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空を歩く彼女の蜃気楼  作者: かたち
7/11

こえ

「あ、それこえか こえだ こえだよね」

 こえのきんし こえはふわふわするから ういちゃうから 禁止


 ふわー あくび

 あくびはういてく あわあわういてく あくびはこえじゃない そうらしいから あくびはまちで大流行 まちはおくれておくれてみえなくなった


 こえ こえよ ひびけひびけよ 街よ 消えよ うたは うたはいずこ


 きえた街 だれしもがしらない。だから探そうにも探せない。


 こえを集める機械があるらしい。噂はすぐさま広まった。みんなこえがほしいのだ。どこ どこにあるの? だれしもが発言。でも機械はあらわれなかった。だれしもがわすれていった。でもわすれなかったものもいた。こえ。こえをあつめたいから。絶対に。


 だれしもが振り返った。うばわれたのだ。さらわれたのだ。そのこえに。その場所はそのこえのため。こえは響く。空間は震える。人々は想う。ああなんて素晴らしきこえ。いつまでも、いつまでもこえが響きますように。


「おそらのほしってなんで輝いているの?」

「それはね、わたしたちにおもいださせるからよ。あのときのこえを」


 こえ こえはどこ? せかいはかれた。あっというまに。びっくりした。まさかだった。わたしだけではない、とおもう。あんなことおきるんだ。みんなわらっていた。


 祭りは盛況。こえの祭り。絶えず栄えるこえのため。祈らなければならない。探さなければならない。こえのため。


 疑いはもたずさえぎりもなく行事は消化されていった。すべては仮想のパーツで組み立てられていたがそれに参加する者もまた仮想。万事問題なし。


 この時期になるとこえが降る。とてもうすくあたたかなこえが。わたしはそれをやさしくけとめる。こわれないように。かわらないように。たしかに、たしかにきく。かみしめながら。ああ、きょうもこえをきいた。それをたしかめるとわたしはみちへともどっていく。


「おとの大安売り」

もうこういう時代になったのか。予想していたこととはいえ素直におどろく、そして落胆。もうそう長生きできないな。実感してしまう。もうだめなのだ。本当のことだ。これ以上は生きてはいけない。そういう時代なのだ。


 波が揺れるとき こえはしぶきとして せかいとはなす


「昔のこえほどうまいもんはない」

 そういう先人が数多くいるのでためしにくったことがある。まずかった。もうくえたもんではない。だがそれをうまいとはなす先人のこえほどうまいもんはないのだ。数多のこえをくったわたしがいうのだ。間違いない。


「あなたは見誤りの達人ね」


「風にこえをのせてはこんだらおもしろくない?」


「こえにまかせたのよ わたしのすべてをね」


「いたるところにおいてきたわ そしてふれたときにおもいだすのね あのときのこえを」





次はほしのふるまち

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