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そして、俺は〇〇になりました。  作者: Foolish Material
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そして、回りだす夜に。その2

「ルキリ=スターニーは今はここから離しておる。」


 乾杯を酌み交わした後に出てくるのはその話題だ。

 二人が最も落ち着ける場所だったキャラバンの生き残り…。

 タダ酒タダ飯よりも優先事項である。

 事情を知る若老人は敢えて、

 天井を見上げながら答えを選んだ。


「会わせんとは言わんが…

 何があったのかは聞いたじゃろ?

 お主らの関係がどの様であったかは想像しかできんが…

 あの娘は一度死んだ。

 ワシが『禁呪』まで使ってこの世に留めておる…

 多分、お主らの事を認識出来ても別人じゃぞ?」


 もちろんリアとシュミカはそれでも良かった。

 告げられた言葉は重くのし掛かるが…

 覚悟の時間は用意できる。


「ん…それで、

 僕の一族の話は…とうちゃは…あんちゃは?

 百年前の儀式はどうなったの?」


 リアにとっては拠り所であったキャラバン、

 その生き残りに心が揺らぐが…

 

 幼少期に百年の時を越えて以来、

 お伽噺の存在となっていたシュミカにとっての最優先はそちらであった。


「まず言っておくが、

 ワシは当事者では無い。

 長く生きた結果知っておると言うだけじゃ。」


 少しだけ考えをまとめて納得したシュミカは静かに頷く。


「…よかろ。

 ワシの師匠はこの大陸にある、

 とある山の賢者での…。

 修行の最中に何度かその魔力の動きを感知しておった…。」



 ~数百年前。


 大きな熊はふと何かを感じ取った様に空を見上げた。


「あぁ…もう百年経ったんだね…。

 今の魔力の振動は感じ取れたかい?

 クーロ。」


 木の実の選別に忙しいリスの獣人は師匠の言葉の意味がわからなかった。


「いえ…リル様、

 今、何か起きたのでしょうか?」 


 最近気まぐれで取った弟子が目を丸くして訪ねる様子を愛おしく見る熊。


「そうだね、

 さっき西の大陸でずぅっと昔から繰り返されてる儀式が発動したんだよ。

 アレは百年ごとにあるから…

 年を数えながら鍛錬して、

 感じられる様になってごらん?」


 モフモフの尻尾の毛を逆立てるクーロは驚愕した。


「ひゃ、百年ですか⁉︎」


 楽しそうに木の実を選んでいた弟子に、

 新たな木の実を追加しながら熊さんは告げる。


「そうだね…

 あと二、三回もすれば自然に感じ取れる様になるよ。

 ぼく達みたいなのは…

 何かイベントでも無いとおかしくなっちゃうからね。

 一つの区切りにするといいよ。」


 ひょんな事から精霊に『不老』の呪いをかけられたクーロは、

 森の妖精であり大賢者でもある熊…

 『リル』に弟子入りして修行を始めたばかりであった。

 

 何度かの百年期を越えて立派になったクーロは、

 見識を広げる為その森から旅立つ。


 やがてレイヴンという国に腰を据え、

 帝国となったその国の筆頭魔道士となってから暫く…

 精霊が招き入れる『客人』や、

 新たに台頭して来た『魔王協会』について情報を集めながら…

 魔道の研究に勤しんでいる。



 いつもの様に一人、

 無事に百年を越した祝いをしていたが…

 …その時の魔力の振動には微妙なノイズがあった。

 その時は気にも留めなかったが、

 次の百年目。


 魔道探究の旅の中であった。


(…そろそろアレが来る頃じゃの。

 今回は師匠と迎える事は出来んか…。

 その内上等な酒でも持って挨拶に行かんとな。) 

 

 そう思いながら小さな酒場で一人、

 祝い酒を用意して待っていたが…

 魔力の振動は無かった。


「旅人さん?

 ちょっと混んでるから同席良いかしら?」


 見た目は少女ではあるが、

 覚えのある魔力の波動であった。


 その黒と銀と…

 若草色の混じり合った髪を見て数百年を生きる獣人は震え上がる。

 『魔人』との遭遇であった。


「あぁ!

 名の有る高位の魔道士さんですか⁉︎

 私は未熟で悟られちゃうんですけど…

 今は穏やかに暮らしてる民族ですよ。」


 その魔人が言うには、

 永劫の時の呪縛から解き放たれて、

 今は西の大陸の果ての小さな村で静かに暮らしているとの事。


 彼女は人探しの旅であるとの事で、

 その一族の名が『エーリデウルス』である事も知る。


 一度時間を作ってその村に訪ねはようとしたが、

 ちょうどレイヴン帝国に魔王協会が攻め入って来た為に、

 深く調べるにはどうしようも無く…


 戦争が終結した頃にはすっかり忘れていた。

 

 ルキリの件でカディスの頼みもあり、

 ついでに師匠への挨拶も視野に入れながらの遠征への参加であった。 



 ~場は戻る。


「そんな所じゃの。

 ワシが知っておる限りじゃと…その名、

 お主の血脈が多く残っておるのは西の大陸の最西端の小さな村じゃ。

 でもお主がおると言うことはチラホラ残ってはおるんじゃろうかの?」


 シュミカはしばらく考え込む。


「ん…

 カナ=ミグと言う名前を知ってる?」


「たしか…飛ばされとった魔人じゃな。」


「ん。

 それがやっつけられたとして…

 どうして僕の一族の名前を魔人が使うの?」


 ソレを聞いたクーロは、

 肩を上げて答える。


「知らんよ。

 別の魔人の力でも借りて倒したんじゃないかの?

 ただの想像じゃが…。」


 その疑問に答えを出したのは既に気持ち良く酔っているリアだった。


「なぁによぉ~。

 そんなの実際に行って聞けば良いじゃないぃ。

 答えはそこにあるんでしょう?


 もう目的は無くなったんだしぃ…。


 シュミカだって、

 今までみたいに当てもなく情報を探す必要もないでしょお?」


 単純明快。

 何でも考えてしまう頭脳派達の迷宮は、

 あっさりと突破された。

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