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そして、俺は〇〇になりました。  作者: Foolish Material
16/24

そして、文化とクルセイト。その1

 前日の賑やかな街の喧騒を別次元のように感じる程に静かで、

 その先には神聖な高い山が聳え立つ森。


 その麓にある小さな集落に荷車を預けて、

 本格的にクエストはスタートする筈であったが…。


『ここのプライバシーの保護は完璧だ』

 とギリアは何度も諭したが、

 預ける物が物だけに…気持ちはアレであった。


(だから何度も早く保管用の魔道具を買えと言ってただろうが…。)


『集めた本を読みながら待ってるから、

 アンタ達で行って来てちょうだいぃ~!』


 と、渋るリアの為に、

 シュミカが馴染みの精霊を残して結界を張ってもらう事で

 何とかたどり着いた目的地は… 


 ほぼ樹海であり、

 高ランクの冒険者達でも足を踏み入れるのを躊躇する森の奥。


「ははははは!

 大丈夫!

 私は一度来ているから迷わないよ!」


 と、ギリアに続いてサクサクと迷いなく森を進んでゆく。


 生命力豊かな草木にあっという間に飲み込まれた、

 大きな足跡や

 かつて冒険者達で有った存在達の置き土産…。


「あらぁ、

 拾って持って帰ったらギルドで買い取ってもらえるんじゃないかしらぁ?」


「ん、さすが高レベルクエストに挑んだ勇者達…

 後進の者たちへの配慮が素晴らしい…。

 拾っておこう♪」


「え~?

 俺の魔道具にはそんなに入らんぞ?

 安物だし…!」


 何やら物色を始める二人に、

 アサヒは自分の宝物庫を侵犯されまいと必死だ。


「帰りにしなさい!

 仏さんに失礼だよ…。


 それに、

 もうここからは動きはしないからね、

 ははは!」


『…帰りなら良いんだ。』  


 と、三人は思ったが、


 それらの物に何の関心も無く進むギリアに対して、

 やがて、さらに三人は同じ想いを抱く。


 『クエストのランクが違いすぎて死にそう!』…と。


 それに関しても、

 ギリアが何が来ても笑いながら一撃で粉砕してくれる。


 まるで怖さを楽しみながら運ばれるアトラクションの中にいるようであった。

 そんな中、思いついた様にギリアは振り返って言う。


「そうだそうだ、

 そろそろアサヒ君も前に出て戦ってごらん?

 ここいらの魔物なら、

 落ち着いて対処すれば大丈夫な筈だ。」


 突然の申し入れにアサヒは信じられない物をみたように目を丸くして、

 言葉も出ずに震え上がる!


『え⁉︎そこまで怖がる!?』と、逆に驚くギリア。


「あらぁ…急にえげつない事言うわねぇ…。」


「ん…この辺りに出て来る魔物相手だと… 

 それは流石に引く提案…。

 リア~!

 僕達騙されて連れて来られて、

 こんな所で捨てられるの~?」


「そおねぇ…可哀想なアサヒ…。

 出来るだけ魔物のお腹を満たしておいて頂戴、

 その間にアタシ達だけでも逃げるわぁぁ…!』


 女性陣二人は寄り添って『よよよ~…』と泣き出す…。


 …もちろん演技な訳だが、

 ギリアも慌てざるをえない。


「イヤイヤもう、

 説明が足りなかったのは認めるから!


 もちろんサポートは完璧にしっかりやるし、

 安心して…まずはよく見るんだ。


 私が助けてあげられる内に、

 出来る限り強い魔物に慣れておいて欲しいんだよ!」


 それを聞いて、少しだけムッとした表情を浮かべるリア。


「ちょっとぉ…どーゆー事よぉ、

 アタシ達に飽きたから他に行きたいのかしらぁ?」


 女性との対応に慣れていないらしいギリアは、

 どうやら面倒臭そうな尾を踏んでしまった様だと理解した。


「あ…、決してそう言うわけではないよ!

 君達と居るのはとても楽しいよ!

 まだまだ一緒にいろんな所へ一緒に行ってみたいからアサヒ君にも…」


 …アサヒは背筋が凍るのと一緒に、

 リアに首根っこを掴まれる


「じゃあコイツのサポートとやらをしっかりやってみなさいなぁぁぁ!」 

 

「あああああああああああああ~~~~……!」

「ちょおおおおぉぉぉぉ~~~~~~ぃぃぃ!」


 リアはその勢いのまま、

 森の木々よりも高く遠くへアサヒを投げ飛ばした!


 ギリアは飛距離を計算しながら足元も見ずに駆け出す。


「はぁ、はぁ…何よ、もぉ!」


 そんなリアに静かに寄り添い、

 ポンと肩を叩くシュミカの顔は物凄く青ざめていた…。


「ん、気持ちはわかる…女心、わかってないよね…。

 

 でもね、

 今のは…マズイよ、

 どっちかってゆーと…僕達の身が…。」 


 ゆっくりと昂る気が鎮まり、

 シュミカの言葉の意味を理解したリアも同様に青ざめる。


「シュミカ!魔力全部使って良いから結界!

