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そして、俺は〇〇になりました。  作者: Foolish Material
23/49

そして、来訪と再会と。 その2

 そういえば、

 窓にカーテンが掛かっているので元々薄暗い部屋ではあったが、

 本格的に夜の帳が下りる頃合いの様である。


 先程シュミカが様子を確認しに来てはいるので

 心配はかけていないとは思うが…気にはなる。


「心配はいりませんよ、

 状況に変化が起きたので少しバタついているのですが…

 今の経緯をこれから説明します。


 体調などはよろしいですか?」


 良くは無いが、それを言い出すと話が進まない。


「…また少し力が抜ける感じがするので…

 横になって聞いてもいいですか?」


 レイヤは優しい微笑みで答えて椅子に腰掛けて、


「まずはこの国、

 今は私の才能で潤い始めましたが…」


 カーテンの隙間から、

 暮れゆく空によく分からない感傷を乗せて勝手に語り出した。


「全部アンタの仕業ですか…

 いや、逆によくやりましたね…。」


「お褒めに預り恐縮です。

 いやぁ、暇だったもので♪」


(讃えはするけど褒めてはいねぇ。)


「以前のこの国は、

 現状この土地だけで取れる希少な鉱石…

 貴方との間ではミスリルやアダマンタイトの様な、

 『ファンタジー的素敵希少金属』とお考え下さい。

 まぁ、それによって成り立っていたのです。」


(なるほど、排他的なのに潤って見えるのはそのせいか…

 いや、それらを守る為に堅城たらしめているのか?) 


 フムフム…と考え、想像し、

 妄想まで膨らませるアサヒの姿がレイヤは好きだった。


 元の世界での最後の夜に色々話しながら、

 様々な話題についてレイヤはアサヒに、

 どうしてその結論に至るのか理解に苦しまされた。


 だが、それぞれに理由を聞くと、

 アサヒはレイヤの想像し得ないルートを通った場合の答えを提示して来る。


 勿論それは飲み会での意図した言葉遊びとしてであり、

 『普通は有り得ない因果論の果て』を常に持っている…

 そんなアサヒをレイヤは心底気に入ったのだった。

 

 改めて異国での再会の喜びを胸に秘めてレイヤは続ける。  


「まぁそれで…最近になってそれが取れる鉱山に、

 地中で活動する竜種が巣を作ってしまいまして…


 ちなみに土の竜と名付けました。」


「俺にしか理解できませんよ。

 モグラって言いたいんでしょ⁉︎」


「ああ!

 理解を得られるって気持ち良い!」


「い い か ら !」


「もう…

 そういえば超高性能な教育係の話は聞いてますね?

 メイド長の件です。」


 ここからが本題であると、

 レイヤは腰掛けた椅子に座る姿勢を整える。


「ああ、スチラルさんも心配してたみたいですね…。」


「はい。

 メイド長はエイナさんが物心つく前から面倒を見ていたそうで、

 新参者にエイナさんが懐いてしまって嫉妬心も有ったのでしょう…。

 多少険悪な仲だった様です。」


(…いや、新参者の教育方針に問題があったからだと思うが…。)


「それで先ほど話した鉱山の竜の巣もありまして、

 実力も有り…

 この国に馴染みのあるギリアさんに調査の依頼を出したのですが、

 なかなか到着しないものですからメイド長が王に進言したんですよ。


 『討伐はギリアさんが到着してからでも、

  調査は同じく実力のある教育係の彼に行かせてはどうか?』

 

 と、エイナさんには内緒でね。」


「はは、二人を引き離したかったんでしょうかね…。

 それがバレて王子様はプンスコしていた訳ですか?」


「まぁ、そんな所でしょうか…。

 鉱山へは片道半日程度、

 二、三日は戻れないことになるので…、

 懐いていたお兄ちゃんが急に居なくなって寂しかったんでしょう。」 


 やたら深く頷きながら語るレイヤは姫王子派のようだ。


「で、状況の変化って?」 


「あなた方が観光を楽しんでいる間に、

 精霊の力を借りて調査隊からの伝令があったんです。


 『鉱山がダンジョン化して地竜の産卵場になっている。

  小規模な戦闘が有り、鉱山内部が崩落。

  数名が閉じ込められている。』


 だそうです。」


 もちろんアサヒが真っ先に思いつくのは、

 (土の竜と呼ぶのはやめたのか?)では無く…


「もしかしてその中に…?」


 レイヤはその通り、と両手を広げて答える。


「はい、リストに名前が載っていたそうです。

 それで今は対策会議の真っ最中という訳です。」


 多少でも知った仲のような口振りな割に素気なく言う…。

 本人の資質か芸術家としての性か、

 それともこちらの世界に来てからの生き死にに対しての馴れなのか?


