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そして、俺は〇〇になりました。  作者: Foolish Material
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そして、その扉を開いて。その1

 お昼のBBQ!

 当然だがこの世界にもある炭を使っているので、

 もちろん親方も、わざわざ墓標を焚べたりはしていない。


 それでも親方を疑わないエイナは…

「流石レイヤお兄ちゃん!

 よく燃えるね♪」

 と、事情を知らなければ猟奇的とも思われる事を言いながらお腹を満たす。


 そういえば居ないな…?と思っていたギリアは、

 スチラルさんの報告によると…

 急遽呼び戻されて先に街に帰ったらしい。

 ギルドのグランドマスターからの呼び出しとなると、

 伝言を残すだけで精一杯との事。

 その内容は、

 『ゴメン!先に帰るね!

  城での祝勝会には出れると思うからそこで話そう!』

 で、ある。


 アサヒは出来るだけ野菜を選んで食べるのだが、

 横から『ア~ン』を強要してくるエイナ。


 あの子竜の肉ではありません様に…と、

 他人が育て、狩り、挙句は調理まで任せた一口は…

 とても申し訳ないが絶品であった。


(こんな弱い自分…

 いつか食われたとしても恨むまい。

 せめて強い魔物の腹の足しになれますように!)


 そう願い、その場は楽しんだ。

 多分ではあるが、

 実際はこの場の全員がそうなのであろう。


 いや、元の世界でもアサヒは気付きは出来なかったが、

 そうであったハズだと今更に思う…

 所詮は弱肉強食を前提とした『食物連鎖』の中にいるのだ。


 この場をシラケさせると言うことが、

 どれだけ世界に対して失礼なのかと痛感させられる。


 その後、

 ダンジョン化が解けた鉱山はまた採掘場として坑夫達の生活の場へ。

 わざわざゲート等に貴重な魔力や資金を費やす必要が無くなった兵達は、

 夕暮れには十分間に合い、

 きっと待っているだろう祝勝と慰霊の宴の為に、

 半日程度の凱旋の歩を進める。


 このように表現してしまうと、

 たどり着いたら戦火が…とか思われるかもしれないが、

 この物語ではその様にはならず、

 昨夜のうちに報告の為に走ってくれた兵がもたらした情報の元、

 とりあえずは慰労の宴が用意されているだけである。



 やがて無事に城へ辿り着き、

 一応は城のパーティーと言うことで

 ソレなりの服装に仕立てられた一行はまず、

 例の病室に向かう。


 少しだけ気恥ずかしそうにスチラルに手を引かれてエイナ。

 『ちょっと待ってて』と言われたアサヒ達は通路の角で時間を潰していた。


「ん…とおちゃ、

 何処だろう?」


「まだギルドかしらねぇ?

 面倒ごとを持って来ることだけは確かよぉ…。

 このまま逃げちゃう?」


「…お前らが良いなら構わんよ。

 ただ、

 俺達だけであの森を通る事になるけどな。」


 目を合わせ、

 肩をすくめる三人は…

 病室から響いてくるルナナラの悲痛な泣き声が聞こえない様に、

 先に宴会会場へと移動する事にした。


(何か…形見になる様な物でも預けていけば良いのに…朴念仁が!)



 大きくは無いが、城は城。

 滞在すらそれほどしてもいないのだ…

 多少迷子になりかけていた所にトローリーで料理を運ぶメイドさんが通る。

 オリエンタルな雰囲気が漂いながら…

 シュミカと同じ位の背丈で、

 常に宙を見て笑顔固定の不思議さん。

 

 確か最初の病室でのお茶会にいたはずだ。


「ん~!メニメニ~♪

 僕達迷子…!ご飯の所…どこ~?」


 アサヒ達に気付いた『メニメニ』こと『メニクト=チャイル』は、

 おっとりとした口調で答える。


「あ~、

 シュミシュミとリアリア~~♪

 おかえりぃ~。 

 祝勝会~、

 なんかぁ、なし崩し的に始まっちゃってるよぉ~~?

 こっちこっちぃ~~♪」


 口調はゆったりだが、

 動きはものすごくテキパキスピーディーだ!

 声だけがどんどん遠ざかっていく!


「あの子を見失っちゃだめよぉ!

 着いていきましょぉ!」


 …時々立ち止まって待っていてはくれたものの、

 段々震えながら冷や汗をかき始めたメニクト。

 相当急いでいるようだ…


「ゴメンゴメン!

 仕事中だもんね…先に行っていいよ!」


「あ~ぃ~。

 そこの通路曲がった扉の先が大広間だからぁ~。

 メニ達は通用口からしか入れないから~、

 奥に行くねぇ~。」


 よほど急いでいたのか声だけを残してメニは、

 エレガント且つスピーディーに去っていった。

 取り残された三人は、

 申し訳なさ背負いながら手を振る…。 


「…後で会ったら謝ろうな。」


「…お酒をお願いしても遅らされたら嫌よねぇ…。」


「ん…感謝感謝♪

 …そう、

 僕は途中で抜けるから気にしないで…。」


 扉に手をかけてリアは、


「ええぇ~?そぉなのぉ?

 一緒にいましょうよぉ~。」


(お前がシュミカに付き合うという選択肢はないのか?)


「ん…スチラルが図書室の本、好きに読んで良いって…。」


 それを聞いて一瞬だけ目を伏せたリアは背を向けて扉を開ける。


「…何か…、

 わかると良いわねぇ♪」


「ん…ありがと、リア。」


 時々シュミカが何かを探していることは知っていた。

 だがアサヒはこの二人がいつか話してくれるまで、

 詮索はしないと決めている。


「さぁ、さっきからいい匂いがするじゃないか!

