そして、二度目のプロローグ。
とある王国の城内は騒然としていた。
広い通路を塞いでいたメイド部隊は、
クルクルと回りながら猛スピードで突進してくる純白のドレスを身に纏った銀髪の小柄な弾丸に弾け飛ばされる。
「ディルノード王子!抜かれました…貴方しかいません、お願いします!!」
その叫びはその通路の先の扉を守る兵士達の先で構える青年に届く。
「や、やめなさい!ははは…話し合おう!
な!?オレだってお兄ちゃんだぞ!」
その弾丸は王子を守護する兵士達をも吹き飛ばして鉄拳を振りかぶる…。
「兄様が…お兄ちゃんな訳があるかあぁぁぁ~~っ!!」
いや、兄様はお兄ちゃんである訳なハズなのだが…
この場ではそれぞれの言葉の持つ意味が違っていた。
顔面への巧みなフェイントを織り交ぜた後に築き上げられた拳は、
この国の第二王子であるディルノート=クルセイトの腹に突き刺さり…
勢いで、くの字に前のめった顔面への追撃の鉄拳はその後頭部を利用して奥の扉を突き破った。
それなりの魔法や装備で守られている為、
首から上が弾け飛ぶ様なことは無かったが…それなりにはそれなりの大惨事を起こしてみせたのであった。
唐突な蝶番との離別を余儀なくされた可哀想な扉の奥は、
王の部屋であり…その作りは豪華な装飾などは存在せず、王の部屋と言うにはその言葉とは程遠い。
この立派な城の主人が専有するにしては何とも質素な小部屋であって
必要最小限な物だけで構成されている為、
民の為に治世を全うする良き王であろうとする人柄が存分に現れていた。
「ま、待ちなさい!ははは…話し合おう!
な!?ワシはお父さんじゃぞ!!」
「父様が…お兄ちゃんな訳があるかあぁぁぁ~~~っ!!!」
勿論その通りである。
そして…良き王の部屋は鮮血に彩られた。




