灰色の子
あのまちには灰色の子がいる。灰色の子はみち、いたるところにいる。でも彼らはいない。だれしもが彼らをみているが彼らにはあえない。ただたたずんでいるだけだ。
「チョークを使いきるとなにかおきるかな?」
「なにもおこらないんじゃない」
「そんなわけないじゃない。だってチョークってこんなにもまほうなんだよ」
「魔法?」
「チョークってふしぎをえがけるんだよ。だからまほうじゃん」
「はあ」
「だからわたしつかうよ チョーク。えがきまくるわ」
「そうチョークを無駄にするもんじゃない」
「うるさいわね そんなことをいうひまがあったら手伝いなさい」
「きいたもんじゃない」
灰色の子にはいろいろな顔がある。わらったりないたりおこったりなんでもなかったり。とはいってもそれがわたしたちのおもっているようなそれではない。彼らのそれはただの形骸化された無機質なものでそれ以上を人々はみない。だからこそ彼らがどんな顔をしていようがお構いなしに人々は通り過ぎる。たとえ彼らの顔が“叫び“のそれだったとしても。
「もうチョーク全部つかちゃって…」
「だってだってだって…」
「だってじゃありません」
「そんなこといったって…」
「そんなこといったってじゃありません」
「むむむ…」
「なに?」
「だってチョークはまほうだもん。ふしぎだもん」
「そうだね魔法だね。不思議だね」
「わかってないよ! まほうはすごいんだよ。ふしぎはふしぎなんだよ。わかってないよ」
「ああ、まってまって。そとにいっちゃいけないよ」
「ばかおたんこなす!」
チョークはふしぎ。どこにでもかけるしとてもあいまい。なにかいてるかわかんない。でもとてもいい感じ。そんなチョークだからもしかしたら。よくわからないものにであえそう。
チョークでえがく。なにかをえがく。さらさらえがく。すべやかにえがく。
ところでチョークというものはえがいているときにさらさらこながおちる。そのこなはなにかになりえなかったふしぎの残滓。こなはチョークほどじゃないけど。ふしぎのまほうをもっていて。もしじめんにおちるまえに。それをうけとめられたのなら。もしかしたら。なにかとであえるかも。
チョークの粉で床は隠れている。掃除が面倒だ。
灰色の子はこなと出会った。ほんのすこしわずかなこな。そんなものだけどてのひらでやさしくうけとめた。その瞬間灰色の子は顔を一瞬柔らかくし人々の前から姿を消した。
次はみちにねこ