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フーガック生物図鑑  作者: 遠藤迄太郎


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第八話

 (よーしこれでお前の自業自得オレは悪ぐ無ぇ)

〈ゴブリン大侵攻〉から十ニ日が経った。



 リケイ、バカもといノボル、マジもといリュウがそろそろ〈シリコニア〉へと戻ろうかと考えていた所に〈オークリン〉、〈ハイエルフ〉、〈ヘプバァン〉計十数名が武装して隊を組み、〈スラング・サザン〉の外である〈アルケマリア〉の集落へとやってきた。


 ミィサが案内をしている。


 ノボルが家屋を出て対応に入る。

『どうした?!なんかあったのか?!』


 ノボルの問いに〈ハイエルフ〉のウェン・ディ・モセスが応えた。

『マジ様が呪いを受け日が経っているとお聞きしました。ご無事なのでしょうか?』



ノボル(あ。よく見たら全員女じゃん。)






 状況としては、【シリコニア付近に〈地獄の蓋〉が開き〈ゴブリン大侵攻〉が起きた際、リケイ、ノボル、〈マジ様〉が足止めに成功、そこに〈聖女〉と〈竜〉が加わり殲滅に成功したが、先行した三名の内の一人である〈マジ様〉は呪いを受けて倒れ、今もまだ苦しんでいる。

 シリコニアの住人が受けるはずだった呪いを身代わりとなり一身に受け、今もまだ苦しんでいる】、といった物語になっているらしい。



 つまり、彼女達は心配して危険を顧みずここまでやってきた(押しかけてきた)〈マジ様〉のファンである。



ノボル『あぁ、(どうしよう本人呼ぶか?)今の所問題無い、命は守られた。(そうだ!〈聖女〉のせいにしちまおう!)〈聖女グランマリア三世〉と〈聖女タチアナ〉が薬を作りマジに与えた。

 もう大丈夫だ。』


 もう大丈夫、の言葉と共に歓声が上がった。涙する者もいる。



ノボル(うわまじおっかねぇどうしよう笑っとこ)



 テンション上がりまくってるウェン・ディが言った。

『バカ様!皆様ご帰還の護衛を私達にお任せ頂けませんでしょうか!

 男達は崖崩れの片付け、〈エルフ〉達は調理に清掃にとずっと働いております!

 ですが、戦う事しか能の無い我々女戦士団は役に立てておりません!どうか皆様をお迎えに上がる役目をお与え頂けませんでしょうか!』



ノボル『あぁ、そうだね(どうしようもう丸投げしちまうか?)いつ戻るか聞いてみるよ。』



 そこへリュウが顔を出した。

『あれ?皆さんどうしたの?』



 同時に熱狂的な歓声が上がる。



リュウ『え?なに?』


ノボル「おぅ、(よーしこれでお前の自業自得オレは悪ぐ無ぇ)なんかお前が皆の代わりに呪い受けてくれたって事になってるらしい。」



ウェン・ディ『〈神獣〉の皆様!私達は戦士団でありながら!呪われてはならぬ!呪いを広げてはならぬと!お二人の〈聖女〉様とお二人の〈守護獣〉様に戦う事を止められ、ただ見ているだけでありました!


 戦士団でありながら守られるのみでありました!


 せめて〈シリコニア〉へのご帰還の護衛をお任せ頂きたい!』



ノボル(あの四人そんな事してたんだ。おかげで後処理楽なもんだわ。)


リュウ『あぁ助かるよ、一緒に帰ろう。荷物がちょっとあるんだけど大丈夫?』



ウェン・ディ『もちろんです!』



ノボル(おお、さすが!超自然に一緒に帰ろうって言いやがった!モテ慣れしてんなぁ丸投げしよ)



 リケイは家屋内にて全て察したが放置した。





 程なくリケイ達は戦士団の先導で〈アルケマリア〉の集落を出発。リュウは女性達に必要以上に構われながら歩いていた。



 リケイとかなり耳の良いノボルには、遠巻きに〈アルケマリア〉達が戦っている音が聞こえていた。


リケイ(こちらに気付かれぬ距離での護衛だな。まだ多少は残っていたのだろうか。)


ノボル「リケイさん、これまだ殲滅戦続いてんじゃねぇのか?」





 リケイは知っていた。ノボルが眠らされている最中、マリとヨシミの会話が聞こえていたからだ。

 内容は歴史書に出てくる〈アルビオンの悲劇〉と、〈メイキュウセッカクガイの生態〉という書物について。






マリ「歴史書に依ると〈アルビオンの悲劇〉の時に現れた〈迷宮クローン〉の総数は合計数万規模。その数で島中を蹂躙。その内数百が〈スラング・サザン〉の内側に現れてる。

 今回は内側で穴から約千、溺死体が約千、散って現れたのが数十、総数としては二千と少し。」


ヨシミ「今回〈スラング・サザン〉の外側では数百しか現れていないそうよ。合計としては三千も行ってないわね。

 現れたのが〈テオミィア〉や〈エバンミィア〉、そして〈ワイバァン〉。蛇型が大半だったから少し大変だったそうだけど被害は無かったそうよ。

 〈アルビオンの悲劇〉の時代から生き残っている〈アルケマリア〉の長老三人がすぐに動いて調べてくれたわ。あまりにも少ないわね。まだ続くのかしら。」


マリ「まだ確定じゃないけど、〈センカ〉ってヒトが書いた〈メイキュウセッカクガイの生態〉。

 これには〈センカ〉の仮説も書いてあるんだよ。」





 〈メイキュウセッカクガイの生態〉より抜粋。


 【〈メイキュウセッカクガイ〉が〈バケモノ〉を作り出す際、〈トランスフォスオウマ〉を必要としている可能性がある。


 〈トランスフォスオウマ〉は、一部の〈バケモノ〉が持っていたり、他にも虫が持っていたり、〈白粉地層〉から出土されたりするものであるが、〈メイキュウセッカクガイ〉の〈子育て部屋の肉袋〉から大量に出てくる場合がある。


