プロローグ
「さぁ少年、ボクトケイヤクシテ、ノウリョクシャニナッテヨ…」
俺は見慣れた部屋の中、どこかで見た光景が再現されていた。
口は笑ってるが、目はマジだ。
アニメのポスターやフィギアに囲まれた机とベッド、まるで自分の部屋の如くくつろいでいるベッドの上の超絶美女は、俺に手を差し出した。
もし俺がアニメの主人公だったら、手を握るだろう。
だが、現実はそんなに甘くなかった、緊張でTシャツはビッチャビャ。
トイレに行きたいけど、そんな雰囲気ではなかった。
うん。漏れそう
髪型はポニーテール。
大人っぽい色気がにじみ出てるが、胸は寂しい。服はポップな感じで、アメリカのJDみたいだ。いや、見たことないけどね?
美女は、とんでもないくらいの超ドヤ顔で、俺の顔を見つめている。
なにこの状況…(困惑)
五歳ぐらいの頃から人の見ている光景を自分も視ることができた。
このことを人に話しても信じてもらえず、中二病乙と言われ、相手にしてもらえなかった。
この体質から、ラーのつくホテルの前を通れば…まぁそういうこと。だから人より知識が豊富だった。
能力発動中、端から見れば急にフラフラしだすヤバイやつ。
発動のトリガーは分からず集中すれば、なんとか狙った相手が視えるぐらい。人限定な。
話を戻して、つい一時間程前、俺は着替えを盗視をしていた。
学校帰りにコンビニ寄って、コンビニ店員の視覚を共有していた。
コンビニのイスに座っていつもの暇潰し。
最近飽きてきて下着の色も当てられるぐらいだ。
人気アニメの鼻歌を歌っていたそんな時。
俺の平穏はここで終わった。
「見つけた!おい、少年。毎日そんなことして楽しいか?まぁ犯罪ではないだろうけど…まぁこんなところじゃなんだ。君の家まで連れていってくれ。拒否権はない。拒否した場合全神経をブチ抜いてやるぞ…」
いやぁあ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"
耳元でそう囁かれた俺は全速力でコンビニを出た。
誰だよ!あと誰だよ!そうじゃない、これ脅迫じゃん?
振り向いちゃいけないやつだコレ。
普段の蓄積されたエネルギーを振り絞れ!助けて詩音!ヘルプ!
一時間後……。
何で人の家にいるの!そしてくつろぐな。
あと美女じゃん!怖いよ…
「…ごめん何言ってるかワカンナイ」
「私もそう思う」
まず、何者よこの美女
「私は謎の美女、あなたの能力の師匠となる者よ!」
「心の声を聞かないでもらいたいのだが」
急に話しかけて来て、人の部屋に押し入って、語りだしたよこの人…能力のことも知ってるし。
「君の能力は視覚共有かな?いいね!彩色くん、君は自分の能力のまだ1%ぐらいしか発揮できていないのだよ」
なぜ俺の名前を知っているのか。
なぜ能力のことを知っているのか。
やばい。汗が尋常じゃない。
「ちょっ…待ってくれ!なぜ能力のことを知っている!何が目的だ!」
興奮してしまい、つい大声を出してしまった。部屋に声が響く。
そして、数秒の沈黙…。
急に黙るなよ。
「君に一週間のうち、何かが起こるだろう。必要になったら呼びたまえ」
美女は表情ひとつ変えずに笑いかける。
「…………は?」
話が急展開すぎだろ!そんなフラグあったぁ⁉どこに置いてきちゃったんだろ…。
美女は立ち上がり、フードをかぶり、指パッチンする。
「来週のこの時間帯、コンビニで待ってるよ!」
「待って!ホント待って!マジ待っt」
俺が言い終わる前に目の前がぐにゃりと曲がった。
全身の力が抜け、頭がズンと重くなりその場に崩れ落ちた。
………俺の記憶はここまで。
次回へ続く
7月中
次回はたっぷり書きます