の布団で寝ているこの状況…。
もう、何度目だよ。
疲れている俺はそんな事を気にせず、詩音を引っ張り出し暖かい布団に入った。
今日の俺の記憶はここまで 。
次回も続きます
次回もたっぷりと
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