こえ
「あ、それこえか こえだ こえだよね」
こえのきんし こえはふわふわするから ういちゃうから 禁止
ふわー あくび
あくびはういてく あわあわういてく あくびはこえじゃない そうらしいから あくびはまちで大流行 まちはおくれておくれてみえなくなった
こえ こえよ ひびけひびけよ 街よ 消えよ うたは うたはいずこ
きえた街 だれしもがしらない。だから探そうにも探せない。
こえを集める機械があるらしい。噂はすぐさま広まった。みんなこえがほしいのだ。どこ どこにあるの? だれしもが発言。でも機械はあらわれなかった。だれしもがわすれていった。でもわすれなかったものもいた。こえ。こえをあつめたいから。絶対に。
だれしもが振り返った。うばわれたのだ。さらわれたのだ。そのこえに。その場所はそのこえのため。こえは響く。空間は震える。人々は想う。ああなんて素晴らしきこえ。いつまでも、いつまでもこえが響きますように。
「おそらのほしってなんで輝いているの?」
「それはね、わたしたちにおもいださせるからよ。あのときのこえを」
こえ こえはどこ? せかいはかれた。あっというまに。びっくりした。まさかだった。わたしだけではない、とおもう。あんなことおきるんだ。みんなわらっていた。
祭りは盛況。こえの祭り。絶えず栄えるこえのため。祈らなければならない。探さなければならない。こえのため。
疑いはもたずさえぎりもなく行事は消化されていった。すべては仮想のパーツで組み立てられていたがそれに参加する者もまた仮想。万事問題なし。
この時期になるとこえが降る。とてもうすくあたたかなこえが。わたしはそれをやさしくけとめる。こわれないように。かわらないように。たしかに、たしかにきく。かみしめながら。ああ、きょうもこえをきいた。それをたしかめるとわたしはみちへともどっていく。
「おとの大安売り」
もうこういう時代になったのか。予想していたこととはいえ素直におどろく、そして落胆。もうそう長生きできないな。実感してしまう。もうだめなのだ。本当のことだ。これ以上は生きてはいけない。そういう時代なのだ。
波が揺れるとき こえはしぶきとして せかいとはなす
「昔のこえほどうまいもんはない」
そういう先人が数多くいるのでためしにくったことがある。まずかった。もうくえたもんではない。だがそれをうまいとはなす先人のこえほどうまいもんはないのだ。数多のこえをくったわたしがいうのだ。間違いない。
「あなたは見誤りの達人ね」
「風にこえをのせてはこんだらおもしろくない?」
「こえにまかせたのよ わたしのすべてをね」
「いたるところにおいてきたわ そしてふれたときにおもいだすのね あのときのこえを」
次はほしのふるまち