 …てか本当に始まってるな…。

 戦って来たのは俺達なのに…。」


「ん…アナタはあの場に居て笑いのネタにされてただけ…。」


「くっ!」


 改めて広間を見ると、

 確かに貴族っぽいのもチラホラ見えはするが…

 みんな楽しそうに飲み食いし、

 騒いでいる。


「堅苦しい挨拶とか聞かなくて済んで良かったじゃないぃ~。

 アタシ達も行きましょぉ~♪

 さぁシュミカ。まずは腹ごしらえよぉ!」

 

 リアはシュミカの手を掴んで歩き出す。

 一瞬だけアサヒに振り返って目で合図する。

 コッソリ『まだね。』と、

 申し訳なさそうに口に人差し指を添えて。


 ひとりぼっちにされてしまったアサヒは仕方なく一人飲み。

 幸いアサヒを知るメイドさん達が気にして声を掛けてくれたり、

 食べ物をすすめて来てくれたりするので思いのほか楽しく過ごせている。


「あれ~、アサアサひとり~?」


 声が先に届き、ササッと現れたのはメニクトさん。


「ああ、さっきはありがとう。

 仕事の邪魔しちゃってゴメンね!」


「だぁ~いじょうぶ~。

 お客様の案内も仕事だし~♪」


 ゆったりと話しながら皿の汚れからでも推理したのか?

 アサヒが使っている立食用のテーブルの上をサッと片付け、

 同じ物とおススメであろう料理…新しいお酒に入れ替える。


(出来過ぎだろう!この子!)


「あ~、

 アッチでディルディルがギリギリしてたよぉぉ~~…。」

 

 後半はフェードアウトしたので聞き取れなかったが…

 多分ディルノードさんとギリアさんが話でもしているんだろう。

 …問題は、

 彼女が速すぎて『アッチ』がわからなかった事だ。


 テーブルに置かれた小さく上品な料理に舌鼓を打ったアサヒは、

 グラスを片手にふらふらと探してみる事にする。


 ふと盛り上がっている場所を覗いて見ると…

 ディルノード王子はギリギリしていた、

 腕相撲で…。

 それでも相手はちゃんとギリアだったので目的は果たしたので問題は無い。

 勝負に水を差すまいと観戦していると…。


「あぁ、アサヒ君!

 やっと会えたね!」


(今こっち見んな!)


 ダンっ!と大きな音が響いてディルの身体が傾く!

 汗だくのディルは息を切らしながら相手を称えた。


「全然動かない!

 無理だよこんなの…流石だね、ギリア。」


「…すまないね、

 この力を待っている人達が居るって事さ。」


 傍の人に聞くところ、

 この国に残って欲しいと頼むディルに対して、

 少しでも動かす事が出来たなら…とギリアが勝負を受けたらしい。   

 

 潔く負けを認めた王子はギリアに握手を求め、

 ギリアも勿論それに応じた。


「せっかく久しぶりに会えたのに、

 もう行ってしまうなんてさぁ…

 明日って事はないだろうし、

 今夜はゆっくり飲むくらいは頼めるだろう?」


「そうだね、

 ウチの子たちも疲れているだろうからね。

 私の持つバッグに入るだけの買い出しをしなきゃだから、

 明日それを済ませて明後日にはたつよ。」


(あぁ、慣れた冒険者とはこう言うものか。)


 ひと所には留まれない。

 するべき事が終われば次の土地へ。

 考えればそうだ、

 ひと所へ留まるにはその土地に必要とされる何かが無くてはならない。

 気に入られたからと言ってタダ飯は食えないのである。

 仕事が終われば次の仕事へ…。


(どこの世界も変わらないな…。)


 そうこうしていると、

 別の一角でも騒ぎが起こり始めた。


「あ!アサヒいた!

 あ!ギリアもいた!

 今まで何してたのよ、もおぉ~~!!」


 ギリアは抱き着こうとするリアを制する。


「わ、悪かったよ!

 何があったんだい?」


「あ!

 アッチで王様が大変よぉ~!」


(王様、下まで降りて来すぎだろぅ!)


 みんなでそちらへ向かうと、

 可愛らしいお子様ドレスに着替えたエイナと国王が対峙していたけ。


「あ!

 アサヒ~!

 待っててって言ったのに~!」


 流石にあの場には居れなかったとリアも顔で同意する。


「あぁ、ごめんね…

 みんなお腹が減っちゃったんだよ!あはは…。

 で、コレは?」


 ハッと思い出したエイナは王に向かっていきり立つ。


「そーだ、

 なんで駄目なのさぁ⁉︎

 父様だってレイヤお兄ちゃんと仲良しだったでしょ?

 ルナナラも、

 もう一度会いたいって泣いたんだよ!」

 

 …これはまた面倒な事になりそうであった。


 何かに葛藤し、

 狼狽えているように見える国王は首を振って気持ちを振り切る。


「ダメ~!

 お前にはまだ早いの!

 許しません~!」


 …貴方は忘れたのか?

 アサヒ一行が初めて謁見した時の自身の姿を…。


 しかし血の惨劇は訪れず、

 ただ…一国の王の心を確実に抉り取る言葉が響く。


「父様なんて大嫌い!バぁあか!!」

 

 エイナが泣きながら走り去った後には国王の真っ白に燃え尽きた姿が残った。

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