春季キャンプ
小島 浩介 <コジマ コウスケ>
身長:183㎝
体重:80㎏
体型:細身筋肉質
性格:負けず嫌い
趣味:サイクリング、ゲーム
備考:新人投手としては頭一つ抜きん出ている。Max155㎞の直球と伝家の宝刀スライダーが武器。SFFとカーブも持ち球。剛紀のライバル。
.
初春で寒さが残る三月。
そんな中、比較的温暖な気候の地域で、約1ヶ月のキャンプは行われる。
ウォーミングアップ、基礎連、全体練習、個人練習といったメニューをこなしていき、球春到来に向けて調整をしていく時期。
自分の調整方法を知るベテランは、自分のペースで黙々と練習をこなしていく。
対して剛紀たち若手は、アピールをするため、ただがむしゃらに一瞬一球に全力を注ぐ。
自分以外の若手が頑張れば頑張るほど、更に自分は頑張らなければならない。
だから、基盤がしっかりしていない若手は、毎年キャンプの中盤で疲れで失速する。
だが、人一倍……いや、二倍も下半身の強い剛紀は、キャンプ二週目になっても失速することはなかった。
むしろ、プロに慣れをも見せ始めている様にも見えた。
そんな、二週目のある日のこと。
「樫琶!」
特守を終えて一息いれていたところを、剛紀は打撃コーチに呼ばれた。
「はい!」
大きく返事を返して駆け寄る剛紀に、打撃コーチは微笑を浮かべながら指示を出した。
「次のフリーバッティング、お前も打たせてやる。しっかりアピールしてこい!」
今キャンプ三度目のフリーバッティングで、遂に剛紀にチャンスが回ってきたのだった。
ドラ1超大型ルーキーが、遂にそのベールを脱ぐ――。
連日、球場に押し掛けていた報道陣は、その様な噂を聞きつけ、バッティングゲージの周りを取り囲んだ。
そのカメラの被写体は、ルーキーの剛紀。
プロでの初打撃であったため、剛紀は内心張り裂けそうな緊張をしていた。
しかし、それを表情に出さないところ、一流の影が見え隠れしている。
そして、剛紀は打撃投手に一礼し、バッターボックスに入った。
目慣らしのバントを終えて、一度深呼吸をする。
「お願いします!」
気合いを入れて、静かに構える。
甲子園で見せた、「絵になる」威圧感たっぷりの構え。
それだけで、大量のシャッターが切られる。
打撃投手がセットポジションから始動する。
周りの選手や首脳陣、報道陣は、静かに剛紀だけを見ていた。
剛紀は、打席に集中する。
そして、打撃投手の指先から白球が放たれた。
その、記念すべき一球目だった。
スカァン!
大量のシャッター音の中、思い切り振り抜かれた剛紀のバットからは、快音と共に白球が空高く舞い上がった。
「おお!」
球場に居た全員が上を見上げ口を開けていた。
弾道はそれほど高くないが、打球は失速することなく飛距離を伸ばす。
まさか――
その場にいた全員がそう思った時、剛紀はニヤリと口元を緩めた。
ドスンッ
打球は左中間スタンドの芝に突き刺さった。
途端にどよめき始める球場内。
高卒ルーキーが、初スイングで、初ホームラン。
しかも、打球にプロの力強さがあった。
どよめきの止まないグラウンド。
首脳陣は満足そうに口元を緩ませ、グラウンドの選手たちは新人離れした打撃に驚いていた。
そんな中、二球目が投じられる。
カァン!
ジャストミートした打球は目の覚めるような弾丸ライナーで、バックスクリーンに突き刺さった。
次第にざわめくグラウンドの中で、剛紀は確実にボールを捉えていく。
その後ろでは、監督の若辺が不敵に笑っていた。