そして、三度目のプロローグ。
血生臭く、焦げる様な匂いを風が運ぶ。
「やれやれ…興味本位で引き寄せられるがままにしてみれば…
まさかこれ程の高度な魔術とは…。
私でも抜け出せないとはね。
さて、そこの君。
アレは君を蘇生しようとの執念を感じるのだが…
何故にそこまで拒むのだ?
私の魂と霊力を代償に使えばあの術式は成功すると言うのに…。」
とある彷徨える魂は、
別の彷徨いたい魂を盾にその高度な蘇生術式に抗っていた。
「いや!
ゼーったいにいや!
もうあんな身体で生きてなんかいたくないもの!
また痛い事いっぱいされるんだもの!
やっと自由になれたのに…。」
「その割にはこの世界に執着しているじゃないか。
他の魂はみんな自然に輪廻の波に身を委ねているのに。」
「…ちょっとで良いからお外が見たかったの。
窓から見えた景色を側で見たかったの。」
「…そうかい。
でも困ったね…、このままじゃ私も二進も三進もだ。
人間の欲望とは…この私まで取り込んで餌にしようだなんて、
度し難いね、ハハハ!」
地上で行われている蘇生魔術はクライマックスを迎えつつあり、
その願いに応える精霊達が二つの魂を捉えて身体に運ぶ。
「あの身体は君が生き返るか、
私が乗っ取って魔物となるか…
どちらか選ばないと終わらないよ?コレ。」
「じゃあアナタにあげるわよ!
あんな汚い身体なんていらない!
お外も見なくていい!このまま消えた方がいい!」
「…そうかい。
ちょっと相棒と相談するから待ってくれたまえ。
…ふん、まったく君らしいね。
とても愉快な提案だ。
話は決まった。
君の身体も魂も私が預かろう!
身体は返せなくなるが…
君の魂は、必ず安らげる場所まで導いてあげよう。」
「本当に?ありがとう…」
強き魂は術式が完了する前に、
その身体へと飛び込んだ。
光に包まれ、
立ち上がった遺体を見て術者である父親は歓喜する。
「せ…成功した…。
神よ!我の願いを聞き届けていただぎぃぃぃっ!!」
生き返ったばかりの幼女は傷みかけた身体を考慮せずに、
全力の蹴りをその男に放つ。
脆い骨は簡単に折れてしまったが、
その身体に宿った魂の霊力が即座に修復した。
「…なるほど、これは酷い。
自分の娘と人形との区別もつかんのか、
この腐れ外道め。」
蘇生は失敗、
悪魔を召喚してしまったと周囲は騒めく。
「そのシナリオも悪くはないな。
乗ってやろう。
あ~~~っはっは~!
私は…悪い悪魔であの、そこの男の…
そいつが酷くて娘さんが…」
(すまん、アドリブがきかん。とりあえず逃げよう!)
「…え~~?」
とりあえず悪魔っぽく奇声を放ちながら、
蘇った幼女の遺体は小さな魂と共に去っていった。
失意の村長は崩れ落ちているが、
半分以上燃え落ちた村の為に他の術者達は走り去る。
そして、
この世界でいつか交わるもう一つの旅が密かに幕を開けた。




