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アレウス廻国記  作者: 高橋太郎
江下り
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その18

「割と付き合いやすい連中だぞ?」

 何故か苦々しい顔付きを浮かべ、「丘小人(ホビット)に比べれば圧倒的に」と、大きな溜息を付いた。

「おや、(くが)の友を知っているのかね?」

 ぎょろりと目を向け、幾分食い気味にレ’ンズはアレウスを見た。

「故郷では大手を振って歩いているからな」

 疲れ切った声でアレウスは答え、「迷宮都市にもかなり居たし、俺は見慣れている」と、首を横に振った。

「ソーンラントの人間とは大違いだな」

 どことなく満足そうにレ’ンズはしゅるしゅると息を漏らす。

「偶に、連中の気分が分かりそうになる時もあるが、丘小人だけは致し方ない」

 アレウスは諦観したかの様に空虚な笑いを浮かべた。

「そんなに凄いの?」

 アレウスの反応から、丘小人と関わって何か碌でもない被害を蒙ったのでは無いかとレイは予想した。

「落差が激しい」

 アレウスは一言の元に切って捨てた。

「……?」

 余りにも簡易な答え過ぎてレイは困惑した。

 二人の遣り取りにさして興味がないのか、レ’ンズは再び辺りの警戒に戻る。

「定住している丘小人は穏やかで、臆病で、優しくて、隣人として善良で牧歌的な暮らしを営む平和的な種族だ。ところが、稀に好奇心の塊で、お祭り好きな上、どうしようも無く陽気で無駄に前向きな冒険者気質の個体が生まれてくる。生まれついての忍びの者という特質も相俟って、本当に質が悪い輩でな、例えばそこに潜んでいる様な奴が良い例だ」

 アレウスがとある叢を指差すのと、何故かレ’ンズが同じ方向を見て身を硬直させるのはほぼ同時であった。

 何事かと思いながら、レイもその先を見る。

「あー、やっぱり気が付かれるかー」

 自分の後ろから聞こえてきた声に驚きながら、レイは急いで振り返った。

 しかし、そこには誰も居なかった。

「こっちだよー」

 再び聞こえてきた声も自分の後ろからであり、今一度振り返るが矢張り誰も居なかった。

「大体において、自分の生まれ故郷を飛び出す様な丘小人は面倒な奴らが多くてな」

 これ見よがしに大きな溜息を付くと、アレウスは無造作に腕を伸ばした。

 視線でそれを追うと、どうやったのか、一人の丘小人の首根っこを掴んでいた。

「あー、若様には捕まるかー」

 どこから見ても楽しそうな表情でその丘小人は首根っこ捕まれた猫の様な格好でぶらぶらと足を動かしていた。

「それにしても、どうしてこんな処に居るんだ、(ガット)

 アレウスは首を傾げながら、「俺の先回りをするにしても、ここは無いだろう」と、首を傾げた。

「でも、会えたよー?」

 きょとんとした不思議そうな表情を浮かべ、猫はアレウスの方を見てから小首を傾げる。

 アレウスがここに居る事が当然だと言わんばかりの態度である。

「……待て。お前、どうやって俺の動向を読んだ?」

 猫の言動や態度、表情から何らかの理由で自分の動向を読みきったと見極め、アレウスはその手段を尋ねた。

「んー、強いて云うなら……勘?」

「そうか、勘か。それで、どこに居たんだ、最近は?」

 大体予想通りの返事が返ってきたので、逆にどう言う行動を取ってその勘に至ったのかを知ろうと猶も追及する。

「自由都市をふらふらと廻っていたよー。詩歌って稼いだり、食事作って賄い貰ったり、盗賊の隠れ家(アジト)を見つけ出して上前はねたりしていたよー」

 さらりと爆弾発言を混ぜ込みながら、猫はけらけらと笑う。

「そうか、いつも通りか」

 別段猫の台詞に動じる事無く、アレウスは軽く流す。

 これでいつも通りの応対であるし、兄の手の者の中でもとびきりの腕利きである猫ならば、その程度の事は朝飯前だと分かり切っていた。逆を言えば、いつも通り過ぎて、何故ここに来たのかを絞り込む情報を見出せなかったのだが。

「そう、いつも通り~。いつも通り若様の情報が入ってきて、大体ここら辺に来るかなー、ってうろうろしていたら、若様が来た感じ」

「これだから丘小人は」

 アレウスは顔を手で覆いながら天を仰いだ。

 冒険指向である丘小人の思考はある種独特なものがあり、同族から変人奇人扱いされるのも宜なるかなとしか言い様が無かった。

 元々将来の臆病さからか、危険を察知すると息を潜めてどこに隠れたか他者からは見つけ出せなくなる、そのような種族である。その勘の良さが他の方面にも働き、他の同族とは違って思い切りの良い行動を取り出すと他の人類種では想定も付かない様な行動を平然と取る様になる。大体において、その様な行動は過程は他者から理解出来ないが、結論がこれ以上も無く正しいものである事から、丘小人を運が良い生き物と位置付け、深く考え込まない事にする者が多い。

 アレウスも生まれた土地柄、やって来た仕事柄、丘小人が然う言う者と理解はしていたが、それでも何故そうなるのか考える事を諦めていなかった。

 諦めていないからこそ、毎回同じ様な結論に陥り、何者かに対して罵りの言葉を吐き捨てるしか無くなるのだが、それでも止めないのはある意味でアレウスらしさと言えよう。

「まあ、とりあえずは良い。鶏蛇は見かけなかったか?」

「嫌だなあ、若様。そんな怖いモノが居たら逃げるに決まっているじゃ無いかー」

 矢張りけらけら笑いながら然う言ってから、「若様と違って、鶏蛇の垂れ流す毒にあたし達は引っ掛かりやすいんだからさー」と、行き成り真顔になった。

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