表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒の部屋  作者: なつきまる。
黒の部屋
18/93

14

「ほ、本当にいいんですか?」



 と言ったのは当事者ではなく優太。美香はキョトンとみんなの顔に視線を向けている。


 これでもう大丈夫だ。助かったんだ。


 安堵の色を隠せない。ただ、一つだけ不安な点が……。



「あの、浄化の料金は……」


「いや、金など結構。お布施という形で、我々には日々入ってきている。ただ不思議な事に、いつも同じ筆跡の人からだが……。な、晶」



 びくっ、と晶の肩が震えた。横目で、吹けもしない口笛を吹いている。滝のような汗をかいているのは気のせいだろうか。



「あの、失礼ですが金額的には……?」


「そうだな、多い時でポストに入りきれない時があったくらいか。手紙だけでありがたいものを」



 なるほど。そういう事か、と優太はすぐにピンときた。


 晶の家は、優太が幼い頃はものすごく貧しかった。それが何故か、今ではお金が集まるようになっていた。


 親父さんの人柄的に、たしかに金銭の要求はしないだろう。だけどそれでは生活は貧困を極めるばかりだ。だからか。だから晶は、匿名でポストに諭吉さんを入れ続けたのだろう。足長おじさんのように。ていうかお布施って高くても一万円くらいだ。ポストに入りきれないくらいの……大根だったのなら話は分かるが。


 優太の推測が間違っていなければ、



「晶、ちょっとここに、自分の名前書いてみてくれないか?」


「は? ご逝去ください」



 確定。やはり手紙なども晶が書いていたらしい。


 素直じゃない。さすがA型だ。素直じゃなさすぎて損している。属性で言えばツンデレだと思われる。



「こら、晶! お前友達に向ってなんという言葉を……」


「だったらこう言い変えます。死ね」



 悪化してしまった。



「悪いね、優太くん。晶には言い聞かせておくから。ただその代わり、大船に乗ったつもりでいてくれ。必ず、浄化してみせるよ」



 親父さんの力強い言葉に、優太は心の底から感謝した。


 親父さんの言いつけはたった一つ。連絡があるまでは、絶対に連絡しない事。つまり、優太たちから親父さんには絶対に連絡を入れてはいけないらしい。それは実の娘である晶も例外ではない。何かあったら母に伝えるよう、言われている。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