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そして、俺は〇〇になりました。  作者: Foolish Material
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そして、カラスは何故なくの?その1

 野犬だろうか?

 やかましい声でアサヒは目を覚ます。

 顔に添えられた小さく冷たい肌触り…

 いつの間にかすっかり懐いたエイナが幸せそうな寝息を立ててアサヒを足蹴にしていた。


(…小せえ足だな…。)


 祝勝会の流れから、

 いつどうなってこうなったのか全く検討もつかないが、

 どうやら無事に寝室を使わせてもらえている事は間違いない。


 飼い猫で遊ぶように手を躍らせても目を覚ます様子の無いエイナの姿勢を整え、

 改めて布団を掛けて夢の中の楽園が更に幸せな世界になる様に誘う。


「…さぁてさて…すっかり日が登ってんなぁ…。」


 窓から外の様子を確認。

 自然が奏でる音の中に金属がぶつかり合う音が混じって聞こえる。


(これは…片方はギリアさんだな…。)


 日々鍛錬を続ければ音だけでもこれだけの情報を得る事ができる様になるものか…

 と、我ながら感心してみたりもする。

 真面目に毎日でも足りないのは重々承知してはいるが…出来る限りは続けている。

 たまには少し多めに身体を動かそうと身支度を整えた。


「…嫌だった筋肉痛が来ないのが不安になるもんだな…。」


 感慨に浸りながらストレッチを終えると、

 身体の方がもっと動かせと催促してくるのを感じる。


 まだ目を覚ましそうにないエイナはそのままに、

 とりあえずアサヒは外へ。


(本当は強かったり、精霊に守られてたり…わかるけど、

 一国の王子を俺みたいな胡散臭い奴の部屋に放置するとか…

 ゆるいなぁ…。)


 

 金属音の出どころは、

 それほど広くはない村の中心の広場であった。


 数人の男達がギリアを囲んで順に襲い掛かっている。

 昨日参加していた兵士達が、

 名高い勇者に稽古をつけてもらっているらしい。


 それを見守るメイド姿の方々。

 その中にスチラルも居る。


「あ、おはようございます!

 スチラルさん!

 そちらの『王子様』が俺が寝てた部屋で寝てますけど…

 大丈夫です?」


 それを聞いた彼女はキッ!とアサヒを睨みつける。


「『姫様』です!

 …もう、

 いつの間にか姿を消したと思ったら、

 そちらに潜り込んでいたのですか…。」


「いやいや…そんなもんですか?」


「ギリア様とレイヤ様が認めたあなた方ですから。

 それに、

 何かがあれば精霊に『秒』で八つ裂きにされるでしょうから♪」


(俺はあの子に何もしませんよ⁉︎)


 そんな話をしていると、

 ギリアがアサヒに気付く。


「やぁ、

 やっと起きたのかい?」


 それに習って稽古中の兵士達もアサヒに挨拶をするのだが…

 次の瞬間には全員吹き飛ばされていた。


「全くもう…

 せっかく私が隙を見せたんだから襲い掛かってこなきゃダメだろう!

 この国を守ってるつもりだろうが、

 あの程度のガーゴイル…その内すぐに攻略されちゃうぞ⁉︎

 君達はこの国を守りたいんだろう!」


 今のギリアは教官であった。

 アサヒはその軽い目配せを受け止める。


「鍛錬の邪魔をしてスミマセン!

 頑張ってください!」


 少し身体を動かす程度じゃ済みそうもないと直感したアサヒが取った選択は離脱。

 チラッとスチラルに目を向けると、

 さすがの対応であった。


「では、

 姫様を起こしに行きましょうか、アサヒ様♪」


 スチラルさんが残るメイドさん達に軽い指示を与えて

 二人はアサヒが目覚めた部屋に歩を向ける。


「ん~、ちょっとだけ身体を動かしたかっただけなんだけど…

 あそこでは無理だなぁ…。」


「うちの騎士団もそこそこな筈なんですけどねぇ…。

 外界からの襲撃なんて有った事無いですから…。

 みなさん、ハシャいじゃってますね♪」


(…そう言う事か?)


「あ、そう言えば…

 ウチの穀潰しどもはどうしてますか?」


 スチラルは人差し指を口元に当てて記憶を辿る。


「え~…っと、

 確かリア様とシュミカ様は近くにある温泉に行った筈ですね。

 この大陸は火と水が好きな精霊が多いので、

 あちこちにあるんですよ。」


 その後、

 先程目を覚ました部屋にいたのは目を覚まして可愛らしいエイナ。

 それと遊ぶシュミカ。

 腕を組んで険しい表情で椅子に座るリアの姿であった。


「なんだよ、

 この状況…温泉に行ったんじゃないのか?」


 険しい顔のリアが目線だけで訳ありである事を強烈に伝えて来ているのは理解出来た。

 ならば聞く相手は…


「ん…。

 割と緊急事態…ね。

 アナタはリアが常に身に付けていた髪飾りに気づいていた?」


 そう言われて、

 改めてリアを見ると髪飾りとまでは思い出せないが…若干の違和感はある。


「あ、前髪が全部降りてる?」


 言われてみれば、何かでワンポイント止めていた気がする。

 髪飾りというか小さなヘアピンで。


 じ~っと見られていた事に照れたリアが我慢できずに話だす。


「んもう!

