そして、最初のエピローグ。
閉店後、人払いされた店内。
まだ一人テーブルに残されたギリアは、
嘘はついていないが全てを話す事のできなかった自分に対しての罪悪感に苛まれながらもう一杯やっていた。
「良い子達じゃないか…。私は本当に彼らの事が気に入ったよ…。
引き合わせてくれて感謝したい気分さ。
彼等の為なら頑張れそうな気がするよ…。」
全ての客が帰った後の薄暗くなった店内でグラスを傾ける男の周辺を複数の小さな光が舞っている。
この世界での遠距離での通信手段の一つだが、
かなり高位の精霊と高い魔法技術や多くの魔力を必要とする為に利用出来る者は限られる。
各地のギルドを経由する為、高ランクの冒険者にしか許されていないのだ。
「…珍しく感傷的になってる様じゃないですか。
私に対しては小煩い貴方にしては珍しい。
彼、浅いけど広くいろんな事を知ってて、よく考える!
以前会った時は時間切れになってしまいましてね…。
また逢いたかったんですよ~、
待ってますからね。ゆっくり旅を楽しんで来てください。」
「少し鍛えてからになるだろうが…出来るだけ急いでみるよ。
…連れの子達も刺激的だが素敵な仲間の様だ。
あの子もきっと好きになってくれると思うよ。
私も最後の旅だからね、せいぜい楽しむよ!ははは!
そう言えば、王様になったストリードは元気かい?」
すぐに返事が無いので耳を澄ませると、通話先から騒ぎ声が聞こえ始めた。
『バシャン!ガタン!』
『おぉ前、まぁたぁぁぁ!
姫様に何を吹き込んだぁぁぁ!!』
「あ!ギリアさん…
ちょっとイタズラがバレちゃいました!
ブチギレたメイド長に追われてるんで、また!!」
宙を舞っていた光はふっと消え、暗闇と静寂が筋肉男を飲み込んだ。
「ちょおおおぉぉ~~~ぃ!!」
そして、次の冒険が始まる。




