表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アレウス廻国記  作者: 高橋太郎
再会
104/171

その20

「旦那の予想では、“覇者”はタンブーロまでは来ない、と?」

 フリントにとっては重要な情報であったので直截な表現で確認を取る。

「調略は仕掛けてくると思うぞ? ファーロスの後背を突きたいだろうからな。はい、そうですね、良いお友達になりたいですね、位の返事を返していれば問題あるまい。当然、ファーロスの側にも同じ返事をするべきだが」

 平然とした顔で、アレウスは蝙蝠外交を推奨する。

「ソーンラントではなく?」

 蝙蝠外交の相手が“覇者”とファーロスという事に疑問を覚え、アスティアはアレウスに聞き返した。

 蝙蝠外交自体はどうせ八方美人な態度を昔から取っているタンブーロでは珍しい話ではない。今の発言における最大の問題は、その相手がソーンラントではなかったことだ、とアスティアは考えた。

「確定したわけではないが……ソーンラントの王位継承権を有する王族で生き残っている奴が一人でも居れば話は別、何だがな」

 アレウスは意味深に笑い、「少なくとも、ラヒルに居た連中は良くてヴォーガの方に連行、悪くてその場で斬首、最悪の選択を選んだのならば……ダッハールに轢き殺されているのではないのかね?」と、目だけ真顔の儘アスティアを見た。

「……見逃してくれないかなあ」

 アレウスの読み通りだとすれば、ソーンラントは事実上滅んでいると見て良い。ソーンラントを崩壊させたい“覇者”にしても、最悪の場合は再興させるしかないファーロス一門にしてもソーンラント王族の生き残りを草の根を分けてでも探し出すであろう。妾腹とは言え、実家がそれなりの家門であるアスティアにとってその話は他人事ではなかった。

「見逃してくれないだろうねえ。幸い、東部はファーロスが陣取っているから、そちらに居る旧い王族の誰かを祭り上げるのではないかな、と推測している」

 アスティアの実家がどこか知っているアレウスとしては、彼女が危惧する状況になる可能性が高いと正直に伝えた。

「……気が付かないで貰えないかなあ」

 深々と溜息を付きながら、アスティアは力なく呟いた。

「調べれば気が付くだろうから、調べる様な状況にならない事を祈っている事だな」

 ファーロスが欲しいのは王族の血を引いている良血の子女であり、それらが全て絶滅でもしていない限り妾腹の者では決してない。

 逆に、“覇者”がそれを調べる段になっては、良血だろうが傍流であろうが禍根を断つために全てを調べることであろう。

 故に、アレウスは暗にファーロスが“覇者”を撥ね除ける戦況こそがアスティアの希望にそぐう状況であると推測して見せたのだ。

「ファーロスの頑張りに期待するしかないかあ」

 そのアレウスの意図を即座に理解したアスティアは深々と溜息を付きながら、それが適わぬことであろうと考えていた。

 ソーンラントの内情を知っているからこそ、ファーロスの勝ち目は薄いと踏んだのだ。

「余程の事が無い限り、直ぐに東部の版図を侵蝕される事はあるまいよ。帝国が動かぬ限り、“覇者”殿も大動員を掛けられぬ」

 アスティアの危惧を否定し、アレウスは隣のレイを見る。「帝国に関しては俺より詳しかろう」

「皇帝がどこ迄国を掌握したかによると思うよ」

 レイは端的にそうとだけ言った。

 流石にそれだけでは帝国に疎い三人は何を意味しているのか分からずに顔を見合わせた。

「レイ、お前がソーンラントの事をよく知らない様に、ここら辺の者達は帝国の事をよく分かっておらぬのだ」

 レイの言いたいことを一人だけ理解したアレウスが即座に三人が困惑している理由を端的に説明してみる。

「そうなの? だったら、今の皇帝と先の太師の争い当たりから説明しないと駄目?」

「あー、そうか。確かにそうなるか」

 ぴしゃりと額を右手で叩いてから、「何でリチャード・マルケズが帝国を出奔したのかを説明しないと、“覇者”の動きも説明しきれないのか」と、アレウスは呻いた。

「帝国が“覇者”に何かしたので?」

 南の国々については余り知らないため、フリントは二人が何の会話をしているのか理解できなかった。

 だから、話の脈絡からそうではないかと思った事を尋ねてみた。

「いや、何も。ただ、帝国の内乱が色々と面倒な事を飛び火させただけだ」

 どう説明したものか悩みながらも、アレウスはフリントの指摘が間違っていることだけ先ずは伝える。

「今の皇帝って幼い時分に即位していてね、彼の父親を後援していた人が太師になって後見していた訳。意外な事に、皇帝と太師自体はそこまで仲悪くなかったんだよね。只、二人の下に付いている連中同士は仲悪くてね。それでも破局には向かわなかったんだけど、皇帝が何時から親政を執るかという話し合いが平行線に終わった時、上の二人は兎も角、下の連中が遂に暴発しちゃってね。国を二つに割る内乱になった訳さ」

 悩むアレウスを後目に、レイは簡単に説明を始めた。

「えっと、普通はどう考えても、皇帝の方に大義があるのよね? 太師の側に付いていた人達は皇帝の位でも太師に奪い取らせるつもりだったの?」

 一応政治絡みの知識もあるアスティアにしてもレイが何を言っているのか分からなかった。

 レイの説明が簡単すぎたせいと言うよりも、レイの説明した通りの状況ならば、宮廷内の政争で終わるだけの話であり、血で血を争う様な内乱に達するほどのことではないと想定したのだ。

「皇帝に付いた人達も帝位簒奪を狙っていると考えたみたいでね。他の誰かを擁立する気かと有力な皇族を調べたらしいんだけど、誰にもその様子がなくて太師自体が帝位にちっとも興味が無かったものだから誤報かと油断した処に襲撃を掛けられて大打撃。その所為で泥沼の内戦に突入したんだけれど……当の太師が何故かその時宮廷で皇帝と最後の折衝に入っていてね。報告を受けて直ぐに事の責任を取って位を返上したの」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