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「どうしたんですか」
優太は扉を閉めて、仲間の元へと戻る。
「く、くく、首! な、なななな、生首だよ、それ……!」
「えぇ!?」
りっくんに至っては腰が抜けたらしく、お尻が地面から離れない。
恐る恐る、半回転させてみる。電気が切れている二階の通路で、月明かりに照らされたそれは、今まで見た事もないものだった。いや、見た事はあるのだが形状が違う。
液状化した眼球と優太の目が合ってしまう。
ぶくぶくに膨れ上がった顔は、水分を存分に吸っているようだった。腐っていた。その顔はごく最近消息を絶った晶の父のようだった。まさか、こんな形で見つかるとは。
腐敗臭が登ってきて、優太の鼻を刺激する。お世話になった人の頭を、事もあろうかその場に落としてしまった。その時、二階通路のコンクリートの床に熟れ過ぎたトマトのように肉片が飛び散り、フラフラと無言で近寄ってくる晶の足元を汚していた。いくら何でもこれは、グロすぎる。
優太は口元に手をやり、リバースするのを懸命に阻止している。だが水を吸っているのだ。もし優太の予感が当たっていて、貯水タンクに沈んでいたのなら、その水をがぶがぶ飲んだ事になる。どおりで、妙な味がしたものだ。
自分の部屋に駆け込み、ユニットバスの便器にぶちまける。晶の声にならない叫び声を聞きながら。
これは人為的なものだろうか。本当に心霊現象なのだろうか。推理漫画などであれば、登場人物がトリックなどを考え出すだろう。しかし生憎、こちらは名探偵ごっこをやっている場合ではない。心配して来てくれたのか、晶以外の全員が優太の部屋にいた。
その反面、今度は晶が引きこもってしまった。何者かに引き裂かれたような生首を大事そうに抱え、一階に戻っている。名残惜しい気持ちは分かるが、これはもう、死体損壊罪に問われてもおかしくはない。
警察に連絡を入れようとした矢先、魔女子さんから「待った」が入る。
「どう説明するつもりなの、この状況」
「ど、どうって……」
「行方不明になっていた晶ちゃんのお父様が、首だけになって二○一号室の入ってすぐの場所にいた。しかもそれは腐乱化して。ついさっき私も確認したのだけれど、お風呂の中にあったものは、あれは間違いなく髪の毛だったわ。私も直感したの。あれが蛇口から出てくるという事は、まず間違いなくお父様の頭は貯水タンクの中にあったのよ。だけど見てみたら、結局は何もなかった。私たちの誰かを犯人に仕立て上げるのは簡単かもしれない。だけど、証拠がどこにもないもの。私の部屋にこっそり入り、髪の毛をごっそり持っていく……。もしこれが人間の犯行だとするのならば、犯人はどういう動機があったのかしらね? 不思議で不思議で、思わず聞いてみたくなっちゃうわ。つまりどういう事なのかというと……これは警察がどうこう出来る問題じゃないのよ」
「そ、そそ、そうだぞ、優太くん。こ、こういう不可思議な現象は、日霊保に連絡しないといけないって小学校で習っただろう? そ、それはそうと、えぇと、日霊保は……あっ、オレたちだ」
「だけど、頭から下は、一体どこに行っちゃったんだろう?」
みんなが美香を見る。たしかにそうだ。頭だけが見つかるなんて不自然すぎる。




