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空を歩く彼女の蜃気楼  作者: かたち
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少女が降ってきた



そらから少女が降ってきた。とてもはやく降ってきた。あまりにもはやく見分けもつかないがそれは確かに少女である。というのもそういう案件が日常的に発生しているからだ。もはやだれもふしぎに思わない。てくてくてく。日常から、抜けださない。だけど自分は初めての経験だったので凄まじく忘れてしまった。ただたちどまりみるだけであった。

「おちてきたぞー」

 落下予測地点にいる人は一斉に走りだした。まわりはしらない。逃げる人たちもとくになんてことない。ぶちゃっ。少女は落ちきった。耐えきれなかった。少女回収スタッフはすぐに作業にとりかかる。特に何事もない。僕は少女をじっとみて、そしてそらをみた。そらは青くくもはない。少女はどうしてそらから落ちてくるのだろう? だれしもしらなかった。


 界隈では、自殺だといわれている。少女の自殺。原因不明。手段方法でさえ不可解。でもそれは確からしい。いまはだれもがそれをしらないだけで将来的には理屈の通った話として世間に浸透しているらしい。

 それにしてもなぜそらからなのだろう。屋上からではない。そらからおちてくるのだ。どうして?


「どうして?」

「なんでわたしにきくの?」

「少女だから」

「わたし女子高生よ」

「女子高生も少女だよ」

「違うわ」

「そらからふってくるのはセーラ服を着た少女だよ」

「しらないわ」

「そこをなんとか」

「どうでもいいの、そんなこと」

「ほんのすこしでもいいんだ」

「そのこにききなさいよ」

「あーまってくれよ」


少女は一日に一人は降ってくる。おおいときは三人も。降ってくる場所は都市、ビルの並ぶ街、ビルとビルの間、そこになぜか空いているおおきな空間。様々なひとが巡り巡る交差点。その中央付近に少女は降ってくる。

 少女。生きているのか、死んでいるのか。少女には身元がない。だが血はある。からだはなきさけぶ。派手に。かおはない。ただ寝ている。

 

 はれときどき少女

 少女の頻度はどんどんあがっていく。一日に十人。いやそれ以上。少女は無言で降ってくる。いやじゃないの。やめてっていわないの。いえないの? 

 日に日に少女は増えていく。少女はどんどんはこばれる。これはなにかのサイン? でもどうしたら。どうしようもない。そらも地上もそのあいだも。どうしようもない。ただしることしか。そらから地上まで落ちてほうかいするまで。忘れず感じることしか。僕にはできない。


 少女ときどきはれ

 街には少女しかいない。少女しかみない。少女タワー。ほうかいした少女のうえにほうかいせずすんだ少女がある。どんどん降ってくる。そらからそらから。どんどんどんどんつまれていく。重なりゆく。混じり合う。溶けてゆく。少女で溢れていく。もう降れない。もう限界だ。それでも降る。少女は降る。いつまでもどこまでも。少女しか存在しなくなっても。消えてしまっても。少女は降る。そらから降る。いつまでもいつまでも。



次はこえ

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