 アタシ魔力のコントロールと精霊とのコミュニケーションが苦手なのよう!

 アタシ達竜人は魔力が大きいから難しいの…

 普段は魔道具でなんとかしてたんだけどぉ~


 温泉の脱衣所で外して、

 手放した隙に変な黒い鳥に持ってかれたのよう~!」

  

「ん…

 リアが使ってたのはここ以外ならそこらにある安物だけど…

 隔離されたこの村には需要がないから売ってない…。

 少なくとも街まで戻らないと…。」


「物探しならルナナラが居てくれれば良かったのに…。」


 エイナが呟いた一言にスチラルは微笑んで胸を撫で下ろす。

 メイド長が遠くで大きなクシャミでもしていてくれれば良いな…と。


「ああ!アイツよぉ!!」


 そう叫んだリアが指差すのは窓に停まった一羽の…カラスだろうか?

 この世界の生態系は知り得ていないが、アサヒが認知する限りではカラスである。


 そいつは嘴にリアの髪飾りを咥えて挑発する様に見せびらかすと、

 着いてこいと言わんばかりに飛び立ち、

 待っていてやるからその建物から出てこいと空を旋回し続けている。


 からかっているのか、

 誘導したいのか…なんにしても着いていくしかない。


「なあ、

 お前飛べるんだから何とか出来ないの?」


「したいわよぉ!

 でも魔力コントロールできないからぁ…

 飛んだ途端に何処に行っちゃうかわかんないのぉ…

 安物でも、無いとダメなのよぅ…。」

 

「ん…

 リアは何か違和感で集中力を逸らさないと、

 全力で弾け散らしちゃうタイプ。」


(どんなタイプだよ…。)


「ちなみにレイヤお兄ちゃんがくれたボクのお花の髪飾りは、

 精霊に見付けられづらくする物だから…

 お姉ちゃんだと魔法そのものが使えなくなっちゃうね。」


(説明ありがとう!)


「まぁ…みなさん忙しそうだし、

 とりあえず自分達でなんとかしてみるか〜。

 回り続けてるアイツも疲れるだろうし。」


 審議は不明だが、

 黒い動物は頭が良いと聞いた事があるし…

 実際、朝日の世界のカラスも知能が高いとされていた。

 あの行動に何か意味があるのだとすれば、

 確かめてみるのも面白い。


「探検?ねぇ、探検⁉︎

 ボクも行くよ〜!」


 暇を持て余していた『姫様』は遊びが始まる気配を感じて、

 シュミカと一緒にクルクル回る。


 自分の事なので、仕方ないと溜息を吐きながらリアも立ち上がる。


「スチラルさん、

 多分危険は無いと思いますけど大丈夫ですか?」


 楽しそうなエイナを見てスチラルは承知する。


「一応、他の者にも声を掛けておきますので、

 どうぞ姫様を楽しませてあげてください。

 あの鳥の進行方向だけ確認して、すぐに後を追いますわ。」


「もぉ〜…、

 アタシには一大事なんですけどぉ〜…。」


 困惑する姿に多少反省したのか、

 エイナは申し訳なさそうに指を咥えてリアを見上げる。


「ごめんよ…お姉ちゃん。」


「もぉっ。」っと、優しい笑顔を作ってみせるリアは、

 膝を折ってエイナの頭に手を乗せて…。


「まぁ良いわぁ、

 一緒に行く?お姫ちゃん♪」


「うん!行く!」


 パぁぁっと弾ける笑顔に全員の心は射抜かれた。

 パンパンと膝を払って立ち上がるリア。


「じゃあ皆んなで探検に行きましょ〜♪」


『お〜〜!』


 …と、盛り上がったタイミングでアサヒは気づく。


「ちょっと待て、リア!

 お前下半身タオル巻いてるだけじゃないか⁉︎」


「あ…

 そぉ言えば、脱いでる途中だったからぁ…。」


 ふと外に目をやると、

 疲れ果てた鳥が窓枠に止まって息を切らしていた…。


 誰も捕まえようなどと無粋なことは考えない。

 ただ一言…


『すみません、

 後もう少しだけ待ってて貰えますか?』


 と、心の中でつぶやいた。 

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