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そして、俺は〇〇になりました。  作者: Foolish Material
34/49

そして、想いのレシピを胸に。その3

 『愛する相手。』

 今のギリアにとってのそれは家族の様に接する仲間であり、

 シュミカは勿論だが、

 リアに関しても娘の様な存在を意味していた。


 この際アサヒはどうでもよい。

 本人もそれで良かった。


 拗ねた長女のご機嫌取り。

 残される側としては、

 キチンと済ませてから旅立っていただきたい!


 カラス騒動の事を聞いたからか、

 ギリアが買って来た物は奇抜な見た目の髪留めばかりだ。


「ん…高価な物を沢山買えば良いと言うわけでは無い…。

 リアの頭をどうしたいの…?」


「…よく知らないし苦手なんだよ、

 こう言うのは…。」


 シュンとするギリアにシュミカはため息を吐く。


「ん~、

 なら最初から相談するべき…。

 僕が選ぶから一度全部返品…だね。」


「え~?

 せっかく買ったのに…お店の人に悪いよ…。」


 勿論ギリアが必死に働いて稼いだ物だが、

 金持ちの無駄な浪費にイラッとしたのか…

 仕方の無い事とは言え自分達を置いていく事に対して、

 多少の我儘をぶつけているのか…

 髪留めを全て奪い取ったシュミカはそれをアサヒに手渡した。


「ん!

 ならこれは預かっておく!

 またリアがやらかした時の保険…。

 お金が無くなったら生活費として容赦なく売る!」


「…はい…。」


 女性の気持ちへの接し方がわからないギリアは、

 小さくなってアサヒの陰に隠れようとする…。


 ディルがついて来ていたら、

 アサヒの背中を叩いて大笑いしたに違いない。


「シュミカにも何か忘れずにお願いしますね…。」


 アサヒがバレない様に耳打ちすると、

 『あ…。』といった顔をする。

(危なかった!

 とんでもないシーソーの支点にされるところだった…。)

 

「ん~!

 とおちゃ、案内!

 それ買ったお店、どこ⁉︎」


 やがて舞い戻った店でシュミカが選んだ物は、

 蓋の部分に小さな羽根の付いた筒型のロケットペンダント。


「ん!

 これ可愛い!

 リアの小さい翼とベストマッチ♪」


 普通に良いデザインでメモなんかも入って便利だが…

 アサヒの知るそれは映画などの物語での小道具として、

 遺骨などを入れる物としての認識が強かった。

 

「骨になって帰ってきたりしないでくださいね、

 ギリアさん!」


「な…なんだい?藪から棒に…。」


 その後、

 選んでくれたお礼との名目でシュミカにも好きな物を一つ…と、

 提案するギリア。


 自分への贈り物を忘れられていた腹いせも込めてか、

 シュミカは店員さんに即答する。


「ん、この店で一番高いものを!」


 二人は思った。

『絶対に売る気だ!』と。



 その後、

 この街最後のショッピングを他人の財布で楽しんでの帰城、

 門番さんコンビが迎えてくれる。 


「おう、お客人。」

「お帰りなさい、ギリアさん。」


 この二人、

 新規の来城者が居ないと適当である。

 いちいち畏まられるのも面倒なので助かりはした。


「明日出発するんだって?

 シフト外れてるから見送りには行くよ。」

「短い滞在でしたが、

 この国は楽しんでいただけましたか?」


 適当な返事を返すと二人はニヤけながら姿勢を正し…


『おかえりなさいませ!

 どうぞお通りください。』


 と、城の方へ手を指す。


 城内に入ると少しあちこちが騒がしい。

 その騒がしさの一つ、

 クルクル回るエイナがギリアを見つけて飛んで来た。


「ギリアっち~!

 何処にいたのさぁ!

 ねぇ、何を持って行ったら良いのかなぁ⁉︎

 お洋服いっぱい持って行ってい~い?」


 キャンキャン吠える仔犬を、

 優しく叩いたり頭を撫でたりして嗜めるギリア。

 隙を見てはギリアのスネに蹴りを入れるエイナ。


 仲が良いのか悪いのか…?


