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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

十字架を背負った悪魔@短編小説

作者: 林原こうた

少年は悪魔の子と呼ばれていた。

あの日の夜、両親を殺した彼を他の教団とともに保護をした。

平凡そうな一軒家の中は赤色が散々しており、電灯のついた部屋に生きていたのは彼一人だった。

目を開けているが、彼の意識は飛んでいるだろう。


「悪魔が現れたのか‥?」と教団の一人が呟く。


「もし悪魔がいるとしたら、彼の心の中かもしれない…」



その時確かに悪魔は存在していた。

意識が飛んでいるように見える彼の身体の中で悪魔は戦っているのかもしれない。


ボロボロに破けた青のポロシャツを赤黒色に染め上げ、彼自身の手には凶器と思われる刃物が刃ごと握られている。


教会のほとんどの人間が少年に話をかけようとはしない。

だからと言って、悪魔を宿したかも知れない彼を見過ごすわけにはいかないというのが教会側の決定だった。


保護されて何日か後に少年の意識が戻った。



とりわけ、周りには誰も近づこうとしないが教会の外に出されずに何日か経つ。



私こと鏡十次はこの教会のエクソシストだ。

別にオバケが見えるわけではない。

意味的に言うと悪魔祓いということにはなるのだが。


確かに先人に幾つかの呪術的な魔法を教わり、先人が亡くなってからは私一人でお祓いや封印をしてきた。

だが、これはあくまで形的な話である。

私がするお祓いは人の話を聞き、先人の知恵と称した薬を渡すぐらいなモノだ。

大体、ここらにいる人間が悪魔と言っているのは風邪やおたふく、悪くてインフルエンザのようなもんだ。


何度か本当の悪魔にも出会したことがあるが、教会の人間の考える悪魔と私たちが見ている悪魔は別の生き物だ。


悪魔とは人の心だと考えている。

そのことは途中で止まるだろうこんな小説を読まなくても、人生という大きな渦並みに揉まれれば分かることだ。

それでも分からなければ独り言のように私的哲学を語るので是非聴いてくれww


そんなことはどうでも良い!

今現代に死刑などでこんな小さい子供が殺されることなんて許していいのか?

私みたいな仕事をしている人間がそんなことを語るのは場違いというのは百も承知。

そのままではいずれこの子は悪魔の子と見なされ、無残な死を遂げるだろう。

もし本当に少年が悪魔だったとしても、私には彼を救う術があるはず…なんだ。



目が覚めた後、親が事故で死んだと聞かされも泣もしない不思議な子に思われていた。

名前は心と書いて「しん」と呼ぶらしい。

しかし、夜な夜な彼は牢屋の中で誰にもバレないように一人で泣いているのを知っている。

10歳くらいの子供が親を亡くして平気なはずもない。

悲しみや苦しみに悶え、それでも人前では弱さを見せようとしない。


誰もこんなことには気づこうともしない。

はたして神父や他の者は何のためにいるのだろうか。

自分の身分や立場、股の事情や金にしか興味がないのだろう。





****************





殺すには若すぎる。

神父たちは包み隠さずこんな議題を話しては決まって同じ人間が私の頭を撫でるのであった。

「お前は悪魔なんかじゃない。」

エクソシストを名乗るこの男はキョウシと呼ばれている。


他の大人たちが口を挟むもキョウシに肩を押され私は庭へと出た。


「俺って悪魔なの?」

ふと、大人たちの言葉から疑問に思い袖を引っ張りながらキョウシに質問した。


「いるとしたら、お前の心だ。」

飛躍した話だが、こんな哲学じみた話をするのがキョウシの性格だった。


「心ってみえないじゃん!キョウシには見えるの?」

少し迷った顔を見せたが庭の真ん中にあるリンゴの木に触れ、目を合わさずに答える


「心や感情はみようと思って見えるものじゃない。大切な人に何かを伝える時に見えてしまうものだ。」


わからないよ。というとキョウシは何故か嬉しそうに笑い、また早いなと付け加え、私の髪をぐちゃぐちゃに揉み回した。


ここに来てもぅ一ヶ月ほど経った時だった。

この年で親が死んだと聞かされた私は途方にくれる以前に悲しみに耐えることができずにいた。


牢屋にいた私は夜に一人で誰にもバレることなく泣いていた。

いつの日にか泣き疲れて寝たかと思っていたら、キョウシの部屋のソファーで横になっていたのを良く覚えている。


目が覚めると、コーヒーでも飲むか?と僕に話かけてくれた。

免疫がないと耐えれないほど部屋はタバコの臭いで充満しており、物は子供の目でも分かるぐらいに散らかっていた。


この部屋の臭いに慣れてからも、キョウシと一緒に何日も過ごすことになった。





また、何日もしないうちにキョウシは私に1人の女の子を紹介した。

「歳が同じで、明日から教会の高学年向けな勉強を一緒に受けることになるだろう。名前はハルな。まぁ、よろしくね。」


「あの、キョウシ?よろしくね。といっても後ろに隠れてよくみえません。」


そうだよな。といい、大丈夫だ。目は怖くても中身は良い奴だ。とこそこそ言いながら、キョウシのお尻の両サイドを掴み離れようとしない女の子を無理矢理私の前へと押し込めた。


肌は白く痩せているが、同じ歳とは思えない黒くボサボサの長い髪のせいで彼女は鬱々とした性格が更に補強されていた。


夏なのに厚そうな黒の修道服を着ている。

口周りはお菓子で汚い。

見て分かるどおり人見知りで不衛生な奴だ。

私の前に出る際にあたって、既に泣きそうな顔を浮かべて、果たして自分がどうするべきか答えは出なかった。


それでも、震える掌に汗をかき、半べそで震えながら小さく友達になろうと言っているのが分かった。


風が木陰の下に吹いたと思ったら、キョウシが私たちを抱え込んでいた。

キョウシが瞳を閉じたまま、「仲良く頼むぞ。」と言うのが聞こえる。


不思議とハルが笑っている。

キョウシも軽く微笑み一層私たちを強く抱く。




キョウシの心が見える。

ハルの心もなんとなく見えている気がする。



そんな彼女との出会い。

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