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「父の霊視日記によると……」
晶の声で現実に戻された。
「福岡県の川社にある一軒家で育った人が、今回の黒幕らしいです。父と母、そして息子さんの三人暮らしだったらしいのですが、父親が転勤先のこの地東京で、とある事情で死刑になったらしいのですよ。周りの目を気にして、でしょうか。元々病弱だった母親は金銭的にも余裕が無くなり、生きていけなくなり引っ越してすぐの二○一号室で自殺したらしいのです。父親と同じく、首を吊って。そして息子さんなんですけど……どうやら、生きているみたいですよ」
「生きてる……!? 父親は、どうして死刑に?」
「さぁ? 具体的な事は何一つ書かれてありません。ただ、昔とある人にこっ酷くイジメられてたらしいですね。頭からゴミ箱を被せられたり。それが息子さんを虐待する動機になったらしいですよ。息子さんの口癖は……『ぼくをひとりにしないで』『なでなでして』『あそぼう!』だったらしいのですが」
「それって……」
「はい。あの人形に、そっくりですよね」
エアコンの風が更に冷たくなった気がした。
息子さんは生きている。そして、人形は存在する。という事は、生霊という事になるのだろう。聞いた事がある。霊保の隊員は、生霊が見えない。逆に、一般人には黒いモヤとして見えるのだという。
さすがは晶の父だ。特級さえ出来ない霊視が出来ていたなんて。それともこれは人の特性なのだろうか。
そんな時。ふと彼は疑問に思った。あの人形は、一体どうして、どういう目的であの場所に存在しているのだろうか。何のメリットがあるのだろうか。
そして、二人の死はどう影響してくるのだろう。なぜ、晶の父は生首だけになり死んでいたのか。
「長期戦になるかもしれないですね。ちょっと、精神統一してきます。優太さんは、そのまま帰ってて下さい。司令官、ごちそうさまでした」
単車のキーを片手に、礼儀正しくペコリと頭を下げて店から出ていった。複雑な顔をして電話を切った司令官は、賞金首クラスの悪魔がやってきた事をちなっちゃんから初めて聞いたらしい。いくら公休だからといえ、連絡が遅れすぎている。副司令官の監督行届のためか、そのまま軽く挨拶して帰っていく。報告の遅れは、そのまま隊員の死に繋がるというので再度指導しに行くのだろう。
……一人になってしまった。ちなっちゃんと美香は、故郷の福岡に。そして晶は高速道路でも行くつもりだろう。白バイ隊員が鬼の形相で迫ってくるのも、それはそれで怖いだろうに。
さて、どうしたものか。
長期休暇を取っているので、ヒマだからといえ仕事に行こうとすると、会社側は調子に乗って明日も出るよう言ってくるに決まっている。だからといってこのまま帰ると、それはそれでちょっと怖い。何てったって、あの全十部屋のアパートに優太だけなのだから。
「ネカフェにでも行くか」




