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そして、俺は〇〇になりました。  作者: Foolish Material
32/49

そして、想いのレシピを胸に。その1

 騒ぎが片付いた頃には夜も遅くなっており、

 祝勝会は無事に御開きとなった。

 来場者達は塞ぎ込んだ国王を案じながら帰路につく。


 旅立ちを許され安心し、

 お腹も満たされたエイナはルナナラの腕の中でコテンと寝落ち、

 そのまま部屋のベッドへ運ばれて行った。


 慌ただしく始まる片付けの邪魔になるからと

 改めて用意されていた別室で卓を囲んで二次会が始まる。

 …尋問という名の。


「でぇ⁉︎

 どぉ言う事なのよぉ⁉︎」


 高級そうなソファも気にせず、

 リアはグラスを片手にズリズリとギリアに詰め寄る。


「まままぁ…。

 ちゃんと順を追って話すから落ち着いておくれよ。

 先に言っておくけど、

 私は君達の事が大好きだし…」


「『達』ぃ~⁉︎」

 

 酔っ払いのウザ絡みである。

 こんな事を言うのは苦手なギリアであるが…

 事態の悪化を避ける為に、

 とにかく正解に違いないと信じた言葉を口から吐き出す。


「も、もちろん君が一番さぁ!」

 

 ディルは友人の初めて見せる醜態に笑いを堪えながら見守っていた。

 その時勢い良く開かれた扉からシュミカが現れる。


「ん!

 とおちゃ!どぉ言うこと⁉︎」


 たまらず吹き出したディルはアサヒの肩を叩きながら言う。


「パパ!

 娘さんが嫉妬しているじゃないか!

 そうなるとアサヒ君はお兄ちゃんになるのかい?」


 次期王で第二王子の横に座らされて萎縮しているアサヒは、

 それが彼なりの気遣いでもある事に気付く。


「痛い痛い!

 強いですよ、え…と…王子様!」


「ディルでいいよ!

 君達はお客さんだ。

 オレは君達の王様になる訳じゃ無いんだから、

 知人宅に来て寛いでる程度の感じで大丈夫だよ。

 もてなすのはコチラさ!

 さぁ、気にせず飲みな?」


 と、ディルはアサヒの膝で上乾き始めた遠慮のグラスにデキャンタを差し出す。


「い、いただきます、ディル…さん。」


「ん…そいつが『あんちゃ』だなんて烏滸がましい…。

 せいぜい守られて、

 時々愉快な挙動で笑わせるペット程度である…。」


 いつの間にかギリアとリアの間に潜り込んでいるシュミカ。


(ギギギ…言い返せない…!)


「ところでシュミカぁ、

 何かわかったぁ?」


 大笑いでアサヒに絡むディルのせいで、

 アサヒはシュミカが離れていた理由に気を回す事は無い。


「んん…、

 存在や名前は出てくるけど…昔話程度…。

 進展は無い…。

 それより、とおちゃと何の話?」


「そぉよぉ!

 この男、アタシ達を捨ててどっかに行くつもりなのよぉ!」


 二人の顔を交互に見て小芝居を始めるシュミカ。


「ん…酷い…、

 今度こそ本当に捨てられるの?

 あの時みたいに考え直してはくれないの~~?

 よよよ~…。」


 アサヒとディルはもう呆れた薄ら笑いで観劇している。


「違うよ!

 それに一度家族を捨てようとしたみたいにしないでおくれよ、

 ちゃんとしたお仕事だよ!」 


 ゆっくりとグラスに口をつけてから、

 シュミカは落ち着いた口調でいう。


「ん、『騎士団』の招集?」


「えぇ~?

 何か知ってたのぉ~~?」


 頬擦りしながら、

 シュミカに『もっと情報を流せ』と促すリア。 


「ん…、

 修行でリアとそこの駄犬が戯れてる間に少しだけ…。

 僕達から離れる事があれば…

 死ぬか捨てられるか…

 『それ』があった時だけだって…。

 あと、昔の女の事も少しだけ…。」


 リアはピタッと動きを止めて真顔でギリアを見る。


「ちょっとシュミカ君⁉︎

 昔のパーティの話だよね?

