そして、思い出は黒い絨毯の下に…。その2
「『団』…いいね、『団』!
ボク達も『団』にしようよ、シュミカお姉ちゃん♪」
何やら考え込んでいたエイナは、
一番賛同してくれそうな同族を瞬時に選んで賛同を求めた。
「ん?
それは良い提案…
カッコいいのは良いことだね…。
『団』かぁ…。」
「レイヤお兄ちゃんに…
すぐ気付いて貰える名前にしたいかも…。」
勝手に二人だけで何かを決め始めた!
「エイナ様!
そいつに相談しちゃダメです!
大事な事は後でみんなで考えましょう!」
エイナはその言葉使いに対しての感情の表し方がわからない。
「レイヤお兄ちゃんは『エイナ様』なんて言わなかった!
『エイナ』って呼んで欲しいって言ったのに!
なんで急に怒るのさ⁉︎
怖いよ、やだよ!」
…突然狼狽した見た目は子供であるエイナを、
アサヒは同等より遥か上の存在であると認識していたが…
この子はフラットな世界で、
その手の銃の引き金を引く力だけを与えられた子供なのだと痛感した。
「はいはい、
お嬢ちゃんの戦闘力が凄い事は認めるけど…
そのお話は後にして貰って良いかな?
多分だけど、
みんな君が大好きだけど…
その君がみんなを困らせたら悲しくなっちゃうよ?」
リリリー…見習い勇者の見習いたくなる対応!
「ん。
その男が一方的に悪い。
土下座して謝罪せよ…。」
ニヤニヤと下目遣いでアサヒを見ながらエイナを撫でているシュミカ…。
(やられた!
か…格付けが完了してしまった!)
何かに加担してしまった事に気づいたリリリーは、
その家庭内ヒエラルキーとは無縁であるとアピールする為に距離を取った。
見習い勇者が見習いのままである所以である。
(ずっと見習っているといい!)
そんなアサヒにとっての重大事項も、
現状の問題に比べれば瑣末な事で有り…
ギリアとピッピは他の冒険者も集めて現状の把握に努めていた。
「みんなが受けた依頼からは外れるが、
原因はその山岳地帯にある事は間違い無いね…。」
冒険者達がギルドからの依頼で動くのは生活の為だ。
『受けた依頼をこなす。』
それ以外に手を伸ばせば、
それは個人個人の責任に基づいた別の冒険となる。
もちろんそれは自由意志において問題は無い。
しかし、何があろうとギルドは感知しない自己責任のタダ働きとなる。
人助けの側を請け負った以上、
そちらに専念するのが正論ではあるのだが…。
中には正義感から、出向くべきだとの声もある。
「そんな当たり前な事ぉ…。
別のクエストで他の奴らが行ってるんじゃないのぉ?」
失ってしまったお宝の事などとっくに忘れてしまったリアは…
シュミカ、エイナと『団』について円陣を組み、
悪巧みをしながらも聞き耳を立てていたようだ。
「アタシたち行ってみないぃ~?
どうせ向かう方向だしぃ。
ちょっと寄り道にはなるけどぉ…。
出張に出掛ける前の最後のデートには良いんじゃない?
アナタぁ♪」
パァッ♪と顔を赤らめ、
ギリアの腕を取って最高の思いつきを提案するリア。
「ちょちょちょっと!
みんなが変な勘違いをするだろう⁉︎
やめておくれよ!」
「勘違いを広げていけばぁ…
世間はそれを事実として認識して受け入れるものよぉ~♪」
問題ない。
この場において、
それはすでに事実として受け流されている。
「確かにそうですね。」
一人の冒険者が口を開く。
「でしょぉ⁉︎
押しが全てを前進させるのよぉ!」
良い気分になっている竜人に弄ばれる勇者を前に彼は言う。
「いや…あなた方の事ではなく…。
山岳地帯の件です…。」
(君こそが本当の勇者だ!)
…そんな視線が集まるが、
彼は考えを伝える。
「もしかしたら、
もう終わってるんじゃないですか?
自分達は何も聞かずに依頼を受けて来ましたけど…。
山岳地帯に何かあるなら、
その討伐クエストが有る筈でしょう?」
その場の冒険者たちは『あぁ…!』と納得した。
「多分、国とかが絡んだ極秘事項とかじゃないですか?
自分達は一度似た事があったので…。
深くは立ち入らない様にしています。」
ふむふむ…と聞いていたリリリーは立ち上がって鼓舞する。
「ゴタゴタの後始末って事だね。
納得いった!
では、
被害を受けた人達を助けて回って…
ギルドから報酬をもぎ取ってやろう!
片っ端から知ってる町や村を助けに行こう!」
そのテンションに皆盛り上がる。
「ああ…また変なスイッチが入ったわね。」
と、ササは呆れ顔。
「気づいてないんだろうな、アレじゃ。
ま、何にしても人助けにはなるだろう?
付き合うよ。」
と、ピッピは大人の対応。
そう、確かに多少の波紋は残っているだろうが、
各地では各地で他の冒険者たちが活躍しているのだ。
次の彼らの任務はこの後追加される村や町の復旧で有る。
…血の気の多そうなこの連中は、
そんな依頼は引き受けずに別の冒険に旅立つのだろうが…。
それはそれ、別の話である。
「ギリア団長!」
ピッピに団長と呼ばれたギリアを羨ましそうに見るエイナ。
アサヒは嫌な予感を振り払い、
次の流れを待つ。
「自分達はしばらくこの村の保護と復旧に残りますが…。
呼び出しがあるまで、
あの見習いと同行しますわ…。
腕を磨いとくんで、
また同じ戦場で貴方の力に加えてください!」
「ああ!
君の射る矢は何度も私を助け、
私を射ってくれた。
…もう少し味方を良く見て大切にな…。
私じゃ無ければ死んでたよ?」
それが今回呼ばれなかった原因なのだろう。
とにかくこの村での話は終わりである。
他の冒険者たちはこの地の復旧か、
それぞれが知る最寄に場所を移すか新たな依頼を請け負う。
アサヒは何人かの冒険者達との交流を持ったが、
また会える可能性は少ない。
だからこそ楽しい。
『一期一会』とはよく言ったものだと改めて享受した。




