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運命革命の天命師   作者: 咲良喜玖
運命革命の幼少期
5/9

第5話 奇跡の人 七歳

 この国は、全ての国民が学校に入る事が義務付けされている。

 王都の近く。

 学園都市グローシアに、入学することが決まっているのだ。

 全土から10歳になる子供が集まって、5年間の学校生活を送るようです。

 そんな莫大な人数が学校に入るなんて無理だろと、お思いのそこのあなた。

 そこには校舎がたくさんあって、全員が入学できるみたいですよ。

 ああ。地元にいたかった。


 それで実力も絡んだ制度があるそうで。

 第一学校。第二学校。第三学校と別れているみたい。

 これに身分制度も絡むらしい。


 実力があって、家柄がある。第一。別名『スターナ』

 実力か家柄か、どちらかがある。第二。別名『シャズ』

 実力がなく、家柄もない。第三。別名『アーク』


 この三校に別れて、学生となるわけだ。

 

 なんでこんな話をするかというと。

 今そこが問題となっている。

 姉の問題だ。


 ◇


 現在、俺と父と母が困っている。

 父の執務室にて。


 俺はソファーに座っていて、その隣の母は、二年前に生まれた妹を抱っこしている。

 父は自分の机の方の席に座って、姉が父の前で泣きじゃくっている。


 「いやだぁ。行きたくない」

 「そ。そんな事言われてもだな。これは義務なんだ」

 「いやだぁ」


 姉が学校に行きたくないと駄々をこねていた。

 俺は、妹の手を持って、あやそうとしたら、妹が手を引っ込めた。

 『ふん、触られたくないの』みたいな顔をされた。

 二歳なのに、意思がハッキリしている子のようです。


 「リース。いいかい。学校は皆が通る道なんだ。お前が貴族だからとかではない。平民の子たちも行くんだ」

 「いやだぁ。いやだぁ」

 「なんでそんなに嫌がるんだ。そんなに寮が嫌なのか。ここを離れるのが、そんなに嫌なのか」

 「いやだぁ・・・うわああああ」


 もう九歳なのに、あれだけ泣くなんて。

 俺も母も父もよほどの理由なんだろうと思った。


 「リース。頑張りなさい。父さんも応援している。もちろん母さんも、ネオスもだ」

 「いやだぁ。ネオスも連れてく!」

 「・・・なに?」


 父が首を傾げる。


 「離れたくない。可愛いネオスも連れていく」

 

 姉の嫌がる理由が分かった瞬間。

 俺も父も母も、同時にズッコケた。

 重たい理由かと思ったら、俺と離れ離れになるのが嫌だったらしい。


 「そ、それは出来ないんだ。リース、我慢してくれ」

 「どうして、連れてくもん。可愛いんだもん」


 ここまでは普通の会話だった。

 ここからが少し普通の家庭の話ではない。

 俺のツッコミと共にお送りしよう。


 「無理だ。お前は女子寮に入るんだから、男の子は入れんのだ」


 それって連れていく事が前提じゃないですか。

 そもそもの父の説得がおかしくないですか。


 「・・・じゃあ、ネオスに人形のフリをしてもらって、寮に入れるもん」


 おい。人型の人形になれってか。

 女子寮に男の子を連れてくってか。


 「それは無理だろう。心臓の鼓動でバレてしまう」

 

 そもそも持って来た時点でバレるわ。


 「大丈夫。メイクしてお人形にするもん。可愛いから出来るよ」

 

 俺の事を可愛いと思ってんのが、あんただけなんだけど。

 あんたにしか効果がないんだけど。

 それ、他の人には通用しませんよ。


 「そうか。そうだよな。それだと出来てしまうか」


 あんたも俺を可愛いと思ってたんかい!


 「でしょ」


 駄目だ。この親子、全然だめだ。


 「あなたたち! 駄目よ」


 ここで頼りの母が出てきてくれた。

 

 「ネオスは駄目。ここにいます。私が可愛がるんだから」


 こっちも駄目だった。

 どうしよう。解決策を出せる人がどこにもいない。

 これは俺が案を出さないと!


 「姉さん。入学して二年我慢すれば、俺も入学しますよ」


 どうだ。俺の説得が一番適しているでしょ!


