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ネカフェのような薄暗い場所ならともかく、さすがに白昼堂々襲ってはこないだろう。もういい。ゲーセンにでも行こう。もしかしたら寝ぼけていたのかもしれない。最近ゆっくりと睡眠をとる時間がなかった。他の人には見えてなかったらしいし、幻覚でも見たのだろう。見間違いだ、見間違い。
それにしても、今にも雨が降り出しそうだ。晶は大丈夫だろうか。もちろん彼女もバカじゃないのですぐに帰ってくるだろう。晶に言われた。『そのまま帰って』と。もしかしたら何か考えがあって、優太をアパートに留めたかったのかもしれない。……ゲーセンはやめよう。そのまま帰るしかない。そうだ、もしかしたら、世界各国の霊保隊員が、今頃何とかしてくれてるかもしれない。
期待と無念さを残しつつアパートに帰るも、誰もいない。ちょっと寂しい、というよりも、恐ろしさが増してしまった。
普通、五千万円が目の前にあるのだとしたら、誰もが下見くらいには来るだろう。しかし誰一人として、そういう者はいなかった。世界のトップレベルでもここには来たくないという意味だろうか。
五千万だぞ、五千万。えーと、そういえば五千万円って一体、何千円だっけ。
晶が帰ってくるまで、外で待機してよう。駐輪場に単車がないのは、晶がいないという意味でいいだろうし。
しばらく待って、雨が降り出した。やむを得ない。帰ろう、部屋に。
「……!」
階段を登った途端、彼は絶句した。二○一号室が半開きなのだ。一旦立ち止まったものの、意を決して扉を押し閉める。
このアパートに、一人きり。どうしたらいい、どうしたら。
彼は少しテンパりながら鍵を開ける。幸い、部屋には何も異常はないようだ。
「そうだよ。テンパるって、麻雀のテンパイから来てるんだよ」
などと意味不明な事を言いながらエアコンのスイッチを入れる。蒸し暑い。これだから日本の夏は。
それにしても晶は、一体どこまで行ったのだろうか。戻ってくる気配はない。だんだん不安になってきた。小説や漫画などだったら、全員とまではいかないが、生存するキャラクターは存在するだろう。しかし、晶の親父さんや、りっくんまで死んでいる。普通嫌なキャラから死亡フラグが立つはずなのに、いい人から死んでいるような気がする。もちろん自分がいい人だとは思わないが。
静かなアパートに突如、謎の音が響いた。ゴトッと、何かを落としたような鈍い音だ。それに対して優太は盛大に肩を震わせる。
「な、なんっ……?」
もちろん、部屋の方角からしたら、りっくん側の方。ただ彼ももう、この世にいない。二階の中央部屋にも届くような音だ。
「あっ、もしかしたら」
霊保の誰かが、もう既に除霊や浄化を行っているかもしれない。そうだ、部屋が開いていた。勝手に部屋が開くなんて事は……あるんだったよな、あの部屋に限っては。




