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日曜日。曇天が広がりつつある中、例のファミレスでうとうとし始めた美香。
「よく眠れなかっただろ?」
「うん。なんか、寝てたのに、起きてたような気がする。疲れてるんだね、きっと」
なんだ、自分でも気付いてるのか、と思った瞬間、違うなと感じた優太。憑かれてる、の間違いではないだろうか。
困った。本当に気付いてないらしい。モーニングを注文したばかりだが、カプセルホテルなどで休ませた方が良いのではないだろうか。少なくとも優太だったら今頃、あの物件に住むバイトなど放り出して逃げ出している。夜逃げ同然でも、少なくともあの場所から離れた方がマシだ。早く、何とかして美香に伝えないといけない。あの、おぞましい光景を見せたら美香もきっと分かってくれるはずだ。
「何か、妙な事は起こったか?」
「妙な、事?」
んん? と身を乗り出して聞いてくる。
「んー、別に?」
定点カメラに映っていた顔は、優太も晶も直視出来なかった。まったくの別人だったようにも思える。
何か考え事をしている晶を放置して、二人で話を進めた。
「そうか。そしたら、昨日お前が寝てる時の映像を見せるぞ。マジで怖いから、最初に伝えておく」
「え、何……」
優太は、美香が取り外して持ってきてくれたカメラを片手に、再生ボタンに指をやる。と同時に、変な映像が流れだしてきた。
「撮れてないじゃん。何やってるの」
砂嵐だ。確かに……昨日は確かに、録画ボタンを押した。だけど、全く撮れてない。
「だめ! 見せないで!」
店中に響き渡るような絶叫。晶の顔が青ざめている。店員さんや、数少ないお客さんの視線が、優太たちに釘付けになった。優太のカメラをぶん取り、伏せている。
「ウチの父が来るまで、待っててくれませんか……? 今の私じゃ、手も足も出ない」