 「ん!」


 キッと睨んできた。


 「二年! 長い。長い。いやだぁ。二年経ったら、別の顔になってる。私の知らないネオスの顔になってる。勝手に成長してるの嫌だぁ」


 俺に成長止めろってか。

 そんなの自分の意思ではどうにも出来ない。

 それは無理があるよ姉さん!

  

 「じゃ、じゃあ。俺が姉さんの所まで、短い間隔で遊びに行けばいいんじゃないかな。そしたらいいでしょ」

 

 俺の二個目の提案も良いものなはず。

 結構、姉の要望に応えた。

 的確な所を突いていると思う。

 

 ここで話に答えてくれたのは父だった。


 「ネオス。それは無理だ。10歳から15歳の子供以外は入れないようになっている。学園都市だから、先生方以外の大人にも制限が掛かっているのさ」


 オーマイガー! 

 謎の制度のせいで、最高の説得とはならなかった。

 

 「うわぁあああああ。じゃあ、学校行きたくない。絶対ここにいる」


 結局、振り出しに戻った。


 「父さん。何かないの。一時的でもいいから帰って来られる制度がさ!」

 「一時帰宅か・・・ちょっと待て。学生手帳を見るか」


 父が来年度の入学の為の資料を見た。

 

 「どれどれ」


 この間も姉はまだ泣いている。

 根性があるタイプの女性です。


 「あった。帰って来られる制度は・・・ないな」

 「ぶわああああああああああああ」


 より一層泣いた。調べない方が良かった。

 とここまでは思った。


 「あ、でも。これだと帰る事が出来るんじゃないか」

 「どれ?」

 

 父が読み上げる。


 「成績上位の者であれば、長期休みの際に戻る事が可能・・・これならどうだ」 

 「それだ! 姉さん、上位の成績なら帰ってこれますよ。それなら俺とも会えますって」

 

 これしかない。姉よ聞け。心に響け。

 願いを込めて俺は言っていた。

 だってもう鼓膜破れそうなくらいに泣いているからさ。


 「ん・・・ん。ぐすっ・・す・・・すっ・・・わかった。成績上位になる」


 奇跡的に涙が止まり、姉は鼻をすすりながら承諾した。

 やった! 

 俺の耳が助かった。


 「どうやったら上位になるの。お父さん」


 涙声で姉は聞いた。


 「そうだな。俺の経験上は、勉強と試験だな。実技試験だ」

 「実技?」

 「あそこは、個人の能力を上げて、国内全体の能力をあげるための学校だ。ステータスのレベルアップが目的なんだ。あそこで色んなジョブに就職できるようになるからな。職業訓練所としても皆が活用しているんだ」


 職業訓練所?

 姉と一緒に、俺も首をひねっていた。

 

 「昔と同じなら、一年生の最初の授業は就職についてだと思うぞ。ジョブを選ぶはずだ」

 「「ジョブ?」」


 父が立ち上がる。


 「そう。ジョブだ。父さんは、あの学校で戦士から始まった。母さんは魔法使いだ」


 父は、母を見ていた。


 「そこから修練を重ねて、卒業していくもんなんだぞ。レベルアップすると、より多くの職業選択ができるようになる。転職できるようになるからな」

 「「へぇ」」


 俺と姉が感心した。


 「成績優秀になるには、最初が肝心かもしれんな。リース。鍛えておくか? 俺たちが鍛えようか?」

 「お父さんたちが?」

 「ああ。お前が、どちらのタイプを選ぶかによって、父か母のどちらかが教えよう」

 「じゃあ・・・戦士。体を動かす方が良い」

 「わかった。それじゃあ、俺が教える。勉強はアンヘルに教われ」


 アンヘルとは、執事長のアンヘルさんの事だ。

 物静かなダンディな人。黒ひげおじさんでもある。


 「うん。じゃあ、頑張ってみる!」


 立ち上がった姉は、俺の方を見た。


 「ネオス! 私、頑張るよ。会うために、頑張るからね!」

 「ああ。はい。そうですか」


 とやる気のない返事をした。

 いつものように気楽にいこうぜとは言えない状況である。

 姉の漲るやる気を阻害してはいけないと思った。


 大変な姉を持つと、大変な事に巻き込まれるのだ。


 

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