 それはアサヒには知る由もないが…

 自分自身も余り狼狽えないようになって来ているのは自覚して来てはいる。


 …他人のメンタルの心配などをしている場合では無い…

 自分のメンタルケアの為に人を思いやる。

 その連鎖こそが身辺を浄化する最適解…

 と考えるアサヒが今気になっているのは彼女についてだ。


「…メイド長さんは?」


 レイヤは溜息をついて目を逸らしながら重い口を開く。


「…当然気になるのはそちらでしょうね。

 見てられませんでしたよ…あの気高いメイド長が…」


 普段は『気高いメイド長』なのか、

 レイヤなりの皮肉を込めた表現なのかは取り敢えず置いておく。


「『そんなつもりでは無かった!』と半狂乱で崩れ落ちてましたよ…

 今は王様と仲良く医務室で眠っています。」


 実際は『眠らされた』で、あろうが…。


「…王様相部屋なの?」


「…王妃様が亡くなってからは寂しがりの様で。笑

 『何か』から避難する時以外は他の方々と一緒が良いそうです。

 それに王様の自室はただ今改装中なんですよ☆


 勿論常に警護はしっかりと就いている様ですがね。」


「は、はぁ…ソレがこの世界のこの国でOKなら俺が何か言う事じゃないですけど、

 ここは平和な国なんですね…。」


 二人は同郷である故に思うところもあり、

 微妙な苦笑を浮かべた。


「ソレよりも問題は『何か』…では無くエイナさんです。

 流石にそんなメイド長を責めたりはしませんでしたが…

 何かを感じたのでしょうか、

 放心状態でフラフラと自室に篭ってしまいました。」


(展開が重い!)


 その時、コンコンっと開け放たれたままのドアをノックして、

 軽さだけが取り柄の竜人が現れた。


「ちょっとぉ…ドア開けっ放しでぶつぶつと…。

 目が覚めて動けるようになったならこっち来なさいなぁ。

 お酒とお料理は立派だけど…

 みんな真面目な話ばかりでつまんないのよぉ。」


「お前もその『真面目』に付き合ってみるってのはどうだ?」


 その返答にいつもの調子を確認し、

 肩で笑って見せたリアは言われた通りに真面目を実行する。


「お姫ちゃんがいなくなったわぁ。

 ま、向かった先は分かりそうな物だからギリアが追った見たいねぇ。」

 

「…なるほど、

 そちらの展開で来ましたか…。」


 レイヤは何やら考え込んでいる。

 …嫌な予感のする小さな笑みは既視感を呼び起こす。


「あと、そのままギリアを追って採掘場の竜討伐もするそうよ。

 荷運びをさせてくれるらしいわぁ♪

 どんな大荷物かしらぁ!やり甲斐があるわねぇ~♪」


(より重い荷運びが生き甲斐な種族って何だよ…

 助かるけども…。)


「俺は役には立たんぞ。」

 

「そりゃそうよぉ、全部アタシがやってやるものぉ♪」


「全部ね、やってみるがいいさ。

 で?何で俺が付き添わなきゃならんのだ?」


 全然何も考えていなかったリアは、

 光の消えた目でアサヒを見て思う。

 『さぁ?』と。


「…あ、そぉだわぁ。

 なんかぁ、シュミカに呼んで来いって言われたのよぉ。

 まぁ、大規模な浄化の可能性もあるからってあの子も同行する事になったみたい。

 なんかニヤついてたからぁ…報酬でも踏んだくるつもりじゃない?

 何だかんだで精霊の加護力は凄い子だしぃ♪」


「邪な方の精霊だろうが…、知らんけど。

 それに体調も良くないし邪魔にしかならんぞ、俺は…。」


「ん~他にも何か言ってたわねぇ…

 た、たぶんみんな一緒に行きたいんじゃないかしらぁ?

 きっとそうよぉ!そうだった気がするわぁ!


 いいじゃない、

 お世話になってるんだから少しくらいは協力しなさいなぁ♪」


(お前の祖国の名はレイヴンじゃなくてチキンヘッドに変えるべきだ。)


「主にお世話になってるのはお前だけだ!

 まぁ、戦闘に参加する訳じゃないなら良いけどさ…

 一人で残されてもアレだし。」


「良いお仲間ですね。

 こちらの世界を楽しんでおられる様で私も安心しました。」


 存在を忘れられていたレイヤは微笑ましく二人を交互に眺めている。


「さ、納得したならいらっしゃいなぁ。

 何ならアタシが運んであげようかしらぁ?」


 一応病人に気を遣う心は持っているらしい。


「高くつきそうだから遠慮します。

 その分腕を振るってやれ。」 

 

 リアは腕を組み口の端を上げてため息をついてみせると、

 胸元を見ろとジェスチャーしてから部屋の入り口から退いた。


 改めて自らを見たアサヒは半裸であった。

 苦笑いするレイヤが指差す枕元には用意された衣服が畳まれている。  


「さて、そろそろ私も戻った方が良さそうですね。」


 レイヤは音もなく立ち上がり、

 すれ違うリアに一礼をして出ていった。


「…何よ今の?

 変な空気…寒々しいわねぇ…。」


(そうか、まだ知らないのかコイツ…)


 そして、アサヒは企む。

 『もう少し焦らしてから言ってやろう。

  今…寒々しく感じた相手こそ、

  今朝お前達が目を輝かせて会いたがっていた

  『レイヤ様』である』…と。

 


「そういえば、

 竜の討伐って言うけど…お前の同族とかじゃないのか?」


「失礼ねぇ…アンタの世界でも戦争はあるでしょう?

 それ以前の話よぉ。

 

 人間だって畑を荒らす猿の駆除はするでしょぉ~♪」

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