 掴まって!」


「ん、もちろん承知。

 精霊さん~よろ~~。」

 

 リアも魔力を全解放して、

 投擲物とキャッチャーミットの後を追って飛び立って行った…。 


 …ギリアの超人的な神速での直進移動は…

 アサヒのゆったりとは言えない曲線移動の着地地点で、

 見事にキャッチャーミットの役割を果たして見せたが…


 そのキャッチャーミットは、

 勢いを止められないまま安全地帯にホームインするランナーズに

 鳩尾を背中まで持って行かれた。


「デュオフぅっ!!」


 …今まで誰もきたことの無いようなギリアの叫び声と共に、

 四人の仲良し冒険者達は文字通りに一塊となったのである!


 …それはそれはとてもとても痛々しく見苦しい物であったが…。



「ん…だ、ダメだこりゃ☆」


「ぎゃ…ギャフン~☆」


 手足が絡まる事態に陥っても二人に反省の色は無く、


「ほ、本当に落ちてきた俺よりも、

 お前らがオチつけてんじゃねーよ!」


 ガクガク震えながら身を起こしたギリアもギリアで…


「や、やるじゃないか…効いたよ!

 は、はは…!」


 と、意味不明に虚勢を張って見せる。


 

 やがて、ドタバタしながらも

 想定よりもかなり早く目的地に着くことは出来た。


 全員の体力と精神力を代償に。 


「ま、まぁ…何とか辿り着けはしたねぇ。

 ははは!」


 アレコレの面倒ごとを一身に引き受けてくれたギリアさん。


 それでもまだまだ清々しく平気そうではあるが…

 タフにも程がある!

 

「シュ、シュミカぁ~回復は無理ぃ?」


「…ん、お願いして傷は癒やしてはくれるけど…

 英気とかまでは無理…

 キャラバンのみんなが、

 僕を甘やかさずにもっと厳しく育てるべきだった!」


『いや、お前が相手にしてなかっただけで、

 決して甘やかしてはいなかったけどなぁ…』


 と、その時代を共有した二人は苦笑い。


「さてさて、心配は無い。

 ここまで辿り着いたら…

 そこの境界線を越えない限りは安全地帯だから大丈夫だよ!

 少し休もう。」


 言われて辺を見渡すと、

 先程までの邪気や殺意や魔物の気配も無く、

 空気そのものが澄んでいる様に感じる。


「ほら、少し先に祠があるのが見えるかい?」


 と、言われてアサヒが森の奥を見ても暗くてよくわからない。

 まだ日中の筈だが、木々に遮られた日光はこの樹海に深い影を満たしている。


「あぁ、あの暗い所ぉ?

 …なんか嫌な気配がするわねぇ…。」


 そう返すリアにはよく見える様だ。

 種族間の能力の差であろう。


「んん~…なんか石像が…

 二つ?

 有るね…そういうこと?」


 見えないアサヒでも、

 そこまで聞けばこの先の展開の理解は容易い。


『王国のガーディアン』である。


「細かい説明は必要なさそうだね。


 実は、とあるアイテムが有れば通行出来る仕組みらしいんだが、

 以前のクエストで私が普通に倒してしまったから…

 どうかな?と、

 思っていたんだけど…ちゃんと直してあったようだ。

 

 良かった良かった。」

 

(馬鹿なの?何言ってるのかしらぁ…。)

(よくねーよ。)

(ん…頭良くねぇ事…言ってる。さて、帰宅準備を…)


 三者三様に、

 『嫌な予感』を暴言に変換しながら身構えると…。


「とりあえず聞いて欲しい。」


 改めて真面目に語りかけるギリアに三人は無言で頭を横に振る。


「酷い言い方に聞こえてしまうかも知れないが、

 事実として君達はずっと、

 聞かせてくれたキャラバンの手練れの冒険者の方々に護られていたのだという事。


 大きな魔物を見ただろう。

 大きな困難の先に辿り着いただろう。


 君達は見てきたかも知れないが、

 その時々を考えて決断を下して扉を開いてくれたのは、

 多分その本当の家族の方々だったんじゃ無いかな?


 でも、その家族は今はいない。

 でも、その家族の元に帰る為に君達は成長している!


 次の扉を自分達自身で開いてみてはどうだろう!?」


 もちろん話の途中から変な緊張感のゲージが、

 三人の中で急上昇し始めてはいた。

 

「と、言う訳で…

 試験その1!

 王都の扉をこじ開けろ!」


 と、ギリアが大きな腕で三人を前方に押し出すと…


 途端に三人に伝わる空気は重々しく変わってゆく。



「致命傷になりそうな攻撃だけはサポートしてあげるから、

 高次元の戦いを楽しむ事だよ!

 できるだけやってごらん!」


 先程ギリアが言っていた境界線の先に追いやられたアサヒ達は覚悟を決める!


 …事もなく、慌てふためいた。

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