「ん、お手。」


 いつの間にかシュミカにも懐いているエイナは、

 それに従う。


「ん、ちんちん。」


 満面の笑みでスカートをたくし上げるエイナ。

 いつの間に仕込んだんだ⁉︎


『それは外ではやっちゃダメ!』


 アサヒとギリアは同時に叫んでシュミカを睨む。


「んへっ☆」


 新しいオモチャを手に入れたシュミカに戦慄を覚えた瞬間である。

 そのままギリアはエイナの相談に乗るべく連行されて行った。


 やれやれ…と、

 別の騒がしさの方へ向かうアサヒとシュミカ。


 忙しそうな厨房の片隅から聞き慣れた声が聞こえる。


「んもぉ~…なんでアタシがこんな事ぉ~!」


「シュミシュミ達はお出掛けしちゃったし~、

 旅に出て好物が食べられなくなったら姫様が可哀想でしょ~?」 


「知らないわよぉ…。

 確かにアンタのは絶品だったわぁ♪

 でも美味しい物は他にもあるわよぉ…?

 それにアタシ頭使うのは向いてないのよぉ…。」


「頭使うからダメなんだよ~。

 お料理はパズルじゃないし~…。

 決まった事をちゃんとやれば同じ物ができる筈だよ~?

 …たまに曖昧な所もあるけど~…、

 そこは愛で乗り切って~♪」 


 何やらリアがメニに捕まっている様だった。

 アサヒとシュミカにしてみれば、

 残していたリアの事が多少は心配ではあったのだが…


 メイドさんコミュニティの気遣いで気晴らしは出来ていたらしい。

 たまたま目が合った職人さんは、

 『あの子に任せておきな!』と目で合図をしてくれる。

 なんとも至れり尽くせりのリゾートであろうか!


 …気づかれて巻き込まれるのも嫌なので、

 二人は静かにその場を退散する事を選んだ。


「あら、アサヒ様?」


 適当に城内を散策していると、

 城内点検をしているルナナラさんが声をかけてくれる。


「ん、メイド長!

 …もう、大丈夫?」


 シュミカはアサヒ以外への心遣いは達者だ。


「『メイド長』はやめて下さいよ、

 それは身内同志でのあだ名ですってば…。

 我々に上下は有りませんから名でお呼び下さい。


 それと、お心遣いありがとうございます。

 もう…大丈夫ですよ。」


 その笑顔の真意はきっと本人にも知り得ない物だろう。

 いつかまた突然帰ってくる感情の振り子を見送った彼女は、

 今は腫れ物が落ちた様に落ち着いていたが…。


「アサヒ様…お願いが御座います。」


 思いがけなく早く戻って来た振り子の重さに我慢出来なく、

 上下に揺れる口角を晒す彼女が悲しくてアサヒは目を逸らす。


「はい…とりあえずヒマなんで…自分に出来る事なら何なりと。」 


 聞きたいのは奴の事であろう。


「その…元の世界でも面識が有ったとか?

 あのや…レイヤ様と。」


「あの野郎でいいですよ。

 俺もコッチで再会するまでは、

 あれ程に酷い奴だとは思ってませんでしたよ、まったく!

 でも…わかっていたと思いますよ。

 アナタの気持ちも。

 人に好かれる事に慣れてなくて逆に怖かったのかも知れませんね…。」


 それはアサヒ本人にも言える事で有った。

 今の仲間達を家族の様だ!

 などと言ってはいるが、

 アサヒ本人にとっての『家族像』と言うものが曖昧なのである。


「とはいえ…

 ちゃんと顔を合わせたのは一度きりだったので、

 それ程は知りませんけど…。

 それなりに有名人だったから、

 その辺りの話で良ければ。」


「ん、それはぜひ僕も聞きたい所である。

 遠慮無く話してみよ…。」


 ルナナラは『それでも構いません』との意思を、

 崩れそうな笑顔と小さな頷きで表した。

 

 知り合う事になった経緯と、

 この世界に招かれてしまった夜の事…

 何だかんだで知ることは少ない。

 あとはコチラに来てから霊体として現れたレイヤや、

 ルナナラの知る生前の暴れ放題のレイヤの話になるのだが…

 彼女の気が少しでも晴れるのであれば何でもいいのだ。


「あ…ここに居たんですね、

 メイド長…。」


 探しに来たスチラルを見て仕事を思い出したルナナラは、

 怒られるのか?と少し身構えた。


「ふ…楽しいお話の続きは夕食の席でどうぞ。

 準備が整いましたので呼びに来ただけですよ。」


 優しく微笑むスチラルの右拳は、

 左手で押さえてはいるが固く握られている。


「スッチーごめ~ん!

 今行くから~!」


 アサヒとシュミカには、この二人も…

 『たまにやらかす姉』と『それを補助する妹』の様で尊く見えた。

 …奴に毒されている。


「城の者達も揃っております。

 最後の夜をお楽しみ下さいませ。

 みんなで『無礼講』…だ、そうです。」


 『無礼講の拳』を見本として示したスチラルは、

 ルナナラを引きずって二人を先導する。

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