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二人を見送った後で思う。これ、もしかしてめっちゃくちゃヤバい状況じゃないのか、と。
二○一号室には現在誰もいない。というか、晶と優太以外がいない。彼女だけじゃ絶対に敵わない敵だと言う事を、彼女自身も認めている。では、どうするか。
「晶、今から、散歩にでも行かないか?」
「散歩……ですか」
「あぁ。酒でも飲もうぜ。楽しくよ」
「生憎、私は下戸です。飲めません」
「ジュースでもいいって。なんなら、歌舞伎町にでも行くか? ホストくらいなら奢ってやるよ」
「ホスト……」
「あぁ。お前はもっと、色恋に執着しろよな。誰でもいいから、ちょっとは他人に興味を持った方がいいと思うぞ」
言った後で気が付いた。そういえば、りっくんもホストで、それが源氏名だったという事に。
「私は、ホストに興味はありません。ただ……りっくんは別でした。どこか、一緒にいて安心出来たので」
非常に寂しそうに瞳を落としている。……もしかして晶は、実はりっくんの事が気になっていたのかもしれない。
「……行ってみるか? りっくんさんが働いていた店に」
自分から誘ったくせに、世田谷区から新宿まで、晶の単車に頼る事になった。大型の赤い単車は明らかに彼女の体格とは不釣り合い。青焼けしたタイヤは、スピード狂だという事を物語っている。トレッド面の油分が冷えて固まっている。タイヤに負荷がかかる走行をした際、タイヤ内部の油が表面に出てきて変色したもの。かなりの角度つけて曲がったようだ。
「青焼け……。中性洗剤で洗わなきゃですね。油で滑ってしまいます」
この年齢でどんだけ知ってるんだ、バイクの事。彼女はレーサーにでもなるつもりらしい。
街中で、比較的安全運転してくれている。とはいっても、すでに泣きそうな顔になっている優太がいた。荷重移動が凄まじい。
「荷物になっててください、優太さん。上手く曲がれないのです」
とはいっても、まるでおもちゃのように大型の単車を動かしている。赤信号で停車している細い車の隙間をクネクネと。これで曲がれていないらしい。
突然人が飛び出してきて、優太の尻が浮いた。実際には浮いていないのだが。
「たまにいるんですよね、こういう人」
「よ、よく止まれたな、お前……」
「当たり前じゃないですか。もしかしたら、『人が飛び出してくるかもしれない』、『急にドアが開くかもしれない』。『かもしれない運転』は常識ですよ」
飛び出してきた人物は、身の危険に晒されていた事に気付き、涙目で会釈し即座に走り去っていった。信号前で止まり、しばらく待つ。青信号になり、再び加速していく晶の単車。優太はこんな小娘がこんなテクを身につけているのが気にくわないような顔をしている。
「なるほど。そしたら、『後ろの奴から急に胸を揉まれるかもしれない』って事もあり得るわけか」