 試しに〈子育て部屋の肉袋〉から、他の器官を傷付ける事無く〈トランスフォスオウマ〉のみを回収した場合、産まれてくるはずの〈バケモノ〉が産まれなくなり、百日程でまた産まれる様になった。

 

 確認するとこの〈肉袋〉はまた〈トランスフォスオウマ〉を保持していた。


 自然治癒するまで〈バケモノ〉を作れないのか?


 〈トランスフォスオウマ〉はここで作られているのか?


 〈血管〉で補給されてきただけか?


 虫共は決して近づけていない為、虫によるものではない。


 そこでこの〈部屋〉ごと殺そうと試みたがやはり、他の〈部屋〉や〈通路〉の〈メイキュウセッカクガイ〉を傷付けた際と同じ様に、毒が撒かれ、リスクが増した。】



マリ「〈子育て部屋の肉袋〉は〈卵宮〉、〈トランスフォスオウマ〉は〈マセキ〉の事で間違い無いと思う。」


ヨシミ「つまり、〈迷宮クローン〉を作る為には生物の生体と〈マセキ〉が必要?

 そして今回は〈マセキ〉が足りなかった?」


マリ「仮説だけど。状況証拠としては、数トンクラス以上の〈マセキ〉が〈聖女の島〉に保管されてるんだよ。石灰に埋没させてある。

 〈ハウルの一団〉と〈ハクロ号の一団〉、〈グランマリア一世〉と〈グランマリア二世〉、そしてその〈聖女守護獣〉が集めては〈聖女の島〉に運んだんだって。」


ヨシミ「〈メイキュウセッカクガイ〉に使わせない為に、自然下にあるものを少しでも減らす為に集めたって事かしら。」


マリ「まだわからないよ。仮説だよ。

 〈グランマリア二世〉は百歳になったら教えてやるとかってはぐらかすし。」





 すでに十日程前の出来事である。


リケイ(もうすでにほとんどが処理されているらしい。問題無いだろう。)



 リケイは手を出さず放置した。






 程なく一行は〈スラング・サザン〉へと入り、〈アルビオン・シリコニア〉へと到着。



 台地の〈旧ダンジョン〉部分の穴を登り、壁の内側へと出た。



 住民が集まっていた。



 彼等は道を開ける。



 あるものは「おかえりなさい」と言った。



 あるものは「ありがとう」と言った。



 あるものは「英雄の帰還だ」と叫んだ。



 帰還した三人を、二人の〈聖女〉と二頭の〈聖女守護獣〉が迎える。



 住民達は、物語の完結を見たかのように歓声をあげた。









 リケイ達が旅立って程なく。


 リケイ達三人が掘っていた自分達の墓穴。


 そこに三人の看病をしていた二人が訪れていた。



ミィサ『私達〈アルケマリア〉の固有名詞は、身体的特徴、もたらしてきた結果等を元に呼ばれる、もしくは昔の〈ハイエルフ〉の様に、言葉を理解した後に自分で名乗る。そういう事が多いのです。

 つまり、過去です。』


ニィア『そうなの、ニャ〜?

 ミィサは〈ミィ〉(恩恵)と〈サァ〉(善意)なの、ニャ〜。』


ミィサ『はい。ですが最近考え、理解しました。

 〈エルフ〉や〈オークリン〉、最近の〈ハイエルフ〉もそうなのですが、親が子にどうなってほしいのか、もしくは、自分がどうなりたいのか。

 つまり未来を固有名詞とする事が多いのです。』


ニィア『ニャ〜?』


ミィサ『私は、過去を知り、未来を願いたい。』


 そこには〈アルケマリア〉のミィサと〈ヘプバァン〉のニィアによってある樹木の種子が植えられた。


 その樹体は特に優れた木材として生活を支え、その果実は多くの旅人を飢えから救い、ある地が砂漠と化しても最後まで立ち続け、その樹液でまた多くの旅人を救った。



 そしてまた、新たな発展を助けた。



 樹木の名は〈トライ・カミラ〉。



 〈トライ〉は特別な樹木。



 〈カミラ〉は発展。



ミィサ『かの方々はかの方々の力だけで多くを救った。力無き我々は皆で皆を支えねばならない。

 それぞれ皆がこの樹木の様にあらなくてはならない。』



ニィア『それは知ってるの、ニャ〜。しゃかいせいっていうの、ニャ〜。〈グランマリア二世〉が言ってたの、ニャ〜。』



ミィサ『ほう、これにもすでに名があるのですか。興味深い。』





 未来、この地はこの樹木を象徴に、〈マァツ・カミラ〉、〈発展の地〉の名で呼ばれる様になる。


 第一章 日常とククリ島とゴブリン大侵攻編 完


 第二章 転生と原初の島と旅立ち編に続く。

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