 そりゃ中には女性もいるよ!」


 この手の情報の齟齬を慌てて釈明してはいけない…。

 ギリアの目を見ながらシュミカを引き寄せて、

 ソファの上を後退りするリア…。


「シュミカぁ~~、

 今夜は思いっ切り可愛がってあげるからぁ…、

 後でベッドで詳しく聞かせてちょうだい…。」


「こんな所で、

 ネタでも生々しい話をするな!」


「…母と娘…か。

 レイヤが聞いたら何か創ってくれたかもな…。」


 ディルは足に肘をついて妄想の翼を羽ばたかせる。


「アンタもやめてください…。」


 もうグダグダで話が進まない状況に、

 アサヒとギリアは目を合わせてため息をついた後、

 軽くフッと笑う。


 その時コンコンっとノックの音が響いて静かに扉が開く。

 ディルに言われて余った料理を簡単にまとめた皿を、

 スチラルとメニクトが運んで来たのだ。


「失礼致します。」


 目の前の状況を見たスチラルは改めて…


「失礼致しました!」


 と、引き返そうとする。


「ああ、いやいや!

 ふざけていただけだよ!

 大丈夫、入っておくれ!」


 慌てて引き止めるディルは二人を部屋に招き入れた。


「本当に余り物で申し訳ありませんが…。

 言われた通りにお持ち致しました。

 お申し付け頂ければ食材も余っておりますし…

 作り直させますが?」


 皿の上は綺麗に並べ直してはいるが、

 確かに余り物感は隠せない。


「いいよいいよ、

 余った食材は君達の打ち上げで好きに使ってくれて構わないから、

 明日の事は別シフトの子達に任せてゆっくり羽を休めると良い。

 今日は本当に有難う、お疲れ様。」


(なんてホワイトな職場だろうか⁉︎

 ホワイトどころか青空が見える!)


 深く頭を下げるスチラルの横からメニクトが別の皿を出してくる。


「ディルディルならそぉ言うと思って~、

 御礼にミートパイ作って来たよ~♪

 シュミシュミ達にも~、

 チャイル家の秘伝をお裾分けぇ~♪

 食べて~、食べて~♪」


 それを見たディルは目を輝かせる。

 

「最高じゃないか!

 エイナ以外にはなかなか作ってくれないんだよ!

 彼の親は最高の料理人でね、

 王族であろうと何だろうと…

 自分が作りたいと思った時と人にしか絶対に腕を振るわないんだ!

 その一端だけでも味わえるだなんて…

 ありがとう、メニ!」


 王族も歓喜するミートパイとは!


「そんなに褒められ過ぎると恥ずかしいなぁ~~。

 メニが作るのはまだまだだし~、

 気が引けてるだけだよ~…。

 召し上がれぇ~~♪」


 そう促されて口に運ぶと納得であった!

 『素晴らしい!言葉に言い表せない程に!』

 と客としてその場にいる全員がそう思った。


 だが、

 同時にこうも思った。

 『彼⁉︎』と。


「姫様は同志だし~♪

 喜んでくれるから材料が余ってる時に作るだけだよ~。」


 『ちんちんメイド』か!


「もし人手が足りているなら、

 スチラルとメニも一緒にどうだい?」


 ディルに提案されてメニは一応上司らしいスチラルを見る。

 一瞬スチラルはその誘いに顔を赤らめて目を輝かせたが…

 ズン!と足を踏ん張って耐える。


「いえ!

 まだ仕事が残っておりますし、

 他の子達に示しがつきませんので!」


 スチラルはどうやらディル推しの様である。


「え~?

 メニが居れば大丈夫だよ~。

 ディルディル~、

 手が空いた食いしん坊とか怯まない子をコッチに寄越してい~い~?」


 ふと考えを巡らしてディルは数名の候補を浮かべた。


「構わないよ。

 メニはその衣装と役割を楽しむと良いよ。

 片付けが終わったら他の子達を頼んだよ。

 気を抜いて楽しくしておいで。

 明日の子達の負担はあまり増やさない様にね☆」


 と、形式上の念だけはおしておく。


「かしこまったよ~♪

 メニにお任せぇ~~!

 だからスチスチはゆっくりしてて~。

 今回の遠征、

 本当にお疲れ様~♪」


 スチラルの足を払った後、

 スッと魔法の様にディルの横に座らせたメニは…

 エイナの様にクルルっとスカートを翻して回った後、

 楽しそうに仕事に戻っていった。


「君も今回の功労者の一人だ。

 ゆっくりとすると良い。

 …大食いもいる様だが、

 流石にこの量は腹に余るよ…手伝っておくれ。」


 真っ赤な顔のスチラルは、

 そう言われながら手に渡されたグラスを鳴らす。

 

 そんな事はお構い無しに飲み食いしていたが、

 その音で我に帰ったリアは…

 

「あ…そうそうギリアぁ~、

 で、

 アレはどぉ言う事ぉ?」


 色々と満たされてトゲが全て抜け落ちていた。

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