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そして、俺は〇〇になりました。  作者: Foolish Material
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そして、思い出は黒い絨毯の下に…。その3

「うーん、

 出来ればあの村で馬車と水を手に入れたかったんだが…

 寄り道なんてしてて大丈夫かなぁ?」


 先を急ぎたいギリアを説得…というかワガママで同行させている先は、

 先程の会議では向かう必要は無いと決まった山岳地帯である。


「ん…ごめんね、とおちゃ…。

 でも、精霊さんが…どうしても行くべきだって。」


「まぁ…本当に何かの依頼があったならぁ、

 誰かはいるでしょぉ?

 街もそんなに遠くはないしぃ…。」


「…私はその街には行かないんだけどね…。

 まだ多少の余裕があると言っても、

 流石にティルスガルに立ち寄る程の時間はないんだよ…。」


 現在向かう方向はほぼ同じ。

 普通に進むならば平地の街道ルートを使う。

 わざわざ山岳地帯を通るルートは余程の理由が無ければ使う必要などは無い。

 そこを越えれば、

 ギリアとはひと時のお別れである。


「最悪、食べ物は狩りでもすれば良いけど…

 水はねぇ…。」


「目的地の途中には何も無いんですか?」


 懐から取り出した地図を見てギリアは悩む。


「無くはないが…

 目指すゲートまでだと遠回りだね。

 私もこの辺りは詳しく無いから…

 出来れば最短ルートで行きたいんだよね。」


「ん…どの道あの村での補給は不可能だった…。

 わざわざ精霊さんが導くんだから…

 こっちが正解…不満?」


 パタパタと飛びながら優雅に同行するリアと、

 そのリアに浮かせて貰って運ばれているシュミカとエイナ。


 その恩恵から切り離され、

 トボトボと歩いているアサヒとギリアは不満ではあった。


「おいリア…、

 あまり無駄な魔力の消費は抑えろよ!」


「抑えるわよぉ!

 無駄な魔力はねぇ。

 …可愛いこの子達を運ぶ事を無駄だとでも言うのかしらぁ?

 人間ども!」


 どうやらこの後に訪れる別れの寂しさを紛らわすためか、

 二人の男への人間差別が激しくなっている。


「すまないね、アサヒ君…。

 戻ったら必ず埋め合わせはするよ…。」


「大丈夫、これで普段通りですから…。」


 顔を見合わせた二人はフッと笑って思う。


(あの店の子達、良かったなぁ…)と。




 その頃、その店の歌姫であるノーイラ=タスツは仕事前。

 いつもの公園で歌っていた。


 以前よりも周囲に認知された彼女が歌えば、

 自然と人が集まるようになっている。


 いつもの様にそれを見守りながら手拍子を先導する獣人の少女、

 ニリシュ=トリーミリュの横には、

 その歌にノスタルジックな感情に浸る女性と二人の竜人が居た。


「本当に毎日毎日…まぁ嫌では無いが、

 オレらこんな事してて良いのかな?」


「良いんじゃね?

 カディス様が離れてる間でこの人が静かにしててくれるの、

 ここくらいだし…。」


 ひと通り盛り上がった後、

 例の郷愁漂うノイの地元の民謡が始まる。


「来た!

 来たよこの曲~!

 ルキリはこれが一番好きなんだよ!

 お前達!

 手拍子手拍子~~♪」


 楽しそうにハシャぐ女性、

 ルキリ=スターニーは二人の竜人の男達を囃し立てる。


「昔…誰かと聴いたことがある気がするんだけどな~?

 さぁ、お前達も歌いなよ!」


 明るく愉快に音楽に身を委ねるその女性を見て、

 二人の竜人は複雑な表情を浮かべる。


(自分達が守ろうとしているこの笑顔は、

 果たして本物と呼べるのか?)と。




 場は戻り、山岳地帯。


 アサヒ達は即席で造られたのであろう、

 小さな砦で軽い尋問を受けていた。


「ティルスガルのギルドには、

 この地へは立ち入るなと告げていたはずだが?」


「いや、我々はクルセイトの森から来たんだよ。

 数日の間に何があったのか…

 知りたいのはこちらだよ。」


 高圧的な態度ではないが優しくもない。

 ただただ規則通りに話を進めようとする相手に、

 ギリア以外は何も口出しできそうには無い状況であった。

 

「クルセイト?

 …知らんな。

 すまない、我々もこの地に来たばかりでな。

 見たところ…君は高名な冒険者か何かか?」


 周囲にいるのは殆どが竜人であり、

 その言葉を聞いたギリアは納得する。

(そうか…レイヴンの時に私は参加しなかったものな…。)

 と、自意識過剰な自分を恥じながら…。


「ところで…

 そちらの方は、

 かなり血は薄いと見受けられるが…

 我々の同族か?」


 それまで何食わぬ顔でいたリアは、

 その言葉に激昂する。


「はああぁ⁉︎

 竜人のクセにアタシを知らないのぉ⁉︎

 スティルノア!

 リア=スティルノアよぉ!

 純血竜人!

 鍛冶工房スティルノア家の四女よぉ!」


 突然の勢いに当てられた男は動揺するが…


「…すまない、知らんな…。

 鍛冶屋の四女と言われても…。」


 当然である。


 しかしその言葉に他の何人かは反応する。


「スティルノアって…

 尋ね人のアレじゃないか?

 カディス様が探している…似顔絵があっただろう?」


 別の竜人も、

 片隅でフードを深く被って珍しく大人しくしているシュミカに気付く。


「もう一人の小さいの…

 君はもしかして神職かい?」


「ん…小さいの言うなし…。

 僕はシュミカ…。

 嫌な予感がしたから静かにしてたのに…。」


 退屈そうにシュミカの膝でゴロゴロしていたエイナはパッと起き上がる。


「え?敵?

 やっちゃう?」


「…やっちゃわないでくれると嬉しいな。

 こんな所で再会できるとは…。」


 突如現れた竜人の男。

 それはエイナを見ると…即時目線を合わすように膝を折り、

 満面の笑顔で頭を撫でた。


「いやぁぁ~!可愛いねぇ、君!」


 撫で方が上手いのか、抵抗無しに受け入れるエイナ…。

 その一瞬にどれだけの攻防があったのかはギリアしか感じ取れない。


「…それに、

 とんでもなく強いね。

 大丈夫、敵ではないよ。」


「うん!

 でもどうかな…?

 お姉ちゃん達は凄く嫌そうな顔してるよ?」


 ウンザリした様なリアとシュミカは、

 竜人の部隊を前に何となくは勘付いてはいたのだろう。


 アサヒが拾われたキャラバンの先輩、

 レイヴン帝国の第五皇子であり、

 リアに執着するカディス=レイヴンはアサヒ達の身元を承認した。

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